169 ワキガ村
ミズムシ街の南にあるフリンの森
この森を抜けてさらに南へ少し進むと小さい村がある
そこが目的地のワキガ村である
ワキガ村は宿屋すらない本当に小さな村だ
村民も少ないため家屋も5軒ほどしかない
敷地のほとんどが畑で埋め尽くされている
しかし土壌が良いためたくさんの種類の作物が豊富
その作物をミズムシ街に売っている
正確には作物以外の物資と物々交換していた
そのため定期的に冒険者が物資を村へ運ぶ
冒険者は運んだあと交換した作物を街へ持って帰る
これがこの依頼の内容である
俺たちは物資を収納庫に入れてワキガ村へ向かって出発した
まずはフリンの森を抜けないといけない
この森はゴブリンがたくさん棲息している
上位種のゴブリンキングもかなりの数がいる
物資配達のついでに討伐依頼もできる一石二鳥の依頼なのだ
「「「「ごっぶりん、ごっぶりん、ぶっちころせ~♪」」」」
アオイくんとサスケがいつものようにゴブリン討伐ソングを口ずさむ
今回はベンケイさんとサクラさんも一緒になって歌っていた
「「「「「ごっぶりん、ごっぶりん、くっびちょんぱ~♪」」」」」
俺も一緒に歌うことにした
そういやこの森であのバカップルに出会ったんだよな
バカップル、オリハとミスの冒険者カップル
俺たちと同じFPOプレイヤーでこの世界に転移させられた二人
リアルでも恋人というリア充なけしからん奴らだ
「あいつらも転移した仲間を探していたんだよな」
「再会できていたらいいですね」
俺はあのあと仲間全員と合流できた
あいつらは再会できたのだろうか
アオイくんも気にしていたようだ
「そんな奴らがいたのか」
「わたしたちのように会えていたらいいわね」
ベンケイさんとサクラさんにも二人のことを話す
FPO時代の仲間とはまた一緒に冒険したいもんな
「たしか魔法剣士でアダとかいう名前だったな」
「名前は真名を使っているかも知れないから探しにくいよな」
ベンケイさんの言うとおりだ
ベンケイさんだってシズカと真名を名乗っていた
サクラさんなんかチェリーと偽名だったし
アオイくんも最初はシュリって名乗っていたな
「魔法剣士で女の子ってことしかわかっていないからな
俺も気にはかけているが中々出会えていない」
「魔法剣士、女の子・・・」
「ベンケイさん?」
「もしかしたらカエデかも」
「カエデってたしかブリダイコン山でベンケイさんを助けてくれた子か?」
「ああ」
イレイとの戦いで傷ついたベンケイさんが崖から落ちた
崖下の川に流されているところをカエデという子が助けてくれた
「どうしてその子だと思うんだベンケイさん」
「アダって子は天才的に強いんだろ?」
「うん、オリハとミスがそう言っていた」
「カエデは属性ごとの魔力の感じを感覚で判断していた」
「わたしのフラッシュボールを相殺したときね」
「装備のセーラー服は魔法系の職業専用で赤鉢巻は剣士系の職業専用だ
腰に二本の剣を装備しているから剣士系だとわかる
もちろん魔法も使いこなしているから魔法系でもある
二系統の職業を同時に使えていることから魔法剣士だと判断できる」
なるほど、たしかにそうだ
「俺は会っていないから盲点だったよ」
「そのことを知っていたら引きとめていたんだがな」
あのときはまだアダのことを伝えていなかったからな
「仕方がないよ、でもカエデという名前と姿だけでもわかった
バカップルに再会できたら有力な情報として教えられる
それだけでもかなりの収穫だ」
オリハとミスに再会できればいいんだけどな
これはこれで運次第だ
「ブリダイコン山で遊んでいたけど
さすがに一ヶ月以上経っているからもういないかもな」
そりゃそうだろう
「でも一応ブリダイコン山を確認してもいいかケンタ?」
「いいよ、急ぐ旅じゃないから」
この依頼が終わったらブリダイコン山へ行くことにした
ゴブリンを倒しながらフリンの森を進む
もちろん回避できるところは回避して進む
メインは物資の配達でゴブリン討伐はついでだからな
フリンの森を抜けると平原に出る
見通しがいいので村の囲いが遠目に見える
「そんなに遠くはないな」
「ではさっさと行きましょうお兄さん」
この平原には魔物は出ないみたいで村へはすぐに着いた
村に入って第一村人発見!
「こんにちは、物資を運んで来ました」
「おお、待っていましたよ」
初老の男性が村長を呼んでくれた
「ありがとうございます、私は村長のアッパレです」
アッパレさんに倉庫用の家屋へ案内される
そこに運んで来た物資を出していく
「ではこちらへ」
次は作物用の置き場の家屋へ連れて行かれる
交換用の作物が置かれているので収納庫へ入れていく
これをギルドへ運べば依頼達成だ
「もう遅いですから泊まっていって下さいな」
「でもこの村って宿屋がないですよね?」
「私の家には運んで来て下さる冒険者用の客室があります
そちらでお休みください、もちろん食事も用意いたしますよ」
アッパレさん宅へ案内される
小さいが村長宅だから他の家屋よりは大きい
客室はそれなりに広かった
ただ客室は一部屋だけなので全員で泊まることになる
「俺、リビングで寝るよ」
「そうですね、同衾はいけませんよね♪ ぷぷっ♪」
おのれアンナ、そのネタで当分いじるつもりだな!
アッパレさんにリビングで寝かせてもらうことを伝える
「客人をそんなところに寝かせられませんよ」
使っていない部屋を整理してベッドを用意してくれた
他の村人が手伝ってくれてすぐに用意できた
第一村人の初老の男性もいた
「ありがとうございます」
「どうぞごゆっくり♪」
風呂はないが美味しい食事をみんなでいただいた
作物が豊富な村だけあって食材が良質だった
名前はアレだが良い村だな
そう思いながら心地良い眠りについた




