02 出逢い
国の中でも端っこの、鬱蒼とした森の手前にこぢんまりと在る村でティレーリアは育った。
森を超えると魔族の国だ。
森は広大で、人間と魔族を隔てる壁のような存在だった。
だから村の子供たちは皆、
森に入ったら魔族に食べられてしまうよ
絶対に森に入ってはいけないよ
と言われて育つ。
けれど好奇心の旺盛な子供たちがそんな言いつけを守るわけもなく、時々森の中で子供が消える。
けれどほとんどが数日の内には戻ってくるのだという。
いなくなっていた間の記憶だけを失って。
ティレーリアも子供の頃に何人かと森に入って、少し道から逸れたところに咲いていたキレイな花に気を奪われている間にはぐれてしまった。
そうしてウロウロしてるうちに、突然視界が開けて湖に出た。
小さな花が咲き乱れる、穏やかな湖畔。
ティレーリアは一目でその場所が気に入った。
湖に駆け寄って、中を覗き込んでみる。
水はとても澄んでいて、湖の底まで見えているのではないかと思えるほどだった。
「わぁ、きれいな水!」
湖の水に触れようと手を伸ばした、その時。
「あぶないよ」
背後から声がして、ティレーリアは驚いて振り返る。
そこには一人の少年が立っていた。
村の子供ではない。
月の光をそのまま詰め込んだみたいな白銀の髪に、アメジストみたいな紫の瞳。
綺麗な綺麗な、お人形みたいな男の子が、ティレーリアを見下ろしていた。
「あなた、だぁれ? わたしはティレーリア。みんなはティーアって呼んでるわ」
「……ぼくは、ヴィリディス」
「ヴィリディス……じゃあヴィー?」
「……そんな風には呼ばれた事ない」
「じゃあ何て呼ばれてるの?」
「そのまま、ヴィリディスって」
「そうなの? じゃあ、わたしはヴィーって呼んでも良い?」
ヴィリディスは良いとも悪いとも言わなかったので、ティレーリアはニコリと微笑んで手を差し出す。
「よろしくね、ヴィー」
ヴィリディスは、ティレーリアの手を不思議そうに眺めて、首を傾げる。
「握手よ。よろしくって事」
ティレーリアは半ば強引にヴィリディスの手を取ると、ギュッと握った。
ヴィリディスは戸惑ったようにティレーリアを見つめ返して、そして握り返す手に少しだけ力を込めた。
そうしてティレーリアとヴィリディスは友達になった。




