第18話 現代の世界事情
ひとまず俺は、住民から話を聞くことにした。
情報を集めるなら最も手っ取り早い。
詳しく知りたい事柄を把握してから情報屋を使ってもいいだろう。
方針を定めた俺は、通行人の男に話しかける。
「すまない。少し話を聞きたい」
「おう、なんだい」
「数年ぶりに王都に来たんだが、どうしてこんなに発展しているんだ。魔石の鉱山でも見つかったのか?」
俺は率直な疑問をぶつける。
男は不思議そうな顔で驚くべき事実を述べた。
「知らないのか。王国は三年前から魔王軍と同盟を結んでいる。そのおかげで街の発展が進んでいるんだ」
「何!?」
俺は目を見開いて固まる。
予想だにしない答えに思考が停止した。
口を無駄に開閉した後、辛うじて話を続ける。
「それは本当なのか。辺境の村では同盟なんて聞かなかったが」
「魔王軍にはいくつもの派閥がある。人間の国との同盟を進める魔王がいれば、以前と変わらず侵略を行う魔王もいる。同じ意味でも全然違うから、質問の仕方によっては誤解が生まれやすいと思うぜ。そもそも情報の入りが悪い辺境は、その辺りのことをよく分かってねぇからな。日々の生活で一杯になっているんだ」
男は詳しい部分まで説明してくれた。
しかし、頭の中を通過するばかりで上手く理解できない。
本能的に拒んでいるのかもしれなかった。
それほどまでに衝撃的なのだ。
男の口ぶりからして、魔王軍は分裂したらしい。
様々な派閥が出来上がって、それぞれの主義に従って行動しているようだ。
そして人間の国々も異なる対応を始めていた。
世界が、混沌とした方向へと傾きつつある。
(魔王と同盟だと? そんな馬鹿な……)
俺が目まいを覚える。
思ったより世界が変動している。
森で暮らしていた間に別物へと至っていた。
男の情報からして、過去の常識が通用しないのは明白だった。
だからこそ驚愕している場合ではない。
俺は掠れた声で尋ねる。
「王国は魔王軍に対して降伏したのか?」
「違うぞ。正真正銘、立場の平等な同盟だ。魔族のおかげで豊富な資源を手に入って、こうして街は発展が進んでいる」
「対価は求められていないのか」
「人間の奴隷だよ。まあ、大した損害じゃない。元から数が多くて余ってたからな。今では奴隷を増やす事業だってあるくらいさ。五年でだいぶ変わっただろう?」
男は得意げに言う。
俺は上手く笑えなかった。




