3-4-3 VSストーンゴーレム(見るしか出来ない!) ③
本日1話目の投稿です。
「きゃあ!」
「わああ!」
目の前に俺たちの胴体なんてまとめて鷲掴みできるぐらい巨大な石の手が広がり、虚ろな赤い片目に捕らわれる。
ひゅっと内臓が浮くような感覚がして、一息にストーンゴーレムから離れた!
そして俺たちを掴み損ねてズズンっと地響きを立てて倒れた背中に降りる勢いで、ルーファスネイトが後ろから首にあたる位置を、ピルピルさんが横からダガーを突き立てて、巨大な頭部がついにその胴体から離れて転がった!!
「な、なに? なんなの?」
「ヴィントが俺たちを連れて飛んでくれた……」
「ごめんね、ああやって引きつけて転ばせるのが早いと思って」
ヴィントは足ががくがくしてるマリーベルをしっかり片腕で支えて笑うけど、普通はこんなことできないよ!
この世界の人間って本当に非力だな……。俺もべつの種族になりたかった! いやでも、そしたら獣人族の耳と尻尾の魅力には気づかなかったかもだし、これはしょうがないかな!
「うん、あとは核か」
「もったいないけど、こいつは核を壊さないと何回でも起きるからな。ボクが壊すからいいぞ」
「わかった。ヴィント、サトルと娘は無事か?」
「当然でしょ。それよりリチャードさんは……ああ、ギリギリだったねえ」
ん? ギリギリ?
ヴィントの腕から抜け出してそっとミントに似た形の葉っぱと匂いの茂みを覗いたら…うわ。
倒れたゴーレムの指の先がちょっと土精の加護の端っこに届いていて、そこがみしみし軋んでた……。
「なに、加護が残っているなら問題ないさ」
相手はストーンゴーレムだったし血は付いてないけど、習慣なんだろうな。笑いながら優雅に血振りした長剣をルーファスネイトが鞘に納めて、俺とマリーベルに手を伸ばす。
「二人とも無事だな。よしよし」
いや、だからってべつに撫でてくれなくてもいいんだけど……。
「ね、ねえ。あたしたちより、あんたたちの仲間はいいの?」
俺もそれが気になる。
俺は一応治癒の宝珠も使えるし、ポーションも持ってるし!
「うん、問題ないだろう」
せめて、ちらっとぐらい見てあげようよ!
仲間の人が心配になって先に茂みに向かおうとしたんだけど、ちょうど歩き出したところでゴーレムの腕がごろんっと動いてびくっと止まる。
「ほい、いいぞー」
ああ、なんだ。
ピルピルさんが核を破壊したから、石を繋ぐ魔力が切れて崩れたんだ。
ほっとしてそっと足下の大小に崩れた石を爪先でつつくと、ルーファスネイトがいくつか拾って渡そうとしてきた。
「欲しいのか?」
「いらない」
「あ、あたしもいらないわ」
「そうか……」
いや、がっかりしなくていいと思う。
元ストーンゴーレムだった石…って、ど、どうなんだろう? 素材になるのかな?
いや、なんの素材だよって感じが…魔物に投げてみる? 小石のないとこだと役に立つかも……?
サーチしてみたけど、「ストーンゴーレムだった石。固い」だし。
「んん? やっぱり欲しいのか?」
「うーん、投げるのに手頃な大きさのヤツならいくつか持っててもいいかなって……。意外とちょうどいい小石って落ちてないし。でも鞄の中でいきなりうごうごすることってないかな?」
ルーファスネイトの手から三つほど取って言ってみたら、あれ? ルーファスネイトが止まった。
え、待って? しかも考え込んでない?
「サトル、それはポイしとけ。ゴーレム系は時間がたったら復活するから、たぶんある日突然鞄の中でうごうごするぞー?」
「ひぃッ」
「ま、ボクぐらいの冒険者になったら、逆にその習性を利用するために持っておくけどね。いつ復活したのかわかるし、周期を図るのにも便利だ」
「な、なるほど……」
思わず手を引っ込めちゃったけど、ひ、一つぐらいは持っておくか……?
マリーベルも同じことを考えたようで、ごくっと喉を鳴らして小石を取りかけた。
「もう、ピルさん。まだ駆け出しの子たちに変なこと教えちゃ駄目でしょ? ルーさんもそんなの早くポイして!」
変なことなのかな? 役に立つ情報だと思ったんだけどなあ。
でも、未練たらしくルーファスネイトの手のひらの石を見てたら、寄ってきたヴィントがその石をさっと取り上げて、捨てながら教えてくれたんだ。
「君たちは素直ないい子だから教えるけどね? ゴーレムの石を持っていたら、この先に迷宮探索したときに優先的にゴーレムに狙われることになるよ。仲間の石を持ってるからね」
怖い! 元ゴーレムの石は、利用できるようになるまで絶対に持たないことを俺は今、心に誓った!!
「はっはっは! ボクぐらいになるとそれも利用できるんだけどなー?」
「もう、ピルさんは引き寄せが上手いんだから、べつに持ってなくたっていいでしょう?」
「ゴーレムは仲間と引き合うんだよ。知ってるだろ? 欠片があると優先的にそこに向かうから、罠を仕掛けるのに使える」
キラっとブルーの目を光らせて言うけど、ヴィントは流されずに首を横に振った。
「それもやめて。前に五体ぐらい一気に出てこられて、僕も腕が痺れて大変だったし、ルーさんはスペアの剣まで折れて魔法も効かないし、最後はあなたのダガーを借りて苦労して、なんとか倒したんだからね」
「あのときは、ボクも引き寄せとおまえたちを支援する呪歌でずいぶん貢献しただろう!」
「あの時のピルさん、それぐらいしかやれることがなかったよね? それに支援系の呪歌はあとでどっと来るし、あのあと僕たちしばらく歩くのもきつかったんだから」
「……可愛いげのない坊主だ」
会話はコミカルだからなんでもない話に聞こえるけど、実物を知った今の俺にとっては五体のゴーレムって恐怖でしかない。
改めて決めた。俺は絶対この人たちと冒険しないぞ! 絶対にだ!!
「あ、ねえ。土精の加護が解けたんじゃない?」
「うん、そのようだな」
「起きた様子はないね」
マリーベルに袖を引かれてまたミントっぽい茂みを覗くと、確かに土精の加護が消えていた。中の人はまだ寝てるな……。
いやこれ、意識を失ってるんじゃないか?
ルーファスネイトが先に向かって、俺もその後から恐る恐る近づいてしっかり覗いてみた。




