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天空海  作者: 倫 正道
2/11

序:天空大海洋説

 小学校の頃から、雲一つない青空なんか眺めてると、青空が広い海の様に感じる事がありました。

 今回の小説ではその感じを小説にしてみました。稚拙な文章ですが最後までお読みください。

[序]


 眩いばかりに降り注ぐ流星群は燃え尽きる事無く地上に衝突し、衝撃で地上重力圏から突破したスターダスト達は再び流星として地上に衝突する。

 地上はこの十七年、この超自然現象的な攻撃によって、既存インフラの八割が復旧不可能な状態に追い込まれ、主要都市は廃墟と化し、人口は絶頂期の十五パーセントにまで減少した。

 

天人アメヒト


 彼らの存在が確認されたのは今から十七年前、きっかけは当時の天文学会で異端児とされていたルーダ・ラインベルト博士が提唱した『天空大海洋説』の確認調査プロジェクトであった。


 古代から人類は様々な宇宙観を編み出してきた。

 時にアーチ状の空だったり、時に象や亀や蛇といった動物達が世界を構成していたりと、人類の宇宙に対する想像力には際限が無かった。

 近代化を経た今、宇宙に対しても科学の大きなメスが入った。

 各国が競って宇宙開発に勤しむ中、宇宙観の科学的視点からの見解が明らかになろうとしていた矢先、かの科学者はこう述べたのだ。


「我々が今いる星、我が母なる星である地球は、その周囲を底の見えない巨大な海に囲まれている。我々が常日頃見ているあの青空は、広大な海なのである」


 学会における『天空大海洋説』の発表は全世界に衝撃を与えた。何せ近代科学の権威達が集結している学会にて、非科学極まりない発表が堂々と行われたのだ。


 ラインベルト博士の研究室には賛否の意見が綴られた意見書が日に数百通という勢いで届いていた。しかし、やはりと言っては何だが、『あまりに非科学的だ』『その論文を児童文学の出版社にでも持っていったらどうだ』『科学者はもっと冷静沈着で論理的であるべき』etc……。

 と反対意見の方が遥かに数は多かった。

 大学も見兼ねたのか、博士に対して『明確な根拠を示したらどうか』と打診してきた。

 そこで博士が行ったのが後世に語り継がれる愚行となった『超長空垂直弾道ミサイル発射計画』だった。


 科学の進歩は時に人類の思考を超越して一人歩きしてしまう事がある。

 当時は過熱した世論を鎮圧させる目的もあったが、科学者自身の知的探究心自体が抑えきれなかったというのが大半の理由だ。ミサイルの開発から発射まで大した時間は掛からなかった。


『空に一筋の白い雲が、地上から空へと伸びていった……。どこまでもどこまでも伸びるその雲の先端は、一瞬消えたと思うと何かにぶつかったのか大爆発を起こしたんだ。するとどうだ、今まで静止していた青い空が波をたてて揺らいだんだ。みんな驚きを隠せないでいたよ。本当に空が海だったのか、なんてね』


 実験成功直後に記者からのインタビューにうれしそうに答える博士の映像、その表情からは、その後起こる悲劇への懸念は微塵も感じられなかった。


『都市を襲う流星群 被害は復興速度を超え拡大中』


 実験が終了して三日後、センセーショナルに打ち出した新聞一面、これが『天人』関連最初の記事となった。


 空が広大な海と判明した今、この流星群はどこから発生したのか。天文学会は当分の間その話題で持ち切りとなった。

 結局はラインベルト博士が「ミサイルの残骸ではないか」と述べただけでこの議題は後回しにされ、学会は『天空海』と名付けられた空の海の開発についての議論に戻っていった。


 しかし状況は日に日に最悪へと向かっていた。実験が終了して一年が経った時点で総人口は十八パーセント減少、既存インフラの崩壊に伴う輸送効率の低下は世界経済に大打撃を与えた。

 学会や各国政府はさすがにこの状況を放置しておく事が出来なくなっていた。

 

 ───ミサイルの破片なんかではない。誰かが、意図的に攻撃を行っている。


 この見解は誰の目にも明らかな事だった。

 流星群が主として落下しているのは各国政府省庁が設置されている主要都市ばかりで、農村や無人地帯といった所への落下報告はほとんど無かったのだ。


 ───しかし、一体誰がこんな事を……。


 その答えは思ったよりも早く、地上(・・)に返ってきた。


『我々は天人である。我が種族に攻撃行動を行った愚かな地上種族に対し、我々は地上種族の完全なる殲滅という形で報復を行う事を決定した。しかし、我が高貴なる天空の種族は事前連絡無しに戦闘を行う事は好まないし自尊心が許さない。そこで貴様らの耳に入れておこうと思い参上した。貴様らの暦で言うこの一年の間に行った攻撃は、攻撃を受けた部族によるものだ。我が天人政府は地上時間の今日、十一時三十分に最高評議会にて地上に対する全面的な報復を訴えてきた部族の意見を受理、開戦予定日を一週間後の六月八日午前九時〇〇分と決定した。地上種族諸君よ、貴様らの軍事力は大したことは無いと思うが、健闘を祈ろう』


 突如として空から護衛を数名つけて降り立った白髭の青い軍服のようなものを着た男は、そのまま空へと飛び立ち、青空にとけ込んでいった……。


 一週間後、人類はその言葉通り健闘するも大敗に大敗を重ね、十七年という長く、覚める事の無い悪夢の中へと突き落とされていった。



 






 



 

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