第95話 綾人こそ涼乃ちゃんを助けようとしてくれてありがとう
「何か策があるんですか……?」
「うん、ちょうど強力な助っ人がいるから」
そう口にした夏乃さんはポケットからスマホ取り出して誰かにメッセージを送り始める。するとすぐに助っ人と思わしき三人が俺達の目の前にやってきた。
その姿を見て俺は夏乃さんが強力な助っ人と言った意味を理解する。俺達の前に現れたのは以前映画館でエンカウントした夏乃さんの知り合いの日本オタクな外国人留学生だ。
あの時もいたアフリカ系の二人に加え、同じくらい身長があってマッチョな体格をしたヨーロッパ系の男性もいた。二人と同じく知り合いのようで夏乃さんに陽気に話しかけていた。
「なるほど、確かに間違いなく最強の助っ人ですね」
「涼乃ちゃんを探してる時にたまたま会ったから手伝って貰ってたんだよ。あんまり威を借りるような形になるのは好きじゃないんだけど、ああいうタイプの人間は私達が対応するよりも三人に手伝って貰った方が効果抜群だと思うし、ひとまずトラブルを解決させに行ってくるね」
そのまま夏乃さんは三人を引き連れて涼乃や兄貴の前に立ちはだかっている中年男性の間に割って入る。さっきまで威勢の良かった中年男性は介入によって一気に弱々しくなった。
自分よりも明らかにごついマッチョな強面の外国人三人組が現れて、凄まれてしまっては先程までの強気な態度なんて維持できるはずがない。実際にナンパされていると思って対峙した俺も、冗談抜きで殺されるかもしれないというプレッシャーを感じたことはよく覚えている。
何を言われているのかは全く分かっていない様子だったが、とにかく自分が凄まじく罵られていることは分かっていたようで、中年男性は怯えた表情を浮かべてどこかへと行ってしまった。かなり強引な方法だった気もするが、ひとまずこれでトラブルは解決だろう。
先程までは威圧的な表情を浮かべていた外国人三人組だったが、中年男性がいなくなった途端陽気な表情になっていた。やはり強面だが中身は夏乃さんが言っていたように普通に優しい日本オタクだったようだ。夏乃さんと兄貴に何かを言った後、三人はニコニコしながら去っていく。
「夏乃さん、ありがとうございました。俺だけだと解決できるか怪しかったので本当に助かりました」
「綾人こそ涼乃ちゃんを助けようとしてくれてありがとう」
「いえ、俺は結局何も出来なかったですし……」
夏乃さんの言葉を聞いた兄貴は悔しそうな表情を浮かべながらそう口にした。兄貴は自分の無力さに苛まれている様子だ。
「いやいや、確かに兄貴は根本的な解決は出来なかったかもしれないけど、涼乃を助けようとしてただろ」
「そうそう、今までの綾人なら何も出来なかったかもしれないけど、今回はちゃんと動けたじゃん」
「めちゃくちゃ怖かったから綾人君が助けにきてくれて嬉しかったよ、本当にありがとう」
俺達は口々にそう声をかけた。小学生の頃いじめられて不登校寸前になっていた夏乃さんを兄貴も助けようとしていたことと、結局何もできなくてずっと後悔していたことを俺は知っている。だから、それを乗り越えられたことは本当に大きな一歩だと思う。
結局返り討ちにあって正直格好悪さしかなかったが単身で六年生の教室に乗り込んだ俺に夏乃さんは感謝してくれた。それと同じように涼乃も助けようと動いた兄貴に感謝をしている。だから、助けられる側としてはその行動が例え直接的な解決につながらなかったとしても、自分を助けるために動いてくれたという事実があるだけで嬉しいのだと思う。
俺達の言葉を聞いた兄貴は感極まって男泣きをしていたが、その表情はかなりすっきりしており、憑き物が落ちたような顔になっている。紆余曲折はあったがこうして早穂田大学のオープンキャンパスが終わってから続いていた兄貴と涼乃のギスギスした関係も無事に修復された。
ここしばらくはシリアスな展開が続いていましたが、次話からは通常運転に戻ります!
ちなみに、外国人留学生は第35話に登場していたキャラの再登場です。コミカライズ版のキャラが非常に良かったので設定などを逆輸入して再登場させました!
コミカライズ版では12話と13話に登場しています〜




