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#08. Reboot 脱出 [6]
環境が変わる事もなく、時は流れていった。
高校生活は自転車通学。
周囲は、中学の時よりも一層、容姿や私物に気を遣っている。
車やバイクで通学する生徒も普通になり、それを自慢する様子も多々見かけた。
自宅から少々離れた地域の高校へ通学。
彼の合否を決める為の書類審査に、時間はかからない。
常に成績上位を維持し、また、州で名の知れた偉人の息子。
教師はいつも、どこか腫れ物にでも触るような接し方だった。
通う事にした高校に、中学までの顔馴染みは殆どいない。
散々な時間続きだった中学生活とも別れ、高校へは心機一転して通学しており、ヘンリーにとっては良いスタートを切っていた。
タイムテーブルは相変わらず、理数系で埋め尽くされている。
時に外国語があるのは、将来外国人と接点を持つ機会が確実にあるからだ。
読書に浸るばかりの彼だが、人と接点を持てていない事は、どこかで気にしていた。
これまで生きてきて、合間で言われてきた祖父やシャルの言葉を、忘れた事はない。
本を閉じ、外で過ごす生徒達を眺めてみる。
彼等が話している内容や、放課後に向かう場所。
流行が、どうしても分からなかった。
声を掛けられた事がない訳ではない。
手にしていた本に興味を示すクラスメートがおり、内容を喋ったのだが、彼等は引いて去ってしまう。
その理由は、内容自体が高度であり、その分、相手が分かるように説明が加わるからだ。
そうなると話す量が膨大になり、会話になりにくい。
こうならないように努めてみるが、そうすると今度は、相手は平然としていても自分が物足りなくなる。
そんなある日の事。
「はあ?そんなの聞いてない。
先生、ちゃんと説明してくれなきゃね」
前に出て問題を解くよう言われたクラスメート。
その解き方を習っていないと主張する彼女に、教師は溜め息をついて指摘する。
だが言い訳を並べ、我が儘な態度は変わらない。
周囲も便乗するように2人のやり取りを楽しみ、授業の終わりまでその状態を持って行こうとする。
結局彼女は解答できず、空気が切り替わった。
ヘンリーが指され、笑い声は静まる。
指数関数の微分方程式。出題数は4問。
その1問目のみの解答でよかったところ、彼は先程までの空気に呆れており、つい行動に出てしまった。
y=f x ( ) dy―dx = y’―1 = y―1 g’ ( ) x
= x ― 1 …[1]
「そうだな。
確か昨日の午後のコマだったから、昼食の後だったし君は寝ていた」
f 0 ( ) = 1 g 1 ( ) = 0 …[2]
「食後は眠くなるって、よく言ってるしね」
g x ( )= g x ( ) - g 1 ( ) x 1 ∫ t ― dt …[3]
「君が聞いてないのは無理ないな。
でも他は違うな」
g x1x2 ( )=x1x2 1 ∫ t―dt = x1 1 ∫
t―dt + x1x2 x1 ∫ t―dt = g x1 ( )+ x2 1 ∫
「先生は1ページ前の例題を上げながら、君達が聞いてないって言う」
x1 u ― 1 x1du t=x1u =g x1 ( ) + g x2 ( ) …[4]
「解き方と補足を、ノートに書き取るように言い、口頭で説明した」
y1 = f x1 ( ), y2 = f x2 ( ) g y1 ( )
= x1,gy2 ( ) =x2
「時間にして大体5分弱。
それで授業が終わって、翌日」
f x1+x2( ) =g y1 ( ) +g y2 ( ) ( )
=f g y1y2 ( )( ) =f g y1y2( )( ) (∵[4])
「つまり今、ご丁寧にまた同じ事を復習として話してくれている」
1=g’1( )=lim h→0 h―1g1+h( ) - g1( )
=lim h→0 h―1 g 1+h( )
「何故なら、今から発展問題に入るから」
1=lim n→∞ ng 1+n―1 ( ) (∵n→∞・・・n―1→0)
「昨日の補足を聞いてなかったなら、苦労するだろうな」
その場はもはや、凍てついている。
「………は…?」
=lim n→∞ g 1+nー1 ( )n( ) (∵[4])
「まぁ大方、授業が間も無く終わる頃だったから、頭は既に」
=g lim n→∞ 1+nー1( )n( ) (∵g x ( )) f 1 ( )
= lim n →∞ 1+nー1( )n
「教室の外に出ていたんだろう。
補足を聞くもなにも、って所か?」
言い終えると同時に、4問全てを解答した。
教師すら、瞼を失った。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続き、お楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




