エピローグ シーシェルの巫女物語
むかしむかし、
小さな海に囲まれた小さな島がありました。
そこには、海が大好きな《シェル》と言う名のお姫様がおりました。
シェル姫は、毎日、浜に行って、蟹やヤドカリや、波打ち際にくる小さなお魚たちと遊んでいました。
シェル姫が、5歳になった日に、海に行くと、傷ついたクジラが波打ち際に、打ち上げられていました。
「まあ大変、クジラさん、大丈夫ですか。」
「よその国の人にモリを打たれて、、」
「まあ、なんという事でしょう。」
シェル姫は、力の限りを尽くして、槍を抜き取り、薬になる海藻を傷に貼り付けましたが、
クジラは、どんどん弱って行きます。
クジラが
「シェル姫、ありがとうございました。でも私は、もう死んでしまいます。優しくしてくれて、嬉しかったです。」
クジラは息を引き取りました。
「美しいクジラさん、死んではなりません。死なないでっ。」
シェル姫の深い緑の瞳から、真珠のような大粒の涙が溢れて、止まりませんでした。
その時でした。
海から、ザザ〜ンと大きな波が押し寄せました。
「間に合わなかったか。」
シェル姫が顔を上げると、
波打ち際から、少し離れた海に、シャチに乗った、銀色の髪にコバルトブルーの瞳、眩しいほど整った顔立ち、鍛え抜かれた体躯が輝く凛々しい少年がいました。
「あなたは誰?」
「我は海神の王子、ポセイドンだ。そなたは人間か。」
「はい。この国の姫、シェルでございます。」
「シェル姫か。其方、クーポラを手当てしてくれたのか。」
「クーポラ?」
「このクジラは、我が家臣、クーポラだ。」
「このクジラさんは、クーポラという名前だったのですね。」
シェル姫の美しい深い緑の瞳から、真珠のような大粒の涙がポロポロとこぼれていく。
「ポセイドン王子さま。申し訳ありません。クーポラを助けてあげられなくて、、ごめんなさい。」
「そなたが謝る事ではない。モリを抜き、薬海藻を貼り、ここまで手厚く手当てしてくれて、礼を言うぞ。」
まだ涙を流すシェルをみて、ポセイドンは海から上がって波打ち際まできました。
「シェル姫よ、そなたが目から流している真珠のような水は何だ?」
「これは、涙というものです。悲しい時に流れてしまうのです。クーポラが死んでしまって悲しいのです。」
「確かに、そなたは、ずっと海の生き物を大切にしてくれていたな。」
「えっ?私を知っているのですか。」
「海の中から、見ていた。海の生き物を大切にしてくれる愛らしい人間だと思ってな。もう泣かなくてよい。」
ポセイドン王子は、涙が止まらないシェル姫のまなじりに、そっと触れると、涙は真珠になり、浜辺に落ちていきます。
「あっ、これは。」
「海の中では、悲しいと目から真珠がこぼれ落ちるのだ。」
「まあ、こんな事が、綺麗な真珠、でも悲しみの真珠ですね。」
「其方、クジラは好きか。」
「はい、大好きです。大きくて、しなやかで美しい形、そして目が優しくて、ジャンプするところも好きです。」
「そうか、わかった。」
王子はクジラに向かって話しかけました。
「クーポラ、死ぬではない。其方を助けてくれたシェル姫の為に生きるが良い。」
ポセイドン王子は、海の王子がもつトライデントを、クジラの上で一振りした。銀色の光がキラキラとクジラに降り注ぎました。
するとクジラのクーポラが、目を開けて、波打ち際から海に入って言いいました。
「ポセイドン王子、ありがとうございます。不覚にも襲撃にされてしまい、、、」
「よい気にするな。このシェル姫がお前を手厚く手当てしてくれたのだ。礼ならシェル姫に言え。これからは我が臣下として、シェル姫を守るのだ。よいな。」
「ポセイドン王子、ありがたき幸せ。」
クジラが生き返って、シェル姫はびっくりしました。
ポセイドン王子は、シェル姫に歩みより、手をとって言いました。
「クーポラは今日から、其方を守る臣下として、シェル姫に贈るゆえ、海に来るときは一緒に遊べばよい。」
「ポセイドン王子様、ありがとうございます。」
その時、王子はシェル姫が手を怪我している事に気がつきました。
「そなた、怪我をしているではないか。」
「モリを、必死で抜いたから、、でも大丈夫。」
「そなたは、何と優しいのだ。」
王子は、シェル姫の傷ついた手に、そっと口づけすると、傷がみるみる治っていくではありませんか。
この時、二人は恋に落ちたのです。
それから、毎日、二人は海で過ごしました。
クジラのクーポラの背に乗って、海の中を散歩して楽しい時間を過ごしました。
シェル姫が16歳になった時、王子は、シャチのクーリーの背中にシェル姫を同乗して、珊瑚の花畑に連れて行きました。
そこで、王子は姫に求婚しました。
「我が愛するシェル姫よ。そなたは海と海の生き物を愛してくれる。海を守る海神である私の妻になって、共に海で生きてほしい。」
「はい。ポセイドン王子さま、私もお慕いしています。」
ポセイドン王子が、シェル姫に口づけをしようとしたその時でした。
「わが弟ポセイドンよ、えらく美しい姫とデートか。」
「ゼウス兄上。」
「海なんぞを守るお前にその姫は、もったいない。私によこせ。可愛がってやる。」
「クーポラ、シェルを連れて逃げよっ。」
「逃すのか、我に渡せっ。」
「シェルは私の求婚を受け入れた。僕たちは、10以上、共に愛を育んできたんだ。兄上に入る隙はない。」
「何が愛だ。天界のゼウスの寵愛を与えてやると言っている。」
「ゼウス兄上は、浮名をながし、誰一人、大切にしてはおらぬ。私はシェル一人を愛している。」
「弟のくせにうるさい、私に逆らうなど許せぬ。」
ゼウスが、剣を振り回すと、炎が広がって海の中まで炎が広がっていきます。
ポセイドンがトライデントで火を消します。
しかし空と陸と海に稲妻と炎と嵐が巻き起こり、シェル姫の国が消えそうになってきました。
すると、さらに大きな光が辺りに溢れたのです。
「やめんか、ゼウス、ポセイドン。」
「父上っ。」
「人間界で、兄弟喧嘩とは、どういう事か。」
「父上っ、兄上が、私のシェルを。」
「ポセイドン、わかっておる。ゼウス、ポセイドンとシェルは相思相愛だ。ポセイドンが大切にしてきた人間の姫だ。お前が横恋慕するのは間違っておる。それに天界の女神だけでは飽き足らず、人間の女子とも、浮名を流しているだろう。そろそろ一人に決めて、妻を娶れ。」
「シェルなら、娶ってもよい。」
「兄上、これだけは譲れません。」
ゼウスがポセイドンを雷で投げ飛ばし、その隙にゼウスはシェル姫を奪い、天界に登り姿を隠してしまいました。
「ゼウス様、私をポセイドン様の元に帰してください。」
「さあ、シェル姫よ、私の妻になれ。」
「嫌です。死んでも嫌です。」
ゼウスは天界にシェルを閉じ込めてしまいます。シェルは毎日泣いてあけくれました。
ゼウスを狙っていた女神イライザは、シェルが邪魔だったため、囚われたシェルに、嘘の助かる方法を教えます。
それは、身を守るために冥界、黄泉の国に姿を隠す事でした。シェル姫は、ポセイドンへの思いを胸に、真珠の涙を流し続けながら冥界へ旅立ちます。
その日、真珠の雨が天から降り続け、海とシェル姫の国に落ち続け、それが新しい土地となり、シェル姫の国は大きな真珠の島国となりました。
シェル姫を助けるために、ポセイドンは父クロノスの許可を得て、天界に向かったのですが間に合わず、シェル姫は黄泉の国に沈んでしまいました。
ポセイドンは荒れ狂い、三日三晩海を荒らし続け、生涯独り身でいると誓い、海の大海神となったのです。
その後もシェル姫は、黄泉の国にとどまりシーシェルの安泰を祈り続けました。
その後、シーシェルの王には、国を守る為に王の治世に一人の巫女を授かるようになりました。
国王は、巫女を天神ゼウスに奪われぬように、巫女の存在を隠して大切に扱い、誰にも知られる事なく、巫女は代々続いて、王の治世に生まれご神託を受け、それがシーシェルを安泰に導きました。
その後、千年を経て、ポセイドンとシェル姫の愛を結びつける王子と巫女姫が、シーシェルに生まれます。
銀の髪にコバルトブルーの瞳を持つ、その王子の名は、ヴァシリス。
ヴァシリスと愛を育む巫女姫の名は、アリエッタ。
いずれこの2人は、新たなるシーシェルの神話を紡ぐことになります。
これでこの物語は幕を閉じます。
まさかの聖夜が完結日になり驚いております。
皆さま、長い間、読んでいただきありがとうございました。




