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魔眼の幻創術師 ~勇者パーティに見捨てられた三流幻術師は真の力に目覚めて世界を翻弄する~  作者: 結城 からく


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第12話 意外な望み

 竜はもう動けない。

 岩には幻創魔術の力が込められている。

 弱った状態で破壊できるほど脆くはなかった。


 俺は魔剣を掲げる。

 これで竜を粉々に砕き割る。

 いくら再生力が高かったとしても、さすがに復活は不可能だ。


 そうして魔剣を振り下ろそうとした時、微かな声が発せられる。

 声は竜の口元から漏れ聞こえてきた。


「ま、て……」


 俺は寸前で斬撃を止める。

 騙し討ちといった雰囲気ではなかった。

 正真正銘、今の竜は無力である。

 少しの反撃も叶わない状態だった。


 だから俺は竜に尋ねる。


「何だ。遺言なら聞くが」


「ちが、う……」


 竜が微かに震えて否定する。

 今にも消え入りそうな声量のせいで聞き逃しそうだ。


 やり取りが面倒になった俺は幻創魔術を行使する。

 竜を覆う岩を操作して、首から上だけを解放してやった。


「これで喋れるだろう」


「すまない、恩に着る。実は……伝えねばならぬことがあるのだ」


 竜は真剣な口調で述べる。

 すっかり落ち着いた様子で、兜越しの視線には並々ならぬ熱意が宿っていた。

 沈黙を挟んでから竜は堂々と宣言する。


「我はお主に惚れた。子作りしよう」


「…………は?」


 思考停止。

 この瞬間ほど固まったことはないだろう。

 無意識のうちに間の抜けた声が出てしまった。


 彼方から頭痛が到来するのを感じつつ、俺は竜に問いかける。


「今、何て言った?」


「我と子作りしよう。だから殺すのはやめてほしい」


 聞き間違いではなかった。

 聞き間違いであってほしかった。


 俺はひとまず深呼吸をする。

 それから両頬を手で張ってみた。

 痛みがじんわりと響く。


 夢ではない。

 当然か。

 そんなことは分かっている。


(おいおい、待ってくれ。この竜は頭がおかしくなったのか?)


 俺は顔を顰めて唸る。

 そんな心境でも、思考は再起動を済ませていた。

 口からは自然と疑問がこぼれ出る。


「……惚れた理由を聞きたい」


「人間でありながら、超常的な力で我を倒してみせた。それ以上の理由などあるまい。本能がお前の種を欲している」


 竜は力強く語る。

 並々ならぬ熱意の意味を知った。

 俺はそっと目を逸らす。


「竜と人間では子作りできない。種族が違いすぎる」


「しかし、今の我は人間の姿だぞ。これもお前の術だろう?」


 騎士の姿は俺だけの視点だったはずだ。

 それが竜自身にも反映されているらしい。

 どこかの瞬間に認識が俺の側に寄ったのだろう。

 結果として、人間形態が定着したものと思われる。


 考察を進めていると、竜がハッとした雰囲気を見せた。

 それから嬉しそうに推測を述べる。


「お前は魔術で我を人間にした。それはつまり、子作りしたくて種族を変えたのか……?」


「勘違いするな! 人間にしたのは戦略的な判断だ。竜のままだと俺が不利になる」


「ふふ、そんなに慌てずともよい。我は攻めも受けも大歓迎だ」


 竜は少し照れながら言う。

 その反応を受けて、俺は頭を抱え込みたい気分になった。


(話がまったく通じないッ)


 どうしてここまで噛み合わないのか。

 誰か助けてほしい。

 五年間も他者との交流を断ってきた俺には厳しい状況だった。

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[良い点] >「お前は魔術で我を人間にした。それはつまり、子作りしたくて種族を変えたのか……?」 >「勘違いするな! 人間にしたのは戦略的な判断だ。竜のままだと俺が不利になる」 >「ふふ、そんなに慌て…
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