第14話 竜の真名
俺は赤竜ことノルミティアと共に渓谷から村へと戻り、村長と話し合った。
そこで過去に供物として徴収してきた物資を返すと、さらに迷惑料として竜の魔術を発動させた。
莫大な魔力が痩せた土や汚れた河川を蘇らせる。
これで数十年は自給自足の生活に困らなくなるという。
ついでに竜の血を材料にした魔物除けの粉末を譲渡したり、竜の魔力を固めた結晶も渡した。
いずれも村にとっては莫大な遺産となる。
これで罪が帳消しになるわけではないものの、誠意は果たしたと言えだろう。
話し合いの結果、ノルミティアは村人との仲を改善できた。
そして守り神として祀られることになった。
ちなみに彼女が人になったことは、すんなりと受け入れられていた。
超常的な存在である竜なのだから、それくらいは簡単に可能だと思われているのだ。
ノルミティアは村人達にまた戻ってくることを約束して出発する。
彼女は魔王討伐の旅に同行することになった。
俺と共に世界を救う運命を背負ったのだ。
移動の途中、俺はノルミティアに質問する。
「ところで、なぜ村を支配していたんだ。こんな辺境で搾取なんて趣味が悪いと思うが」
「搾取ではない。利害関係は一致していた」
ノルミティアが首を振った。
彼女は思考を整理しながら、ゆっくりと語り始める。
「人間を支配するのは、竜族として当然であろう。そうして集めた信仰が新たな力となる。加えて言うと、我はあの村を魔物の脅威から守っていた。供物はその分の働きを要求していただけだ。よく考えると多すぎたかもしれないが、我なりに正当な対価だと思っていた」
「村人達は、お前の功績を知らない様子だったぞ。ただ物資を奪われているかのような言い方だった」
「それも仕方あるまい。我は働きを明言していなかった。成果を見せびらかすのは品が無いのでな」
ノルミティアは、ばつが悪そうに言う。
彼女としてはあまり触れてほしい部分ではなかったらしい。
(不器用だな。もう少しやり方を考えれば、もっと早い段階で村人と親しくなれただろうに)
ただ、そんな考えも人間の尺度に過ぎない。
仲良くなるのではなく、畏れられるのが竜の役目とも言えるだろう。
ノルミティアは俺の進言で村の人々と和解したのだから。
それがなければ主張を貫いていただろう。
自分なりに納得していると、ノルミティアが急に大声を出した。
彼女は縋るように要求を口にする。
「それはそうと、我に愛称を付けてくれ! 魂で繋がったレードが真名を口にすると、竜の姿になってしまうのだ。今のうちに手軽な呼び名を決めておきたい」
「いきなりだな」
「伝えるのを忘れていたのだ」
ノルミティアは期待に目を輝かせて言う。
俺は少し考えて、気軽な口調で提案してみた。
「じゃあ、ノアでいいか」
「ノア……ふむ、ノア。良い響きだ! では今後はノアを名乗ろうっ!」
あっさりと採用された。
こうして赤竜ノルミティアは、ノアという仲間になったのだった。
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