22 両親とのごあいさつ。
精霊王が帰った事で、ティレーリアとコーデリア達の間で、うん、それじゃ、お元気で、というような微妙なやり取りが行われた。
そしてティレーリアの両親や村の人たちにはコーデリアが上手く伝えてくれると約束をして、エリアディールが大丈夫だと言うのだから王都へ戻るとコーデリアが決定した事で、勇者一行はヴィリディスによって即座にティレーリアの住んでいた村のほど近くの森の中に飛ばされた。
「あら、私もう少しコーデリアさんと話したかったのに」
キャスリンの苦情に、ヴィリディスが「僕は話す事はないので」と素っ気なく返す。
「離宮に呼ぶ分には文句は言いませんよ」
「あら、そうしたら離宮にも『謁見の間』を作らないといけないわね」
「お好きにどうぞ」
ヴィリディスの言葉に、キャスリンが隣のバーディアルを見上げる。
バーディアルがうむ、と頷くと、キャスリンが嬉しそうに微笑んだ。
その会話をティレーリアが不思議そうに聞いている事に気付いて、ヴィリディスが説明をしてくれる。
「人間や、特に精霊にとっては、魔族の国は瘴気が濃くて長い時間は居られないらしいんだ。盟約の関係で魔族は出ていけないから、魔族と精霊族と人族とで顔を合わせる必要がある時は、魔王の城でやるし、新たな魔王が覚醒すれば花嫁候補もやって来る。だから『謁見の間』だけは、特別に瘴気を遮断してあるんだ」
この部屋の事ね、と言われて、ティレーリアはこの部屋に入った時に身体が軽くなったような気がしたのはそういう事だったのかしら、と頷く。
「コーデリアさんともアディとも会いたいけれど、私たちはもうここを使う事が出来ないから……ってそんな事はどうでも良いわね。――それよりも、ね、ヴィリディス」
キャスリンがそわそわとティレーリアを見る。
「あぁ、はい。彼女がティレーリアです。――ティーア、さっきも言ったけど、僕の両親」
唐突に〝顔合わせ〟に突入されて、ティレーリアは慌てて背筋を伸ばす。
「あ、あの。ティレーリアです。えぇっと……その、不束者ですが……」
「あらやだ、そういうのは良いのよ。 私はキャスリン、こっちが先代で夫のバーディアルよ」
先ほどからほとんど表情の動かない先代魔王をついでのように紹介したキャスリンと、僅かに頬を緩めてよろしくと呟いたバーディアルに、ティレーリアは深々と頭を下げる。
「これからヴィリディスの事をよろしくね」
ふわりとキャスリンに手を握られて、ティレーリアはおずおずとその柔らかな手を握り返す。
「最初は色々と戸惑う事もあると思うわ。というか、たーーーっくさん、あるわ」
自分の時の事を思い出しているのか、キャスリンが遠い目をする。
「だから、息抜きしたくなったり、ちょっとヴィリディスから離れたくなったりしたら、遠慮なく私のところに来てね」
「母上……?」
じとりとヴィリディスから睨まれて、キャスリンはだってねぇ、とバーディアルをちらりと見る。
そしてティレーリアの耳元に顔を寄せると、そっと囁いた。
「もう無理って思ったら、私の名前を呼んでね」
「は……い? ありがとうございます……?」
首を傾げるティレーリアに、キャスリンはうふふといたずらっ子の様に微笑んで、ティレーリアから身体を離す。
「それじゃあ、お邪魔虫は退散するわね」
そう言ってバーディアルの腕をとったキャスリンは、ヴィリディスの対面に移動してドレスの裾を持ち上げると、「魔王陛下、御前を失礼いたしますわ」 と冗談めかして言うと、軽やかに礼をした。
そうして腕を組んだまま部屋を出て行った先代魔王夫妻を見送ったティレーリアは「バーディアル様の声、ほとんど聞けなかったわ……」と呟いた。
「父上はいつもあんなもんだよ。その分母上がしゃべってるから、ある意味バランスが良いんだと思う」




