5.5話 黒ずくめの集団
黒ずくめの集団が、山中で仲間の死体を発見したのはアナスタシアたちがベリーズビルの町に着いた日の夕方近くのことであった。
山の中はだんだんと暗さを増しており、彼らの姿は山中の暗闇にまさに溶け込まんとしていた。
彼らのリーダー、ヴェイルは事態の把握のため現場を視察していた。
「それで…何がどうなってこうなったわけよ?」
ヴェイルは咥えていたパイプを吹かしながら言う。
「わ わからん 女を殺そうとしたら…… 金髪の男が襲いかかってきたんだよ……」
治療を受けて寝かされた男が言う。
カイによって倒されたうちの一人であった。傷は深く、だいぶ出血していることがヴェイルにはわかった。
もう長くはないだろう。
「ふー 何もんだいそいつは」
「た 多分傭兵だ……」
「傭兵か それはちょっと面倒かもしれんな……」
「ヴェイル…… メイナードは……」
「…… 死んじまった お前のせいじゃない 俺の見込みが甘かったのさ 許してくれ」
「そう…… か……」
ヴェイルが話し終えると、男は事切れてしまったようで、まるで糸が切れたようにその体から正気が抜けてしまった。
「埋めるか?」
仲間のうちの一人、クンツがヴェイルに提案した。ヴェイルは目を閉じパイプを吹かしながらクンツへ返答した。
「そうしてやりたいけどな 時間が惜しい」
「まあ そうだよな……」
「お嬢様達はベリーズビルにもう着いた頃だろう 街中には俺らは入れん」
「忌々しい……」
クンツは顔を歪ませ、吐き捨てるように言った。
「仕方あるまい 町に着いたら夜を待って それから動き出そう」
ヴェイルはフーッと空中に煙を吐き出す。煙は円を描いて徐々に薄くなっていった。
「楽な仕事だと思ってたのになあ あいつに合わせる顔がないよ」
「こんなところに傭兵がいるとは思わんでしょう」
仲間の一人マルスが口を開いた。
「戦争もとっくに終わったってのに……」
「嘆くより 体を動かしましょうよ どーせあの女 すぐ見限られますよ」
「そうだなあ なんせ悪役令嬢らしいからな」
黒ずくめの集団はこの場を後にして山の中へ消えていったのであった。




