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魔眼の幻創術師 ~勇者パーティに見捨てられた三流幻術師は真の力に目覚めて世界を翻弄する~  作者: 結城 からく


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第19話 変わり果てた国

(どういうことだ。たった五年でこうも変貌するものなのか?)


 俺は少なからず混乱する。

 苦労の末に帰還した王都は予想しない形になっていた。

 もはや原形などありはしない。


 吐き気を我慢していると、男が心配そうに声をかけてくる。


「おい、あんた。大丈夫か?」


「問題ない。ありがとう、色々と参考になった」


 これ以上の質問は不自然に思われるだろう。

 そう考えて立ち去ろうとする。

 ところが、その前に男が怪訝そうに尋ねてきた。


「……なあ。あんたらはどこの国から来た? 常識知らずにもほどがあるって感じだが」


「遠い田舎さ。名前なんてない山奥だな」


 俺は適当に誤魔化して歩き出す。

 怪しまれているのは明白だ。

 だからこそ、余計なやり取りをすべきではない。

 さっさと離れた方がいい。


 雑踏に紛れようとしてその時、男が大声で叫んだ。


「そいつらは反逆者だッ! 魔王軍に敵意を抱いているぞォ!」


 周囲の人々が血相を変えて俺達を睨む。

 恐怖や驚きというより、阻害と悪意に満ちた表情だった。


 彼らのうち戦えない者達は走り去り、兵士や傭兵は俺達を包囲して武器を手に取る。

 素晴らしいほど円滑な連携だった。

 不審者が現れた場合の対処は徹底されている。


 俺は迫る民衆を前に険しい顔をする。


「くそ、やられた」


「どうする。我が焼き払ってもいいが」


「ここは俺に任せてくれ。虐殺しない方向でいく」


 殺気立つノアを宥めつつ、俺は幻創魔術を行使する。

 魔眼は使わない。

 そこまでする必要はないからだ。


(相手は一般人だ。出力は弱めでいいだろう)


 俺は自分を中心に世界を歪める。

 対象は周囲で敵意を抱く者達であった。

 彼らの輪郭が淡く光って縁取られて、しおれながら縮小していく。

 そうして土の器から生える苗木になってしまった。

 森にいた当初、実験的に魔物に施した代物と同一の効果である。


 ノアは静かになった辺りを見回して困惑する。


「何が起こった。人間が動けなくなって慌てているぞ」


「俺の視点で苗木にした。動けないのは根を張ったせいだ。当分はこのままだと思う」


「ううむ、反則的だな……」


 腕組みをするノアは感心する。

 彼女の目には動けなくなった人々が混乱する様子が映っているのだろう。

 彼ら本人もまさか自分が苗木になっているとは思うまい。


 だからこれは俺だけの事実なのだ。

 その結果を大多数の現実に押し付けた。


「行こう。ここで捕まるわけにはいかない。引き続き情報を集めるぞ」


 俺はノアを促して移動する。

 苗木の民衆は放置だ。

 彼らを殺したところで意味がない。

 俺が立ち去れば効果も薄れてやがて消えるだろう。

 この場を乗り切られれば、それで十分だった。

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