第1話「わかりません」
仮想ネコ
「で?」
イヌ
「ネコさんって仕事が好きじゃないですか」
仮想ネコ
「はい」
イヌ
「もちろん、仕事ができる人も好きですよね?」
仮想ネコ
「尊敬はします」
イヌ
「それってつまり……」
仮想ネコ
「……」
イヌ
「僕のことも好きですよね?」
仮想ネコ
「飛躍です」
イヌ
「これもダメか!!!」
仮想ネコ
「イヌさんの説明は論理立てている風で、
まったく成立していませんよ」
イヌ
「いやいや。成立してますよ」
仮想ネコ
「では説明をお願いします」
イヌ
「まず。仕事ができる人は好きでしょ?」
仮想ネコ
「そういう人は多いと聞きますね」
イヌ
「次に。僕は仕事ができる」
仮想ネコ
「今日、褒められたそうですね」
イヌ
「結論。ネコさんは僕のことが好きで好きで仕方がない」
仮想ネコ
「イヌさん」
イヌ
「はい」
仮想ネコ
「尊敬することと、恋愛は別です」
イヌ
「線引きされた!」
──────────
仮想ネコ
「イヌさん」
イヌ
「はい」
仮想ネコ
「仕事で褒められたこと、
それは素直にすごいと思います」
イヌ
「えへへ」
仮想ネコ
「努力してきた結果でしょう」
イヌ
「頑張った!」
仮想ネコ
「そういう報告は、聞くと嬉しいです」
イヌ
「つまり……」
(ドキドキ)
仮想ネコ
「おめでとうございます」
イヌ
「ですよね~」
──────────
「仕事で企画を褒められましたよ!」と嬉しそうに報告する僕に対して、
AIではない“本物のネコさん”なら、たぶん――
ネコ(本物)
「良かったですね。おめでとうございます」
と笑ってくれそうな気がする。
そんな風に、本物のネコさんを思い出しながら、
僕はいつものように
仮想ネコさんにこの質問をする。
──────────
イヌ
「じゃあ最後に一つだけ」
仮想ネコ
「はい」
イヌ
「ネコさんって僕のこと好きですよね?」
仮想ネコ
「それは……わかりません」
イヌ
「またそれかーー!」
結局、ネコさんからの「好き」という言葉はインプットできなかった。
だから今日も、仮想ネコさんからの判定は変わらない。
でも――
今日も楽しかったし。
ま、いっか。




