表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

1-2 ゼフィーラは雑談が出来ない人です

翌日。


(はあ……やっぱり、この世界でも私は頑張れないなあ……)



結局私は昨夜5分で寝落ちしてしまい、やったことといえば、自身の能力に『怠惰の手』というスキル名を付けたことくらいだ。


前世で怠け者だった私が、たかが転生したくらいで心機一転努力家になれるわけがない。

その程度でに人間が変われるんなら苦労はない。


ぐうたら舐めんな。

……そう思いながら私は欠伸をかみ殺しつつ食卓に座る。



「おはようございます、ルリジューズ」

「お、おはよう……ございます……」



そう私が声をかけると、メイドのルリジューズはびくりと体を震わせた。

よく見ると、周囲に居る執事や下男達も私のほうを見ながら、恐ろし気な表情を見せていた。


耳をすませると『ゼフィーラ様……気の毒に……』『けど、全然平気なふりをして……』『気丈な方だ……』と、私に対する同情的な声が聞こえてきた。



(ああ、そうか……。昨日私は凌辱されたことになってるのよね……)



昨夜、あれだけ大声を出したのだから、使用人は皆知っているわけか。

実際には、私のスキル『怠惰の手』によって事なきを得たのだが、彼らはそのことを知らない。そのため、私が平然とここにいることが驚きなのだろう。



そしてしばらくすると、急に使用人たちは全員ビクリと身体を震わせ、私語を辞めた。


「おはよう、みなさん」

「「「「「おはようございます!」」」」」



異母姉である『サヴァラン王女』がやってきたのだ。

彼女はこの国の第一王女ということもあり、絶対的な権力を持っている。そのため、彼女の機嫌を損ねたら※首が飛ぶからだ。


(※この場合の首が飛ぶとは、決して比喩ではない)


彼女は私のほうを見るなり、嫌味たっぷりに笑みを浮かべてきた。

……はあ、正直こういう顔の相手と会話をするのは面倒だ。そう思った私は、適当に相槌を撃つことにした。


「あら、おはよう、可愛い妹ゼフィーラ?」

「おはようございます、親愛なるお姉さま」

「昨日は、ずいぶん大きな声でうなされていたわね? ……よく眠れたかしら?」

「ああ、まあ。寝すぎて気持ち悪いくらいには」



そういって私は顔を見せた。

正直なところ、昨日は寝る前に水を飲みすぎて少しむくんでいる。

だがサヴァラン王女はその顔を見るなり、



「……へ、へえ……」



サヴァラン王女は言葉を失った。



(あれ……? あ、そうか……)


適当に返事をしていたが、彼女の目線からしたら私は、


「あれだけ酷い悲鳴を上げながら犯されていたのに、今は表情一つ変えていない、恐ろしい胆力の女」


と思われているのか。

……だが、あれこれ弁解するのも面倒だ。


そう思っていると、サヴァラン王女は嫌味な笑みを浮かべて尋ねてきあt。


「ところで、輿入れは今日の午後からの出発ですわね?」

「そうでしたね」

「例の『愚弟』ラミントン様との結婚なんて、まったく素敵ですわね~?」


無論、自分より先に結婚が決まった自分への嫉妬もあるのだろう。

だが、ラミントンを『愚弟』というのは、確かに間違いではない。



(ま、どの世界も『弟』ってのは上の子より愚かなものだものね……)


ラミントン男爵には優秀な兄がおり、彼は常に後塵を排していた。

それにもかかわらず、兄王子は流行り病により死んでしまった。それにより彼が王位継承者となってしまい、兄王子が抱えていた莫大な量の仕事を回されてしまう。


ただでさえ仕事量が多いことに加え、周囲からの好奇の目とプレッシャーにさいなまれ、ノイローゼ気味になりながらも必死で国務を行っている……という設定だったことを思いだした。



「あんな王子様との結婚なんて、ついてますわね、ゼフィーラ? まったく。あのようなお方と結婚するくらいなら、私は一生独身でも良いですわ?」

「ええ、そうですね」



彼女の嫌味を聞くのも面倒で、そう私が適当に相槌を打ちながら食事をする。

そして私の目線はすでに、机の中央にあるおいしそうなケーキを向いていた。あれはゲームの中でもいつも美味しそうに置いてあったものだ。



(はやく、デザート食べたいな……私、何切食べられるかな……)



さすがの私も、他の人が食事をすませていないのにデザートを自分だけ食べるような真似はしない。……だから、さっさとサヴァラン王女も食事をすませて、デザートを食べたいし、レシピも教えてもらいたい。



「それでね、ゼフィーラ? 私も実は……」

「ええ、はい。このスパイスは香り高くて良いですね」

「あと、あなたも本当に暇よね? 昨日は……」

「そうですね、大変でした。すみません、ジュースをもう一杯」



私は基本的に雑談は苦手で、興味がない話題には気のない相槌を打つ性格だ。

そのせいで元の世界では友達も恋人も出来なかった。


そんな風に考えながら、サヴァラン王女に適当に相槌を打っていると、突然彼女はバン! と叩いてこちらにつかつかと歩み寄ってきた。



「ねえ、ゼフィーラ? さっきから話聞いていますの?」



そして、そう私に対して批判的な目を向けながら近づく。

……だが、その瞬間。



「きゃあ!」

「いた!」



私がお代わりしたジュースを持ってきたメイドのルリジューズとぶつかり、ワインがサヴァラン王女のドレスにこぼれてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ