第41話 対談
俺達は村の奥まで案内される。
そこには枯れ木を積んで組み上げた住居があった。
村の中でも一段とみすぼらしい。
大きさはあるものの、ちょっとした強風で崩れてしまいそうだ。
魔王はその中へと入っていく。
しばらくしても出てこない。
どうやらここが魔王の家らしい。
おそらく魔王がこの村の責任者だと思うのだが、まさか最も貧相な場所に住んでいるとは思わなかった。
闇の身体に眼球が浮かんでいるだけなので、家には特にこだわりがないのだろう。
たぶん家自体が存在しなくても困らないはずだ。
かなり脆いとは言え、こうして家を設けているのは、村人達を安心させるためなのかもしれない。
俺とノアは揃って家の中に入る。
内装も最低限にも満たないような状態だった。
床は地面が剥き出しで、これといった調度品は見当たらない。
いや、中央に平たい岩と大きな切り株が置いてある。
あれが椅子と机の役割なのだろう。
魔王は切り株のそばに停止する。
金色の眼球が回って俺達を捉えた。
『座れ』
その言葉に従って岩に腰かける。
枯れ木の壁から洩れる冷気を感じて、俺は真っ先に疑問を口にした。
「村人達はこの家の改築を申し出ないのか」
『毎日のように言われる。だが、無駄な資源と労力を割かせるわけにはいかない』
やはり魔王は村人のことを案じている。
体裁的には長として豪華な住居があるべきだが、それを良しとしていない。
自分には不要だと分かっているからこそ、その分を村人に回したいのだろう。
魔王の一面を垣間見つつ、俺は本題を切り出す。
「それで、俺達は協力できると思っていいんだな?」
『構わない。貴様の能力は未知数だ。敵対すべきではないと判断した』
「賢明だ。その気になれば魔王だって捻じ伏せる魔術だからな」
俺は謙遜せずに言う。
それから気になっていた部分について問いかけた。
「俺のことはどこまで知っている?」
『五年前、勇者一行に属していた幻術師だった。いつの間にか消息を絶っていたが、超常的な能力を習得して表舞台に戻ってきた』
「なるほど、かなり大雑把だな。千里眼で確かめられないのか」
『そう便利なものではない。意識を向けなければ認識できないのだ』
幻創魔術を手にする前の俺は、本当に取るに足らない存在だった。
わざわざ魔王が警戒するはずもない。
だから千里眼でもしっかり監視していなかったのだろう。
幻創魔術の力を感知して、ようやく興味の対象に引き上げられたといったところか。
「お前の目的は魔王軍の再建と、離反した魔族の討滅。それでいいんだな?」
『間違っていない。足並みを乱した不届き者どもは必ず抹殺する。絶対に許すことはできない』
「しかしお前の力だけでは報復は叶わない。だから俺達の力を借りようとしている」
『…………』
魔王は沈黙する。
言い返せない部分なのだろう。
怒気は感じるが、そこに無言の肯定が含まれていた。
魔王は沈黙を経て断言する。
『貴様らと手を組むのは一時的だ。余計な勢力を滅した段階で敵対関係に戻る』
「分かっている。お互いに立場がある。相容れないのは仕方ない。利害が一致したから結託しているだけだ」
俺と魔王は視線を交わす。
そんな中、居心地の悪そうなノアが挙手をした。
「むぅ、なんだか緊迫した空気だな。我は外で待っててもいいか?」
「……好きにしてくれ」
俺が述べると、ノアは申し訳なさそうに退室した。




