第4章 波乱の幕開け4
「母上、オラン、大丈夫ですかっ。」
「びっくりしたわ。ヴァシリス、すご過ぎて、びっくりしちゃった。」
「アンジェラ、さすがにこれは、神がかり以外に、考えられないわね。」
珍しく、オランも声のテンションが高い。
「アリエッタ、大丈夫か。」
「はいっ、でも、ポセイダルゴ様が、ヴァシリス様を呼んでいます。」
「えっ?、アリエッタ、どうした?」
「ほら、ここから、聞こえるの。」
アリエッタが、剣の握りの部分にある、トライデントの紋章を指差した。
今、剣は、コバルトブルーに煌めいている。
紋章は銀色に強く光っている。
僕は、心臓がギュッと締め付けられるような感じで、声をきいた。耳から聞こえたんじゃなくて、
僕の心臓から声が聞こえた。
「ヴァシリスよ、我が海の息子よ。」
「ほら、ヴァシリスにいさま、聞こえたでしょう?」
聞こえたけど、息子ってなに?
母上の部屋の扉がノックされた。
侍女の声がする。
「王妃様、陛下が、お越しです。」
みんなが固まった。別に隠し事はしてないけど、
何か今のタイミングは悪い、ような気がする。
扉の向こうで、父上の声がしている。
「アンジェラ、急に会いたくなった。」
「エドワード、今日は、母子水入らずで過ごす、と申し上げました。」
「ラングドンの祝賀の儀までに、会える時間がないから、少しでも会いたくなった。」
侍女がいるから、滅多なことは言えない。だから、会いたいの一点張りで通しているのが、何だがかわいそうだ。
母上は僕の顔を見た。でも母上は気づいてた。
「ヴァシリス、祝賀の儀で、何かあるの?」
「僕とアリエッタが狙われます。父上は、それを母上にきちんと話したいのだと思います。
母上、僕はまだ子供ですが、父上が、母上を大切にしているのは、知っています。
お二人で、納得がいくまで、話してほしいです。たぶん、今しかないから、父上も決意して、ここまで、いらしたかと。」
「わかったわ、ヴァシリス、あなた、本当に成長しているのね。嬉しいわ。
ただ、その剣の事も、放っておけないし、ポセイダルゴ様が、呼んでいるでしょう?」
「えっ?母上も聞こえましたか?」
「ええ、ヴァシリス、でも、気になったの、さっきの言葉。あなたは、エドワードと私の息子よ。それは絶対に間違いないから。」
「母上、そんなこと、わかっています。
だから、今すぐ、ポセイダルゴ様に会わなくては、、どうすれば、、、父上がいるから、ここから、出られないし。」
「あっ!アンジェラ、坊っちゃまのお部屋、昔のままですか?」
「そうよ、オラン、あっ! オラン、子供達を任せていいかしら。」
「アンジェラ、任せて。必ず連れて帰ってくるから。」
「坊っちゃま、剣を鞘に戻してください。姫さま、鞘を坊っちゃまにお渡しして。
さっ、お二人は、アンジェラ様に、おやすみのご挨拶をして、坊っちゃまのお部屋に参りましょう。」
怪訝な顔をする僕をみて、オランが、アリエッタを抱っこして、僕の背中を押して、僕の部屋に入って、中から、鍵をしめた。
オランが、黙って、僕の部屋の奥の部屋に向かう。勉強部屋の奥は、寝室だ。扉を開けると、懐かしい僕の寝台があった。
部屋を横切って、寝台の奥の壁までくると、オランは、何もない壁を押した。音もなく、壁が開き、隠し部屋があった。
結構、広い。そこは、海の匂いがした。
僕達が隠し部屋に入ると、オランは扉をしめて、
にっこり笑った。
「さっ、ポセイダルゴ様に会いに行きましょう。」
「ええっ?オラン、ここから、外に出られるのか?」
「坊っちゃま、お忘れになってしまわれましたか?さっ、こちらへ。」
オランは、アリエッタを抱っこしたまま、更に、隠し部屋の奥の壁を押すと、また扉が現れた。
海の湿った空気が抜けていくような感じがする。
階段が出てきた。オランは、扉をしめて、階段を降りていく。
階段を50段くらい、降りただろうか?
目の前は、ゴツゴツした岩で行き止まりだった。
「オラン、行き止まりだ。」
前を行くオランが、一瞬で消えた。
「オランっ、大丈夫か?」
オランがまた姿を現した。
「えっ?何?」
「坊っちゃま、この岩、行き止まりではなくて、幅が広い板のような石が、斜めにずれて重なっていて、隙間があるのです。
だから、ほら。」
よく見ると、同じ岩が、少しずつずれて、重なって並んでいる。人一人ギリギリに通れるくらいだから、知らないと行き止まりにしか見えない。
その岩を5回抜けたら、いつも遊んでいる浜辺だった。
「嘘だろ?オラン、こんなのって。」
「坊っちゃまが、アンジェラのところにいた時は、いつも、この抜け道で、浜辺にきていたのですよ。
さっきの岩の3枚目の間を、ずっと左側に進むと、隠れ軍港があり、潜水艦が常に待機しています。非常時の、王妃とお子様達の避難路です。
今日は、避難ではありませんから、ポセイダルゴ様に会って、知りたい事を聞いてきてくださいね。」
「アリエッタは?」
「置いていきますか?」
「いや、連れて行くのが、当たり前だった。」
昨日から、今日にかけて、色々ありすぎて、頭の中が、混乱気味だ。
「お帰りは、ユリシーズに浜辺まで、迎えにこさせますので、ごゆっくりお過ごしください。
たぶん、今日しかないでしょうから。」
「ありがとう、オラン。」
僕は、アリエッタの手を引いて、波打ち際まで走った。呼んでないのに、クールとクーポが、既に待っていた。
「ヴァシリスさま。参りましょう。」
「アリエッタさま。」
僕とアリエッタは、クールとクーポに連れられ、夜の海に向かって、潜って行った。
剣が変わっていきます。
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