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2-3-1 勧誘地獄その1、インテリエルフを添えて ②

本日1話目の投稿です。


「冒険者ランクは俺がC、こいつらはDだ。そいつも駆け出しだろ? だったらランクは近い方がいい」

「報酬は」

「そりゃ四人なんだから、四等分だろ」


 絶対くれなさそう…と思ってたら、一番おとなしそうな少し太った左の人が口を開いた。


「マジックアイテム分の上乗せで四等分だ。そいつは駆け出しの上、見たところ戦闘力も乏しい。力が付くまでは守ってやらなきゃいけないだろうから、その護衛分は堪えてもらう。もちろん一人前になって、本人が希望するなら割合は変更に応じるよ」


 あれ、意外とまともなことを言ってる?

 そういえば、前の連中と違って露骨に「女もいるぜ」なんて言わないし。

 意外に思っておずおず顔を上げたら、今度は右の人が続けた。


「冒険者ランクがDに昇格時点で交渉に応じる。荷物持ち(ポーター)扱いだが、貴重なマジックアイテム持ちだからな。大事に使うぜ。悪い話じゃないはずだ」

「条件はこちらに記しました。退出してください」

「はあ!? おい、返事は!?」

「後日ギルドよりお知らせします」

 

 エルムさんがぱんと手を叩くとドアが開いて、「はいよ」「交代だぞ~」と言いながら、職員なんだか雇われたんだかの体格のいい男二人が連れ出してくれた。

 片方が巨人族(タイタン)、もう片方が熊みたいな獣人族(ガルフ)なんだけど、ごねる相手でも余裕で引っ張り出してくれるあたり、すごく頼もしい!

 

「あの、エルムさん」

「なんでしょうか」

「勧誘って、受けなくちゃダメですか?」

「嫌なら受けなくても構いません」


 それなら、と立ち上がりかけたけど、続けて言われたエルムさんの言葉にしおしおと座り直す羽目になった……。


「ただその場合、それぞれのパーティが勝手に君に対して勧誘を行うことになります」

「え」

「ナーオットの冒険者ギルドに於いて新人冒険者の勧誘に我々職員が立ち会うのは、恫喝や有用アイテムの強奪を未然に防ぎ、新人冒険者が己の適性に合った環境を手に入れる手助けのためです。必要がないという者に強制はしません」

「強制してください! 立ち会って欲しいです!!」


 絶対これ、断ったらダメなやつじゃん…!

 しょうがない。おとなしく今日だけ我慢しよう。

 そう思って覚悟を決めたんだけど、エルムさんはまた眼鏡を押し上げながら、ひたっと俺を見てつづけたのだった。


「サトル・ウィステリア君」

「は、はい」

「我々は、君の持つマジックアイテムの有用性と危険性をよく理解しています」


 うう、また叱られるパターンか…!

 それはもうピルピルさんにもやられたから、勘弁して欲しい。言えないけども!


「単純なことです。悪事に加担する者が入手した際のことを、君はよく考えるべきだ」

「悪事……」


 こっちでいう悪事って、なんだろう。

 いや、一通りのことは想像がつくけどさ。

 鞄を使ってとなると、……すごく物が運べる。闇取引とかに使えるよな。

 あ、でも。


「生きた人は運べないので、誘拐しろって言われてもできませんけど…」

「試したのですか?」


 あれ、なんかびっくりされた。いやいや、してないよ!


「昨夜、この鞄が不思議だーって子どもが中に入ろうとしたけど、入れなかったんで」

「それは君が収納魔法(ストレージスペル)を唱えなかったからでは?」

「いえ、鞄がいやがったから。植物は入っても、動物はダメです」


 どうしてわかるのかって言われたら、それは俺がこの鞄の、そしてソロモン・コアの持ち主だからとしか言えない。

 エルムさんは少し黙って、それから初めてしみじみと俺の膝の上にある鞄を見た。


「なるほど…。それならよかった」

「ほかのこういうマジックアイテムって、もしかして生きた人も入れられるんですか?」

「いいえ。……いえ、正確には、入れるだけならば入れられます」


 そうなの!? うわあ、中ってどうなってるんだろう。


「ですが、生きたまま展開(スプレッド)はできません」

「えっ」

「どういう理屈かはわかりませんが、心臓が動いているものを収納(ストレージ)した場合、展開(スプレッド)する時には原型を留めていませんでした」

「…ッ!」


 えっぐ…!!

 うっと来て口元を抑えて鞄を抱きしめたけど、エルムさんは気づく様子もなく顎に手を当ててぶつぶつとなにか言ってる。


「なるほど…アルケーの四大元素(エレメンタル)による魔術史レゾンデートル第三章第五節の無知なる者の証と(ことわり)か」

「エルムさん!?」


 やばい…俺どころじゃない。エルフのイケメンが遅れてきた中二病発症しちゃった…!!

 どうしよう。これ、どうしたらいいんだろう。


「いや、そうだ。アルケーといえば光闇(カオス)の摂理についても触れた項目があるな。そちらからの見解の方が恐らく近い。やはり魔力の根源たるマナの集まるダイアファナスの領域には、」


 なに言ってるかわかんないけど、やばいこと言ってるのだけはわかる!!

 なんとか帰ってこさせないと、こんなイケメンに黒歴史背負わせるとか、気の毒過ぎて見過ごすなんてできん!


「エ、エルムさん、エルムさん! 次のパーティはまだですかね!?」

「はっ、私としたことが…。失礼しました」

「い、いえ。無事ならよかったです」

「次のパーティ、どうぞ」


 お、おお、ちゃんと帰って来てくれて偉いぞ!

 立ち会いならサイモンさんかマイヤさんがよかったな~って思うけど、ちゃんと聞くことも聞いてくれてるしよかった。

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