第3章 新しい道への準備
慌たゞしくなっていきます。
父上と兄上たちとの家族会議の翌日、僕はまた父上の私室の書斎に呼び出された。
「父上、ヴァシリスです、参りました。」
「入りなさい。」
セレステも一緒にいた。
ぼくは2人に挨拶して、ソファに座った。
「昨日の会議は楽しかっただろう。」
「はい、父上が僕達三人三様に考えてくださっていて嬉しかったです。やっぱり父上は凄いですね。」
「素晴らしい息子たちに恵まれて嬉しい。
采配は熟慮して的確にせねば、些細な穴から水がもれはじめると、あとは崩壊しかないからな。その見えない穴を見つけるのが巫女だ。」
「そう言う事なのですね。肝に命じます。」
「うむ。それで、アリエッタのことだが、セレステにご神託がおりた。」
「何か動きが?」
「そうだ。近いうちに、アリエッタが覚醒する。巫女であることを自覚するだろう。
お前が近衛騎士団に入るのと重なりそうだ。
だが、それ自体がご神託の範囲内だから、狼狽えないように。」
「はいっ」
「具体的には、覚醒は近日中に起きるはずだ。
アリエッタには、騎士団入団と騎士寮に入ることと、東宮の建て替えがあるから、ミカエラード公爵家に一旦、戻るように伝えなさい。
そこから、全てが動き出す。
ご神託が降りたら、アリエッタが取り乱すかもしれないが、お前が思う行動をするように。
その瞬間、その瞬間に心に感じるように動け。
頭で考えすぎると、辻褄が合わなくなるんだ。
私も経験者だから、よくわかるのだ。
言いたいことは口に出す。決めたいことがあれば決める。わかるな?
ただ、誰の巫女かまだわからない可能性が高い。それは言うな。
それから、アリエッタが巫女の自覚を持てば、婚約内定は出す。
お前の口から、婚約したいと言うなら言っていい、言えないようなら、ミカエラード家に戻ってからこちらから伝える。」
「承知しました。」
続いてセレステが話す。
「ヴァシリス殿下、アリエッタは、夢を見るか、白昼夢のように、未来を見るはずです。
おそらく、衝撃的な夢を。
殿下が近衛騎士団に入団された後に、私が迎えに行きます。
アリエッタが落ち着いたら、ガブリエル侯爵家に連れて行き、オランに預けて、私とオランで巫女教育を開始する予定です。」
「ユリシーズは、近衛騎士団副隊長と兼務で、近衛騎士団第三団に戻ってもらう。お前が騎士団での生活に慣れた頃に、騎士団長に昇格し、兼任で親衛隊長になる。
オランをウリエル公爵家に戻したかったのだが、
ユリシーズが親衛隊長になると、かなり多忙になるゆえ、実家のガブリエル侯爵家に戻って、アリエッタを見てもらうことになった。
ガブリエル侯爵家は代々巫女を輩出しているので、巫女教育には一番安全で安心なのだ。」
「セレステ、オランも巫女教育ができるのですか。」
「はい。実は、オランは、私と同じ巫女の能力があります。
幼い頃には、巫女教育は一緒にうけました。ただ、私が陛下の巫女になった時、妹の見える力が消えてしまいました。おそらく、私に危険が及ぶ時に、オランの巫女の力が再生するはずです。」
「そんな事が、、」
「巫女候補が2人、と言う時代は、今まではなかったらしい。
私の治世の時代は、ヴァシリスとアリエッタにしても、巫女を得ても王にならないとか、不思議な事ばかり起きているが、良い方に流れているから、受け入れて行けばよい、と思っている。
それと、ヴァシリス、騎士団にはいったら、
アリエッタに会わねばならぬ時は、ここに戻れ。私の部屋からガブリエル侯爵家かミカエラード公爵家に行くように。
しばらくは隠密行動をしなさい。
必要があれば、こちらからも呼び戻す。アリエッタのことは一人で抱えるな。そのためにしばらくユリシーズを、第三騎士団に留めるのだから。良いな。
決して、1人で騎馬で走り回るなよ。隠密行動を取らねば、アリエッタの身にも危険が及ぶ。
それは良くわかっているはずだ。」
「はいっ!」
父上の書斎を出て、歩きながら考えを巡らせる。
近衛騎士団の入団式まで、あと2週間を切っているのに、時間がない。
アリエッタに話さなくては。
父上の書斎から、幾つもの扉を抜けていく。
最後の扉の前で、パトリック兄上にあった。
「パトリック兄上」
「ヴァシリス、ごきげんよう。お前も呼ばれたか?」
「はい、騎士団入団の件で。」
「お互いに忙しいな。僕も2年前倒しのアカデミー入学準備で、ドタバタだよ。朝一で、教育部の試験に合格してきた。父上に報告だ。
ヴァシリスとは、ヒーリングのこととか、研究の事とか、もっと話したかったのだが、忙しすぎる。」
「忙しすぎますね。でも兄上、きっと兄上と共に陸も海も、ヒーリングをする時が来る様に思います。その時を楽しみに、僕も頑張ります。」
「ではな、怪我はするなよ。」
「はいっ、兄上もお元気で。」
きっとラングドン兄上も大変だろう。来月初めに王太子の儀式があるからな。
父上の陽の宮から東宮まで、結構距離があるので、移動は騎馬でする。
ユリシーズが、自分の馬と僕の愛馬アレックスを見ていてくれた。
「ユリシーズ、待たせた。また忙しくなった。帰り道道、話したい。アレックスっ」
僕はアレックスの鎧に足をかけて、飛び乗った。
「ヴァシリス殿下、参りましょうっ」
ユリシーズは馬に乗るのが早い。僕はユリシーズのスピードにまだ追いつかないけれど、一人で馬に乗れるようになっただけ、よしとしよう。
護衛に抱っこされて、馬の鞍に乗せてもらっていた事を考えれば、まだましだ。
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