第31話 冬の祭典!フルキンの即売会デビューだまんごー。
「思ったより、売れないね〜」
まんごは、小さくため息をついた。
まんごとドリアは、パイプ椅子に座っている。
2人の前の机の上には、『美熟女魔法剣士 ポッチャリン』の漫画と小説が並べられている。
『マン・セレ 2020冬』の会場だ。『フルキン』のブースは、島の真ん中にある。
1日目の会場は、予定通り10時に開場された。そして、『フルキン』の本は、1冊も売れることなく、3時間が経とうとしていた。
「そうでございますわね〜」
ドリアも、小さくため息をつく。
2人の目の前を通りすぎていく客はたくさんいるのだが、みんな、2人をチラ見しては去ってゆく。
まんごとドリアの格好は目立ってはいる。
しかし、客は興味ありげに、まんごとドリアの姿にチラチラと視線をやるが、その2人の後ろにいる奇妙な人物のせいで、客が近寄り難くなっていたのだ。
そう、客が来ない大きな原因は、スネイクが扮する、ゆる怪人『天かすマン』だったのだ。
まんごたちはそれに気がついていなかった。
何も知らないスネイクは、まんごとドリアの後ろで、仁王立ちをしていた。
作者注:もう一度確認しておく。
全ての元凶は、スネイクが扮する、ゆる怪人『天かすマン』だ!
「初めての参加ですか?」
一人の中年男性『室井卓』がまんごたちに声をかけた。
これは、開始から3時間と少しが経った頃であった。
冊子を手に取った室井は、ポッチャリンの漫画の冊子をパラパラとめくる。室井の後ろから、青嶋学が、それを覗き込む。
室井と青嶋は2人でこの会場に来ているのだ。
中年男性2人で同人即売会に来て何が悪い!
「はい、そうです。初参加です。作ったばかりのコンビで、『フルーツキングダム』って言います!」
まんごは、緊張気味に室井の質問に答える。
初めてのお客さんだったので、まんごは緊張していたのだ。
「へぇ〜。フルーツキングダムって言うんだ。かわいい名前だね〜。どれが新商品かな?」
「これら全て新商品でございますわ。こちらが第1話で、こちらが第2話でございます。この小説版は1話と2話の両方が載っておりますわ」
戸惑うまんごの横から、ドリアが助け舟を出す。
ドリアは、お嬢様言葉をいつも話しているので、比較的接客が得意なのだ。
「それじゃあ、小説版と、漫画版の2冊を、それぞれ2冊ずつ、お願いできますか?」
室井卓はそう言いながら、ポケットから小銭入れを取り出す。
この小銭入れには、この即売会用に小銭が大量に入っている。
「はっ、はい。ありがとうございます! 1800円でございます」
計算が簡単になるように、3冊とも、1冊300円と言う値段設定にしていた。
室井卓は、手慣れた手つきで、小銭で1800円を用意し、それをドリアに渡す。
そして、ドリアは、お金と引き換えに、冊子を渡した。
「どうも」
室井は、ドリアに笑顔を向ける。
「始めての即売会は、どうでざるか?」
室井の横にいた青嶋学が、まんごに訊いた。
チェックのシャツにジーパンという普通の格好をした室井に対して、青嶋は紺色の着物に白地の袴まで履いている。2人とも、背中にはリュックを背負い、肩からは大きな一眼レフを提げていた。
「あの〜、最初は、なかなか売れなくて……。ちょっと、悲しかったけど。今は、すごく嬉しいです。あの……、買っていただき、ありがとうございます!」
まんごは、笑顔で答える。
「いえいえ、礼には及ばぬでござるよ。同人誌は、同人即売会で買うのでござる! 通販で買うのでは無いのでござる! 何より、ここに来ないと感じられない空気が、拙者たちが求めているものでござるよ。即売会は楽しいでござろう。即売会初参加、おめでとうでござる。そして、これからもヨロシクでござるよ!」
青嶋学は、まんごとドリアに向かって言う。
まんごとドリアは、青嶋の言葉に、ウンウンと大きく頷いた。
「拙者たちは、カメラ小僧でござる。新時代を築くそなた達のコスプレ姿を写真に収めたいのだが、撮影してもよろしいでござろうか?」
青嶋学は、肩から提げていた一眼レフを手に取り、2人に笑いかけた。
青嶋と室井は、『写真撮影は本人たちの了承を得てから』というルールをきちんと守るのだ。
「あっ。はい。私たちでよければ!」
まんごは、そそくさと、パイプ椅子から立ち上がる。
その時、偶然にも、まんごの短すぎるミニスカートがまくれ上がった。
「あぁっ! きゃあ!」
「おっ!」
(くっ、黒のレースの……、ティ、ティーバック! 大事な! 大事な! シャッタ〜 チャンス!)(右手をギュッと握る)
室井卓は笑顔を浮かべ、咄嗟にカメラを構えた。
「おっと、すーさん。ダメでござるよ!」
青嶋は、右手でそっと、室井が構えたカメラのレンズを塞いだ。
「パンチラは、データに残すんじゃ無いでござる。脳内に残しておくくらいがちょうどいいんでござるよ」
青嶋学はまんごのスカートの下に見えたパンツ(黒のレースのティーバック)に、ちゃっかりと瞳孔を開かせながらも、カメラを向けることはしなかった。
彼は誇り高き紳士カメコなのだ!
「でも……。あまちゃん。ちょっとくらいエロがあってもいいんじゃない……?」
室井は、青嶋に顔を向ける。
「すーさん、それは違うでござるよ。拙者たちはコスプレイヤーさんたちが楽しくなれるように、レイヤーさん達にカメラを向けるのでござる。レイヤーさんを活かすカメラ小僧。それが拙者の理想とするカメラ小僧でござるよ。エロいことを嫌がるレイヤーさんもいるということを拙者たちは肝に命じなければいけないでござるよ」
青嶋学は、室井卓をたしなめる。
室井は室井商事の社長であり、青嶋はその社員である。
しかし、カメラ小僧歴20年以上のベテランの青嶋は、最近カメラ小僧になった室井よりもカメラ小僧の世界では、先輩なのだ。
「わかりましたよ、あまちゃん。そうだよね。レイヤーさんのことを一番に考えないといけないよね」
室井は、ちゃんと青嶋の助言を聞き入れる。青嶋のことをカメラ小僧の先輩として尊敬しているのだ。
「えへっ。ふひひっ……。」
「このような感じでよろしいでございますか?」
まんごとドリアは、売り場の机の前に出てきて、室井卓と青嶋学のカメラに向けてポーズを決める。
「いい笑顔でござるな。拙者たちは、この笑顔を守るために、カメラ小僧をやっているのでござるよ!」
室井と青嶋は、2人揃ってシャッターを切り続ける。
「あまちゃん! すごくいい感じだねぇ〜」
室井は、横にいる青嶋に声をかけながらも、カメラに夢中だ。
「ああああああああぁぁぁぁぁ!」
気分が乗って来たのか、青嶋は気合いの雄叫びを上げながら、連写する。
青嶋の必撮技の『柔悟蓮撮』だ。1秒間にして15枚もの連続撮影を可能にする必撮技だ。
「あっ、あの、僕も撮影いいですか?」
「俺も!」
「私も!」
「僕も!」
「ミートゥ!」
周りで様子を伺っていたカメラ小僧たちも、続々とまんごとドリアの元に集まってきた。みんな声をかけたかったのだが、日和っていたのだ。(スネイクのせい!)
「えぇ〜。ひゃあ〜」
「少し照れるでございますわ〜」
まんごとドリアは顔を真っ赤にさせながらも、ポーズを取り続ける。
「「「「萌えぇえ〜〜!!」」」」
その恥じらう姿が、カメラ小僧をさらに興奮させた。
「この子たちに変な目を向けたら、拙者がタダでおかないでござるよ〜!」
青嶋が、変なカメラ小僧がいないかを見張りながらも、まんごとドリアの撮影会が始まってしまった。
そして、ポーズを取るドリアとまんごの後ろで、冊子が飛ぶように売れていった。
もちろん、ドリアとまんごは、撮影対象になっていたので、ゆる怪人『天かすマン』の衣装を着たスネイクが一人で、品物をさばいていたのだ。
「お買い上げありがとうございます」
スネイクは、手際よく、そして丁寧に客を捌いていった。執事になる前は何をしていたのであろうか……?
客は、ゆる怪人『天かすマン』の姿に怯えることなく、次々に冊子を買ってゆく。
ただ単純に、後ろで仁王立ちをしていたのがいけなかったのだろう。そもそも、ゆる怪人『天かすマン』は基本的に『ゆる怪人』なので、カッコ可愛いはずである。
そして、『フルキン』が準備した計30冊の冊子は、あっという間に売れてしまった。
青嶋学と室井卓が最初の1冊を買ってから30分程で完売してしまったのだ。
スネイクが機転を利かせて、『完売』と書いた紙を机に貼り付けた。
「やったね〜ドリアちゃん! 完売したね!」
「よかったでございますわ〜!」
ドリアとまんごは、向かい合って満面の笑みを浮かべた。
その様子は、もちろん、周りのカメラ小僧たちをさらに興奮させた。
「うぉ〜〜、尊い!!」
カシャ
「ホァああああああああああああああああああ〜〜〜〜」
カシャ
「萌え〜〜〜」
カシャ
……と、シャッタを切る音が幾度もこだました。
――――――――――――――
『フルキン』の冊子が完売したのは昼過ぎだっため、1日目の閉会まで、まだ時間はある。
そこで、まんごたちは、会場を巡ることにした。
「では、まんごちゃん。ちょっと買い物をして、帰りましょうか? スネイクは、どういたします?」
ドリアはスネイクに、視線を向ける。
スネイクは、もう天かすマンの衣装から、普通の服に着替えを終えていた。
「私も、せっかく会場に来ましたので。見て回りたいものがございます。ですので……、その……。後で合流というかたちでよろしいでしょうか?」
スネイクにも、実は買いたいものがあった。
スネイクは、お気に入りのアニメ『ブクマ100%』の成人用の同人誌が買いたかったのだ。女主人公の『ブック悪魔のブック魔ちゃん』が大のお気に入りだったのだ。
もちろん、このことはドリアとまんごには内緒だ!
「あら、そうでございますか。では、わたくしはまんごちゃんと2人で、会場をウロウロしていますので……。では、3時頃にこのブースのところに再集合ということにいたしましょうか?」
「はい、わかりました。では、ドリアお嬢様、まんご様、お気をつけて! 何かありましたら、すぐに連絡をくださいませ。飛んで駆けつけますゆえ」
スネイクは、ペコリと頭を下げた。
――――――――――――――
3人は、会場を後にして、ホテルに向かう。3人とも、1日目の会場を存分に楽しんだのだ。
まんごは、自分の荷物が入った小さなキャリーケースを引いていたが、ドリアは、ポシェットだけだ。スネイクが、ドリアの分の荷物も入った大きなキャリーケースを引いている。
執事としての仕事だ。
もちろん、スネイクは、自分の『戦利品』をそのキャリーケースに詰めつつも、ドリアに気が付かれないように、荷物の管理を徹底しているのだ。
執事としての責任感だ。
「疲れたでございますわ〜。さっさとシャワーを浴びて寝るでございますわ〜」
「そうよね〜。楽しかったけど、もぅ、クタクタだよぉ〜」
ホテルの部屋に入るなり、ドリアとまんごは、荷物を置き、背伸びをする。
「あっ……。絆創膏、まだ貼ったままだった……。」
まんごは、ふと思い出した。
「そうでございますわね〜」
「トイレに行く暇もなかったからね。でも、さっきまで会場にいた時には気にならなかったけど……。なんか急にトイレに行きたくなってきちゃった。てへっ」
まんごは、舌をペロリと出して笑う。
「そうですわね。わたくしも行きたいでございますわ〜」
2人は、トイレに行き、そして、そそくさとシャワーを浴びた。
まんごにとっては、親と離れての初めての外泊である。
もちろん、まんごとドリアだけでは部屋を予約できなかったので、スネイクと同じ部屋に3人で泊まるのだ。
ベッドは2つあるので、スネイクが1つで、ドリアとまんごで1つだ。
「んっ、ああっ、ドリアちゃん……、おやすみぃ〜」
「まんごちゃん……、おやす……。」
スネイクがシャワーを浴びている最中に、まんごとドリアは、ウトウトとして、寝入ってしまった。
長い1日に疲れたのだ。
「おや? お2人とも、寝てしまわれましたか。今日は本当に、お疲れ様でございます」
シャワーから上がったスネイクは、ドリアとまんごが寝入ってしまっていることにすぐに気がついた。
2人はベッドの上で、仲良く抱き合って眠っている。
スネイクは、2人に、そっと布団をかけてやった。
そして、部屋の明かりを消して、サイドテーブルのところにある小さな照明のスイッチを入れた。
「コ、コホン……。」
スネイクは、キャリーケースの中から、紙袋を取り出す……。
(ブ、ブック魔ちゃん! ブック魔ちゃん! はぁ〜 はぁ〜)
まんごとドリアが寝入った後に、『戦利品』でニヤニヤしたスネイクの話の詳細は、ここでは語られません……。
次の日は『マン・セレ 2020冬』の2日目であった。
3人は、1日目とは全く異なる会場の雰囲気に戸惑いながらも、それはそれとして、色々と楽しんだ。
まんごとドリアの初めての同人即売会は無事に終わったのだった……。
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次回予告
さぁ〜て、次回の『魔法少女 マンゴ☆スチン』は!
どうも、高村甜瓜です。
冬が近づき、寒い日が多くなってきましたね。
今年の秋も、あっという間に過ぎてしまいました。
つい先日、僕のお気に入りの『ト○スハイボール・栗』を作るために必要な『栗』が無くなってしまいました。
もぅ、秋は終わりなんだなぁ〜、と実感します。
そこで、綾子に、「お前の栗を食べさせろ〜」って言ったんですがね。
気がついたら、『ト○スハイボール・栗』を作るはずが、『わ○め酒』という別の飲み物になっていました。
おかしなこともあるものです。
さて、次回は、
桃矢と僕がタイに向かって、旅立ちます。
『第32話 桃矢の旅立ち!さよなら、まんご!だまんごー』
です!
絶対に読んでくださいね!
では、
じゃんけん ポン! (パー)
うふふふふ〜。




