第40話 荒野の隠れ里
『ついてこい。居住地に案内する』
魔王が勝手に進み始める。
さっそく住処に連れて行ってくれるらしい。
協力関係が嘘ではないという証明だろうか。
俺とノアは後ろをついていく。
ノアは気を抜いた顔で胸を撫で下ろした。
「なんとか上手くいったな。レードはこの展開を読んでいたのか?」
「いや、割と直感で行動していた。なるようになるだろうと考えていたな」
「我が言うのも違うが、さすがに短慮すぎるぞ……」
ノアが呆れた顔を見せる。
俺は魔王をじっと見つめながら補足する。
「もしこれで失敗したら、魔王を倒して別の手段を模索するだけだ。別に協力が必須というわけでもない。いくらでもやりようがある」
「ううむ……レードは大胆というか、無謀すぎる部分があるようだな」
ノアがぼやくうちに移動が完了する。
前方にいくつもの建築物と畑があった。
小規模の村だ。
住人がいるのも確認できる。
こんな荒野の只中にて、魔王と共同生活をしている者がいるらしい。
堂々と村へと進む魔王を見て、俺は本音を洩らす。
「驚いたな。住人がいるのか」
『それぞれの事情で行き場を失った者達だ。眷属契約を結ぶ代わりに住まわせている』
「魔王軍の再建か」
『その解釈で間違っていない。戦争には数が必要だ』
話していると、村人がこちらに気が付いた。
そのうち数人が駆け寄ってくる。
「魔王様、おはようございます! 本日も見回りお疲れ様ですっ」
「見てくださいよ、魔王様! こんなに大きな野菜がとれました! 魔王様のおかげで荒野の土も順調に肥えています!」
笑う村人達とのやり取りを終えて再び進む。
俺は手を振る村人達を見て魔王に言った。
「随分と好かれているじゃないか」
『……反省だ。五年前の離反を踏まえて、配下への気遣いも意識している』
「知られざる一面だな」
『吹聴すれば殺す』
魔王の千里眼がぎろりと睨んでくる。
俺はしっかりと魔眼で視線を返してやった。
一方、ノアが腹を押さえて悲しそうな顔をする。
「良い匂いがする……腹が減ったな」
「何か食うか?」
「うむ! 我は焼いた肉が食いたいぞっ」
「分かった」
俺はそこらの土を幻創魔術で焼き肉に変えた。
それをノアに渡してやると、彼女は勢いよく齧り始める。
一部始終を見ていた魔王が不思議そうに言う。
『物体創造の魔術……とは違うな。貴様はどれだけの術を使える』
「幻術を極めただけで、使える術は一系統だけだ。それをやりくりして多彩に見せかけている」
『よりによって幻術師が見せかけを認めるとは……』
「こういう事実は素直に認めるさ。我慢ならない時は歪めるつもりだが」
俺は皮肉を込めて呟く。
魔王は千里眼で見つめるだけで何も言わなかった。




