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剣と魔法だと聞いたのに、転生先は未来ロボ戦争ゲーム世界でした。チート無双の予定が、科学文明で初期スキル死亡  作者: はちねろ
第1章 剣と魔法はなかった

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第1話 勇者1200ポイント

選んだのは、安全なはずの道だった。

 黒い機体が、一人で戦線を塞いでいた。


 両腕に二門、肩口のサイドアームに二門。四つのガトリングが弾を吐き出し、押し寄せる群れを正面から押し返している。外から見れば、英雄に見えたかもしれない。誰かを救うために、戦場を支える馬鹿みたいな一機。


 左前方では、味方のパワードスーツが膝をついていた。肩から煙が上がり、青い味方表示が点滅している。中の人間は生きている。


 そこへ、エイリアンの群れが向かっていた。人の腰ほどある丸い体が、装甲車みたいに低く這ってくる。前の一匹が弾幕で潰れても、後ろの一匹が死骸を踏み越える。


「……ふざけんな。勝っても赤字じゃねえか」


 撃てば弾代が増える。修理費も増える。焼けた銃身を替える金もいる。撃てば撃つほど、今日の稼ぎが溶けていく。


 右腕の弾が切れかけた。一瞬だけ、弾幕が薄くなる。


「装填」


 空中に、黒い弾の箱が現れた。右腕の装填口が開き、焼けたマガジンを吐き出す。新しい箱が奥で噛み合った。残り九十八。


 弾幕が戻った。


 敵の群れが押し潰される。丸い体が崩れ、細い脚が飛び、味方機へ迫っていた敵が弾の雨の中で形を失っていく。


 味方機の足元へ集まりかけた群れへ、右腕を向けた。撃つ。壊れた装甲の陰で敵が弾け、黒い中身が砂に散った。味方機の表示は、消えない。


 まだ、生きている。


 敵が溶ける。弾も溶ける。金も溶ける。


 この世界では、敵を倒す力だけでは生き残れない。勝っても、壊れれば終わり。生き残っても、次に出る金がなければ詰む。


 間違えたはずのスキル選択が、この瞬間も俺を生かしていた。


 あの選択をしたとき、俺はまだ、この世界が剣と魔法でできていると思っていた。




 始まりは、ただ白かった。


 床も、壁も、天井もない。ただ光だけが満ちている。影も距離もなく、立っているのか浮いているのかも分からない。普通なら叫ぶ場面なのかもしれないが、俺の口から出たのは、かなり乾いた声だった。


「……ああ、はいはい」


 異世界転生。スキル選択。チート能力。無双コース。ネット小説で何度も見たやつだ。


 視界の端に、半透明の枠が浮かんでいる。触れてもいないのに、意識を向けるだけで反応した。便利だなと思うより先に、チュートリアル親切すぎないか、というどうでもいい感想が浮かぶ。


 横一列に項目が並ぶ。


 スキル。魔法。技能。称号。名声。加護。


 はいはい、分かる。いかにもだ。呪いとか寿命とかは……逆にないのか。マイナスでポイント増えるやつ、少し期待したんだけど。


 ──でも、よく見るとポイント制らしい。


 自分のポイントは、1200。


 多いのか、少ないのかは分からない。異世界転生の相場なんて知るわけがない。だが、こういう画面で一番怖いのは、ノリで選んだあとに取り返しがつかないことだ。


 まずはスキルを見ることにした。


 アイテムボックス。鑑定。索敵。隠密。戦闘補助。身体強化。自然回復。応急処置。さらに下へ視線を滑らせると、まだ続いていた。


 ……待って。


 これ、選びきれる量か?


 ゲームなら攻略サイトを見る場面だ。だが目の前には、白い空間と半透明の表示しかない。検索窓もない。初心者向けのティア表くらい欲しかった。


 正直なところ、一番欲しかったのは鑑定だった。


 未知の世界で、何が安全で、何が危険か。それを教えてくれる“先生役”が、どうしても欲しかった。触ったら死ぬ草。近づいたらアウトなモンスター。価値のあるものと、ただのガラクタ。


 全部、誰かに「それはやめとけ」と言ってほしい。


 鑑定先生に視線を向けると、数字が浮かんだ。


 【消費:1000】


 高い。


 先生、授業料が高すぎる。


 強いのは分かる。便利なのも分かる。だが、鑑定だけ持って全裸で森に放り出されたら、俺は「この草は毒です」と理解しながら飢えることになる。


 それはそれで、かなり嫌だ。


 代わりに目に入ったのが、アイテムボックスだった。


 荷物を持てる。安全に保管できる。逃げるときも、身軽でいられる。地味だが、一番腐りにくい。食料、水、道具、拾ったもの。何をするにも荷物は必要になる。


 先生はいないけど、荷物は裏切らない。


 そう思うことにして、俺は鑑定から視線を外した。


 アイテムボックスに触れた瞬間、項目の横に数字が浮かんだ。


 【消費:900】


 ……ああ。


 鑑定より少し安い。けれど、両方取れるほど安くはない。


 選ぶんだ、これ。


 スキルから視線を外す。魔法、技能、称号、名声、加護。どれも、それらしい名前が並んでいた。


 火、水、風、土、雷。光と闇。回復、付与、召喚、空間、結界。剣、槍、弓、格闘。盾、鍵開け、罠解除、料理、鍛冶、調合、交渉。


 称号には、剣豪、剣聖、勇者、英雄、賢者、聖者、魔王。名声には、無名、冒険者、貴族、富豪、救世主。加護には、武神の加護、商業の加護、精霊の加護、竜の加護、運命の加護。


 どれも強そうだ。いくつかは、選んだ時点で人生が面倒になりそうでもある。


 だが、強そうなものほど嫌な予感がした。分かりやすい当たり枠ほど、後ろに厄介なものがついてくる気がする。


 試しに「勇者」に触れてみると、必要ポイントが浮かんだ。


 ──1200。


 これ一つで、全部使い切りだ。


 強い。


 たぶん強い。


 でも、これを選んだ瞬間に、知らない王様や神様や世界の危機がまとめて押し寄せてくる未来が見える。


 俺は、勇者から視線を外した。


 欲しいのは、英雄になる力じゃない。知らない世界で、死なずに済むための力だ。


 だから俺は、一番現実的そうな項目に意識を向けた。


 ──スキル。


 堅実に選ぶ。


 そのつもりだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


剣と魔法の世界だと思って選んだものが、どう転がっていくのか。

少しでも「続きが気になる」「この主人公がどう生き残るのか見たい」と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。


かなり励みになります。

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次はどんなスキルを選ぶのかが楽しみです。
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