第5章 海洋ヒーリングの開始
東側の海岸線全ては多いな、とは思ったけれど、アリエッタは、パワーが増えていると言うし、
ポセイドン様は、できない事は要求しない方だ。
僕は少し沖で、クールに乗ったまま、剣を出し、鞘をアリエッタに渡した。
剣を正面に構えると、リン、と音がして、剣はコバルトブルーのトライデントに、鞘は、濃いグリーンの盾になった。
「あっ、盾の色が前と変わりました。」
アリエッタが呟く。
眠る前は、母貝のような色だった。盾は、完全にアリエッタのグリーンヒーリングパワーになった。
コバルトブルーのトライデントを構える。
「天海の神々よ。我が国、我が民、我等の海の行く末を守りたまえ、導きたまえ。我が命を、海神ポセイドンに捧ぐ。」
「全ての命が、約束された時まで、健やかに幸せに生きられますように。天界クロノス様のご加護を祈り、我が命を、神々と愛するヴァシリス様に捧げます。」
トライデントを回し始めると、オレンジの強い光が海の日の出のように溢れ出し、海岸線を包み込んでいく。
アリエッタが盾を胸の前に捧げると、夕暮れの海のような濃いグリーンのキラキラがオレンジの光を包み込んでいく。
僕たちは見つめ合った。
「この命の限り、シーシェルを守り、全ての海の幸せを守ります。」
トライデントを大きく振りきった。
アリエッタの盾から金色の光と粒が溢れて、空中から、辺り一帯に降り注ぎ、トライデントから銀色の強い光がでて、海から高波のように天に向かって光り輝き、一瞬、混じり合い、さらに強く光って消えた。
ユリシーズとダニエルとアーサーは、波打ち際で、跪いているが、すごい事になっている。
ユリシーズの全身が、銀青色に光っている。
ダニエルは、白金のように輝き、アーサーは深い緑と銀のキラキラに光っている。
ジュニア親衛隊は、腰を抜かしたのか、海の浅瀬で座り込んでいる。
みんなの体がオレンジキラキラとグリーンキラキラと光っている。
「其方ら、天海の王子と姫を守るのだ!」
ポセイドンが叫ぶ。
みんなが海の中で跪いた。
「「「「「「はっ!」」」」」
ポセイドンが金色の巨大なトライデントを一振りすると、海の中が全てコバルトブルーになり、キラキラが溢れて、ポセイドンも消えた。
しばらくして、ダニエルが復旧した。
「すごかった、これが天海のパワーか。」
「身体の中に、エネルギーが流れてるのがわかる。」アーサーも興奮している。
僕は波打ち際にある僕の剣を回収して、ユリシーズに聞いた。
「ユリシーズ殿、すごく光ってる。なんか強くなってない?」
「2年前に、神殿で、加護を受けたが、あれより凄かった。ヒーリングパワーの量が尋常じゃないのが自分でもわかる。ヴァシリスと姫の力が、増えているのではないか?」
「僕も、そう思った。東側の海岸線、全部、守り固めたのは、間違いないと思う。アリエッタが眠っていたのは、エネルギーを元の量に充電しただけじゃなくて、更に増えていたんだ。」
「ジュニア達が、腰を抜かしてるぞ。回収するか。」
僕とユリシーズは、ジュニア親衛隊を回収に行くと、騎士達は、泣いていた。
あまりにものエネルギーを受け取り、その神々しい光景に感動したと、言っていた。。
確かに海洋騎士団の鍛練も、ここまでしたことはなかった。
今日はポセイドン様がいたから、とは思う。
ふと沖を見ると、アリエッタがクーポに乗って、クジラの群れと、遊んでいるのが見えた。
どうみても、巫女には見えない。
ノーテンキなのか、女神なのか、、、
我が巫女よ、君は、どこまでも自由だな。
みんなを浜辺に上げて、休ませた。
ユリシーズは全く元気。
ダニエルとアーサーが、少し時間がかかったが、加護のエネルギーには、まあまあ慣れている。
問題は8人のジュニア親衛隊だ。
「急にこんな事になって、すまない。体調は大丈夫か?」
「殿下、すごいエネルギーで、驚きました。」
「今まで、ヴァシリス、で、殿下は、僕らと同じだと思っていて、失礼しました。」
「同じだろう。共に同じ優秀騎士だから。」
「ち、違います。凄すぎて、。いただい加護のエネルギーが、まだ体の中で、ドキドしています。」
ユリシーズが声をかける。
「みんな大丈夫か?まだ具合の悪いものは、いるか。正直に報告しろ。」
3人が手をあげた。
僕は3人に、貝殻リングに触れて、癒しのグリーンキラキラを出した。3人の顔色が良くなった。
「殿下、ありがとうございますっ。」
「よし、みんな大丈夫だな。我々は海洋ヒーラーだ。海洋ヒーラーの最高と言われる無限のヒーリングパワーが、ヴァシリス殿下のヒーリングだ。
今日は、まさかの、ポセイドン殿まで、お出ましだったが、お前達は、殿下のヒーリングパワーから、ポセイドンの加護を得た。
海洋ヒーラーとしての意識は覚悟できたか。」
「はいっ、殿下と姫の命をかけたヒーリングが、シーシェルを守り固めている事、しかと見て、その一部の力になるのだと、覚悟しました。」
「そうだ、お前たちは、親衛隊ジュニアだ。いずれ上官や教官になる。海洋騎士団を率いるヴァシリス殿下の片腕となれっ。いいなっ。」
「「「「「はっ!」」」」」
ユリシーズの喝は、いつも凄すぎてびびる。
「殿下、そろそろ姫を、、」
アリエッタはまだ沖で遊んでいる。
クジラだけでなく、イルカの大群まで増えていた。
僕はジュニア親衛隊に聞いた。。
「皆に先に言っておく。私の婚約者、ミカエラード公爵令嬢は、あれが日常だ。普通の御令嬢とは違うのだが、私の命より大切な女性だ。僕がいない時は、守ってもらえるだろうか。」
みんなも慣れたみたいだ。ドレスのまま、クジラにまたがり、海の沖で、イルカやクジラの大群とあそぶ、公爵令嬢など、まずいない。
「「「「はっ! 命をかけて」」」」
「ありがとう、では、連れ帰るので、しばらく待っていてくれ。」
僕は、またクールに乗って、アリエッタを迎えに行った。
「アリエッタ、ヒーリングは終わったから、もう帰るぞ。また遊びに来れば良いから。護衛を待たせるのは良くないぞ。」
「もう少し。お誕生日なのに。」
「髪飾りと、アレックスだけでは、不満か。」
「そんなことは、ありません。ただ。」
誕生日の夕暮れの帰る時間になると、何故か、この、モジモジが出て、甘えたになる。
「アリエッタ、こっちに来い、クーポも疲れているぞ。」
アリエッタを、クールに乗せた。
「もうすぐ日がくれる。」
「見たいです。」
「クールで見るのか、1人で騎乗で見るのか、同乗するのか、どれだ?」
「同乗で、一緒に。」
「わかった。」
浜辺に戻ると、漁師たちと農家の者が、たくさん来ていた。
ユリシーズが言うには、漁場の修復と農地の土止めのお礼に、たくさんの野菜と魚を持って来ていると言う。
「ありがたいが、其方らの生活の糧を、ただで貰うわけにはいかない。」
と言ったけど、どうしても、貰ってくれと言う。
今日、修復後の収穫量が異常に多かったらしい。
ユリシーズが折れた。僕も、断りきれなかった。
「今日だけだ。つぎからは、代金を払うから、必ず受け取るように。それから、ここに離宮が完成したら、野菜や魚を仕入れる約束をしよう。」
「ありがたき幸せです。海で生きる漁師として、今日、海神ポセイドン様の姿を見ました。漁師は、海神の怒りを知っています。しかし、殿下は海神の王子様。海を守ってくださる、こんな幸せはありません。」
「一つ、頼みたい、、シャチとクジラは保護してくれないか。もし、漁場を荒らすシャチやクジラがいたら教えてほしい、こちらで退治する。」
「殿下と姫さまの、お供だとわかりました。今後は、銛は向けません。」
「皆に感謝する。」
8人の護衛の馬に、貰った食糧を乗せて、先に王宮に返した。
集まった民に礼を言って、アリエッタをアレックスに乗せて、帰路についた。
「お魚、たくさん取れたのですね。」
「ポセイドン様の加護だろうな。」
「あっ、太陽が沈んでいきます。」
アリエッタと見る夕陽も、2年ぶりだった。
昨年のアリエッタの誕生日は、1人で王宮を抜け出して、夕陽を見に来た。
「ヴァシリスさま、昨年のお誕生日、ここに来てくださり、ありがとうございました。嬉しかった。」
「えっ?あの時も、私の心にいたのか?」
「はい、シェル姫さまのご加護で。」
「早く目覚めてほしい、と、あの言葉を?聞いていた?」
心の中で思い出した。
《アリエッタ、早く目覚めてほしい、この手に抱きしめて、其方の瞳を見つめたい、其方は私のものだ。》と言ったのを、聞いていたのか?
「アリエッタ、全部、聞いたのか?」
「はいっ、、もう、いつ死んでもいいと思うくらい、嬉しかったです。」
「ふぅっ、、、、、 」
僕は深いため息をついた。
「どうか、されましたか?」
「アリエッタ、要するに、この2年、僕の心の声は、お前には、ダダ漏れだったと言う事か、」
「はいっ、一つも漏らさずに。どれだけ大切にしていただいているか、心に沁み入りました。幸せです。だから、2年、踏ん張れました。
クロノス様が、2年耐えれば、ヴァシリス様のパワーが増え、世界の全ての海を守る力が溢れる、と。一年では、その半分だと言われました。だから、ヴァシリス様が強くなられるのなら、と。
クロノス様とお約束しました。
もうあんなに傷つかれるお姿は見たくなかったから。
だから、ヴァシリス様の心の声が、私が耐え抜けるように、守ってくださいました。」
「アリエッタ、この2年の想いにいつわりはない。」
「はい。」
アリエッタの話を聞いて、耐え抜いたのは、アリエッタだったとわかった。
僕は、騎乗で、夕陽を見ながら、アリエッタを強く抱きしめた。
「また、幸せなお誕生日です。」
アリエッタも、僕に持たれて夕陽をみている。
「来年も、一緒に来よう。」
「はい、その次も、またその次も、、ずっと、16歳も。ふふっ。」
眠っていたわりに、アリエッタは色々と覚えているようだ。
海岸線の守りと強化は大切だった。
帰ったら、父上に話さなくては。
沈む太陽を見ながら、王宮に戻ったら、月の宮の料理人が大変な事になっていた。
騎士団本部に連絡して、それぞれの騎士寮の料理人に、魚や野菜を取りに来させ、
屋敷に帰る者にも持たせて、皆に行き渡るようにした。
二人のヒーリングパワーは絶大になってきました。
読んでいただき、ありがとうございます。




