第48話 魔術の脆弱性
俺達は転移扉を抜けて白い部屋へと向かう。
着いた先は、あまりにも広大な空間が広がっていた。
もはや部屋という規模ではない。
それも当然だろう。
帝都を丸ごと呑み込んだのだから。
本来なら途方もない量の魔力を使うため、ここまでのことはできない。
ところが、俺の魔力量は実質的に無限だ。
高度な幻で誤魔化し続けることができるので実現が可能だった。
ただの幻術師が同じことを試みれば、間違いなく術は失敗する。
最悪の場合、反動で死ぬことになるだろう。
したがって転移扉と白い空間は、俺の固有能力と評してもいい代物なのだ。
俺達の前方には帝都がそびえ立っていた。
一部が崩落しているのは、無理やり押し込んだからだ。
それでも大部分は形を変えることなく白い空間に鎮座している。
魔族達が動転していた。
まだこちらには気付いておらず、突然の事態に困惑している。
一方で首輪をつけた人々も不安そうにしていた。
彼らは奴隷だ。
魔力感知で探したところ、帝都全体で数千人はいるらしい。
崩落に巻き込まれた者もいるが、幸いにも死者はいない。
(先に人々を保護したいな)
このまま戦いが本格化すると、巻き添えにしてしまう。
別に助ける義理もないが、わざわざ殺すこともない。
俺は魔眼で人々の首輪を観察する。
どうやら隷属の魔術を施されているようだ。
主人の命令に背いたり、主人から離れすぎると死ぬ厄介な術である。
どうたらここにいるすべての人間に付与されているようだった。
帝都に存在する人間は、例外なく奴隷身分ということだ。
(無理やり外すと術が暴発するかもしれない。ここは幻創魔術を使うか)
俺は魔眼の出力をずらしていく。
すると、視界内の人間の首輪が変形し始めた。
その現象は帝都全体で発生している。
既に幻創魔術ですべての首輪を繋げて、同時に解除できるように細工したのだ。
幻創魔術の干渉を受けた首輪は、人々の心臓に刺さる杭になる。
これだと引き抜いた際に死にそうだ。
あまり良くない形である。
俺はさらに視界を変動して、都合の良い解釈を模索する。
元は首輪だった物体が次々と姿を変える。
うなじから体内に根を張る黒い植物や、首に絡まる茨になった。
そこから黒い蛇に変身し、表面が乾燥して枯れ木に至る。
枯れ木となった首輪は自重で簡単に砕けて外れた。
「よし、上手くいった」
魔術とはこういうものだ。
用途に合わせて様々な力が込められているが、万能無敵の存在ではない。
無数の側面から捉えていくと、いずれ脆弱な部分が露わになる。
そこを強調してやれば、あっけなく破綻するのだ。
もっとも、これができるのは幻創魔術と魔眼持ちの俺だけであるが。
俺は人々の足下に転移扉を出現させて、現実世界に送り返した。
これで帝都内は魔族だけになった。
城の方角からは青炎の魔王の気配も感じる。
今からが本番だ。
存分に戦おうじゃないか。
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