[8] 1190.
#07. Cracking 処分 [9]
#08. Reboot 脱出 [6][7]
船着場に着くと、淡々と遺体を担いで敷地を進むヘンリー。
事務所のような建物の横にある柵のゲートを開き、大雨も気にせず颯爽と消えていく。
レイシャはその場所に圧倒されているが、まじまじと見渡す間もなくレアールを負ぶって、なんとか下船した。
もたもたしている内に彼が戻ると、あっさりレアールも担がれていく。
1基は住居で、同じ造りのもう1基は研究所と治験モニター施設。
その2基の半分程の高さをした残りの1基は、海洋バイオテクノロジー研究を主とした施設。
レイシャが周囲を見渡しながら、この施設は何だと呟いた矢先、彼は淡々とだが説明してくれた。
もともと被験者が使用していたスペースに着くと、運ばれた2人はステンレス製の手術台に寝かされる。
途端、レイシャは身震いした。
同室の端に横たわっているのは、金属でできた骨格模型。
分解された状態で佇むその傍には、ラップトップと基盤と思われる物が置かれている。
彼女は、ただただ想像をしていた。
いつか、もっと先の未来で科学者達は、人に対してどんなアクションを起こすのか。
自分もそこに携われるならばと、あらゆる事をただ想像する日々だった。
しかし今、目の前に横たわるそれらは、実際に存在している。
レイシャは背後を大きく振り返る。
全身を黒で占めたヘンリーは、ボートにいる時とは表情を変えている。
シンクに凭れ、シャルが包まれるそれを、瞬きもせず呆然と眺めていた。
レイシャは、ここまで準備されているとは思いもしなかった。
しかし、付き添うと決めた以上、戻るつもりはない。
まだ、何もかもの整理はついていないが、取り敢えず目の前の遺体を防腐処理する。
端に揃う薬品に目を向けてから、彼を再び見た。
白い顔に佇む、生気を失ったような目。
その目がやっと合った時、彼は間を置いてから口を開いた。
「その子から…と…言いたいが………
何分…初段階……全部…そいつで試してからだ……」
包まれた何かにレイシャは近づくと、シーツを半ばまで解く。
職業柄、遺体は見慣れている。
だが、目だけで驚きを見せた。
勝手に父親だと思っていたが、女性が現れたのは意外だった。
一体誰なのか、殺害理由と合わせて聞くも、彼は答えない。
レイシャは上着を脱ぐと、適当に置かれていたガウンを上から被り、慣れた手捌きで処置の準備をする。
その時、更に飛び込んだのは、端に積まれた数冊の本。
自分が実際に持っているものや、見た事あるものだった。
「何で…!?」
「………一度見りゃ…分かるだろ…」
「そんな…」
首を傾け、視線が合わないまま答えたヘンリー。
まるで、説明書を片手に何かを作り出す事と、何も変わらないと言うのか。
本は反復読みはするが、まず1回の読了でほぼ全ての内容が入り、理解できる。
「………当然だろ…」
レイシャはあんぐりと口を開け、しばらく彼を眺めていた。
一体彼は何者なのか。
益々気になるのだが、今は処置に向き合う事にした。
SERIAL KILLER ~Back Of The Final Judgment~
初の完結作品丸ごと公開。引き続きお楽しみ下さい。
2024年 次回連載作発表予定。
活動報告/Instagram(@terra_write) にて発信します。
気が向きましたら、是非。




