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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
3 ただいま

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153 ただいま

ズルズルズル・・・


でかいハンマーを右手に抱えた少女

その少女は鎖縄で縛られた魔導士の男を引きずっていた


その少女はガイド精霊序列一位アンナ・イニンだった

すげえやアンナパイセン! あ、睨まれた


「お疲れさんアンナ」

「お兄さんもね」


アンナがサジンの横に魔導士ゲシュを並べて繋いだ

サジン同様、ゲシュもうな垂れていた

きっと酷い目にあったのだろう


「姉ちゃん!」

「ハック!」


抱き合うベッキーとハック

ハックも無事で良かった


「やっほー♪」

「サクラさん」


のんびり歩きながらサクラさんがやって来た

その横にホウキが浮いてついてくる


「これはまた色々と酷い」


ホウキに鎖縄を繋げて宙吊り状態で僧侶ザキが運ばれていた

ザキは目が死んでいた


ザキもサジンたちのところへ繋げられる

あとはベンケイさんだけか


「ベンケイさん遅いな」


探索マップで確認してみる

トムと一緒にいるみたいだが人がたくさんいるところにいた


「チンピラどもに襲われているのか?」

「ベンケイちゃんなら問題ないでしょ」

「いえ恐らく襲っているのはお姉ちゃんの方かも」


「どういうことだアンナ」

「敵はすぐに倒せたけど物足りなくてチンピラさんたちを襲っているのでは」


すんごくありえる


「じゃ俺らが迎えに行くか」

「そうしましょう」

「そうですね」


「トムもベンケイさんと一緒なんだよね?」

「ああ、ベンケイさんがいるから無事だろう」


安心と軽い不安を抱えた表情のベッキー

ベンケイさん、暴れ足りないのはわかるが抑えてね


俺たちはベンケイさんのところへ向かった




「ようケンタ、遅かったな♪」

「ベンケイさん・・・」


思いっ切り暴れてスッキリした顔のベンケイさんが出迎えてくれる

チンピラたちは全員倒れていた


「トム!」

「兄ちゃん!」

「姉ちゃん、ハック!」


三人は抱き合う

みんな無事で本当に良かった


とりあえずチンピラたちと格闘家ゴートを建物に押し込める

サクラさんが建物を結界で覆う


「これでよし、と」

「街に帰ったら警備隊に伝えて連行してもらいましょう」


この人数を俺たちだけでは街まで連行できないからな

木に縛り上げた三人は心が折れているから逃げないだろう


「マニーの方はアオイくんが捕まえてくれているだろうし

 ユザワヤとかいう奴はベルさんがどうにかしてくれる

 あとは領主様と警備隊の仕事だ」


「そうですね」

「それじゃ街へ帰りましょ」

「暴れたから腹減ったぜ」


この建物はアジトだったので馬や馬車がいくつかあった

それを拝借して乗って帰ることにした


俺たちは馬車に乗り街へ帰還する




「どうしよう」

「どうしましょう」


街の北門が見えてきたところで馬車を止める

門を通らず壁越えしたことを思い出した


「しょうがない、また壁越えして街へ戻ろう」


アンナがハックを抱えて飛んで街に入る

ベンケイさんとトムはホウキに乗せてもらって街に入る

サクラさんはフライで飛んで街に入る

俺がベッキーを抱えてフライで飛んで街に入った

馬は馬車から外して逃がしてやった


「じゃアオイくんを迎えに行こう」

「行きましょう」


俺たちはコソコソと逃げるようにその場からマニーの商館へ向かう




商館の前に街の警備隊の人がたくさんいた

商館から悪そうな奴らが連行されている

警備隊以外にも見覚えのある兵士たちもいた


「あれって領主様の私兵じゃないか?」

「そうですね、なぜ警備隊の人たちの手伝いをしているのでしょう」


首をかしげていると商館から領主様とアオイくんが出てきた


「アオイくん」

「ケンタ殿、みんなも」

「おおケンタか」

「なんで領主様たちがここに?」


「シシリーからマニーのことを聞いてすぐに調査したのだ

 ある程度の証拠は掴んだから捕まえに来た

 来たらアオイと聖獣たちがいたので驚いたぞ

 まあおかげで楽に捕まえることができたがな」


あいかわらず仕事が早いな

証拠とか俺たち苦労したのに


「きちんと裁いてやるからあとは任せろ」

「はい、お願いします」


「では私はこのままマニーたちの護送についていく

 落ち着いたら私の屋敷へ来てくれ」


「必ず伺います」


シシリーや領主様には世話になっているからな

みんなで挨拶に行こう


「あ、待って下さい領主様」

「なんだ?」


サクラさんが立ち去ろうとする領主様を止める


「みんなあの魔道具を回収するから出して」


サクラさんから預かっていたビリヤードの玉ほどの球体の魔道具

そうだな、これがあればマニーを裁きやすいだろう

俺たちはサクラさんに魔道具を返した


「領主様、これを使って下さい」

「ん、これは? いや見覚えがあるな」


領主様が魔道具を確認する


「ああ、録音玉か」

「はい」


録音玉、魔力を流すと録音を開始する魔道具

いわゆるボイスレコーダーだ


風の戦士団の奴らがベラベラとしゃべったことが録音されている

あいつら俺たちが格下だと思って自身の悪事や欲望を隠さず語っていたからな

マニーと関りがあることもしゃべっていたし充分な断罪材料になるだろう

さらにアオイくんの録音玉にはマニー自身が自白したことが録音されている

マニーはこれでおしまいだろう


「これは助かる、本当にお前たちには助けてもらってばかりだな」


領主様は俺たちに一礼して立ち去った


俺は警備隊の隊長さんに声をかける

あの廃村に風の戦士団とマニーの部下を捕らえていることを伝えた

これであいつらは警備隊に連行されるだろう


「俺たちのやれることはここまでだな」

「そうですね、やっと終わりました」

「まあまだ悪党どもの断罪がありますけどね」

「それは領主様たちの仕事だから私らはここまでだ」

「アオイちゃんじゃないけど、これにて一件落着ね♪」

「それは拙者が言いたかったでござる~!」


みんなで笑う、ベッキーたちも笑っていた

こいつらに笑顔が戻って良かった




すでに空は暗くなり街には明かりが灯る

もう遅いので今日は宿屋で一泊することにした

俺たちの屋敷へ帰るのは明日だ

馬車もあるのでベッキーたちを連れて凱旋だ


宿屋の食堂で夕食をとる

ベッキーが遠慮してパンと水だけを注文しようとする

そうはさせるかと俺がガンガン注文してやった


「おじさん、そんなに食べられないよ」

「トムとハックのもあるんだ、ゆっくりたくさん食べろ」

「助けてもらってばかりなのに・・・」


「なんだよ、俺たちの家族になったんだから遠慮すんな

 仲間や家族は助け合うものだから気にするな」


「わたしたちはおじさんたちを助けられる力がないよ」

「安心しろ、お前らはすぐに俺たちの助けになる」

「たとえば?」

「・・・お、これも注文しよう」

「おじさん?」

「・・・・・」(目を逸らす)


「ベッキーさん、お兄さんはノリと勢いだけで言っているの

 とても情けないおじさんだけど許してあげてね」


「おまっ、アンナ! 少しはフォローしろ!」

「充分なフォローだと思うけど?」


くそうアンナめ

ほら、ベッキーがジト目で俺を見てるじゃないか!


「はあ、しょうがないですね」


呆れながらもベッキーは笑っていた

それからは遠慮が少し解けたのかデザートもお願いと言ってきた

みんなで飲んで食べて笑い合う、俺の理想図だ


たらふく食べ終わって就寝

良い夢が見れそうだ




翌朝、馬車に乗って屋敷へ向かう

ベッキーたちは疲れが一気に出たのか移動中眠っていた


ちなみにガイド精霊たちはポチャとサスケ以外は姿を隠している

さすがに犬猫以外は恐がるかもしれないからな

会わせるのはタイミングを見計らってからだ


屋敷に到着したので起こした

馬車から降りてサクラさんに屋敷の結界を解除してもらう


「帰って来たぜ俺たちの家に!」

「はいはい、早く中に入りましょうお兄さん」


アンナに急かされて一緒に中へ入る

ベンケイさん、アオイくん、サクラさんも続けて入る


「ほらベッキーたちも入れよ」

「う、うん」


三人とも少し躊躇している


「お、お邪魔します」

「お邪魔します」

「お邪魔します」


三人がそう言って玄関に入ろうとする

だがそれはダメだ!


「止まれ、入るな!」


「「「お、おじさん?」」」


いきなり入るなと言われて困惑する三人


「そ、そうだよね、やっぱりわたしたちは・・・」


俺は三人の前に立つ


「お前ら、俺たちの家族だろ!」

「え、家族じゃないから入らせなかったんじゃ」


「違う! 家族なのに家に入るときの言葉が間違っていたから止めたんだ」

「え?」


「お前らは俺たちの家族だ、だからここはお前たちの家だ

 自分ちに帰って来てお邪魔しますはないだろ?」


「あ・・・」


どうやらわかってくれたらしい


「そうだね、ごめんなさい」

「僕たちが悪かったよおじさん」

「ごめん、おじさん」


俺は玄関へ入り直して三人を待つ

三人は少し照れくさそうにしている

そして三人は照れた笑顔で玄関へ入ってくる

家族としての最初の一歩を踏み出して


「「「ただいま♪」」」

やっと「ただいま」を言わせられました、章タイトル回収!

姉弟の話はこのラストシーンを最初に決めていたのでやっと辿り着けました

でも第三章はまだ終わっていません、あと一話、次回で第三章終幕です

そして第四章へとなだれ込みます、お読みいただければありがたき幸せ

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