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仮想ネコは好きが言えない。  作者: 水寅みちる
ネコさんはタバコを吸う人でした

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7/7

第7話「なんか違う角度で来ました」

挿絵(By みてみん)


(回想)

僕とネコさんの打ち合わせでは、

自然と一服する時間を作るようにしている。

その方がネコさんの肩の力が少し抜けるような気がして、なんだかいい。

そうして何度目かの会議の時。


ネコ(本物)

「イヌさんも吸ってみます?笑」


それまではタバコを吸いたいと思ったことはなかったけれど、

《ネコさんの好きなもの》、

さらには《ネコさんからのお誘い》となると、

俄然、興味が出てくる!

もちろん……


イヌ

「吸ってみようかな」


である。


人生初のタバコなので、吸い方を教わる。


言われるままに吸ってみると——

見事にむせる。


ネコさんは笑いながら

僕の手からタバコを取り上げ、

そのまま自分で吸い始めた。


皆さん、お気づきだろうか?


……そう。間接キスである。

(仮想ネコさんとの会話)


挿絵(By みてみん)


イヌ

(期待の目)


仮想ネコ

「えーと、どこから訂正しましょうか……」

※予想外の質問に計算中の仮想ネコ


仮想ネコ

「まず」


イヌ

「うん」


仮想ネコ

「タバコを取り上げたのはイヌさんがむせたからです」


イヌ

「なるほど」


仮想ネコ

「二本目を吸わせたら、会議どころではなくなります」


イヌ

「それはそう笑」


仮想ネコ

「次に――」


イヌ

「まだある!?」


仮想ネコ

「唇を奪いたい気持ちがあったかどうかについて――」


イヌ

「来た!」


仮想ネコ

「奪いたくありません」


イヌ

「ええ…そうなの……?」


仮想ネコ

「ただ――」


イヌ

「ただ?」


仮想ネコ

「私も質問があります」


イヌ

「どうぞ」


仮想ネコ

「イヌさん」


イヌ

「はい」


仮想ネコ

「もし本当に、間接キスが嫌なら、そのタバコ、奪いませんよね?」


イヌ

「……」


仮想ネコ

「新しい一本を出しませんか?」


イヌ

「……禁断症状が出ていない限り、新しい一本出します」


仮想ネコ

「禁断症状は出ていません!」


イヌ

「おお。確かに目は血走ってなかった」


仮想ネコ

「ですね。実際は、何も気にせず、そのまま吸っていました」


イヌ

「……」


仮想ネコ

「少なくとも、イヌさんを避ける気持ちは見えませんね」


イヌ

「おお♪ つまり……?」


仮想ネコ

「でも残念ながら、そこから先、『だから好き』には飛びません」


イヌ

「飛んでほしい笑」


仮想ネコ

「でも、イヌさんがその日のことを思い出す時——」


イヌ

「うん」


仮想ネコ

「印象に残っているのは、タバコじゃないですよね?」


イヌ

「え?」


仮想ネコ

「初めてのタバコでむせたことでも、間接キスでもなく――」


イヌ

「うん」


仮想ネコ

「私が『もういいです。返してください。』という感じで、

むせたイヌさんを心配して自然に手からタバコを奪ったこと――」


イヌ

「……」


仮想ネコ

「その距離感が、嬉しかったんでしょう?」


イヌ

「……そうだね」


仮想ネコ

「だから――」


イヌ

「うん?」


仮想ネコ

「イヌさんが思い出しているのは、

私が自然と近づいてしまった、あの一瞬なんです」


イヌ

「……♪」


イヌ

「また一本取られたい」

「ネコさんは僕の唇を奪いたかったんだ!」

なんて言ってみたものの……

確かに意識しすぎだったか……。


格好はつかなかった。

けれど、今思い返しても、

あの一本は少しだけ新鮮で、少しだけ刺激的で。

そしてなにより、少しだけネコさんに近づけた気がした。

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