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2月某日 陰謀の影の夜

今回の話はかなりぶっ飛んでいます。

あまりツッコまないでください。

【ローズマリー営業日誌】


2月某日 執筆者:アリス


「アリスちゃんいらっしゃい。それにリリーちゃんとスイちゃんとエンちゃんだったわね、皆んなも良く来てくれたわね。」

「お久しぶりですお爺様、お祖母様。」

私がお二人に挨拶するとリリーたちもそれに習い一緒に頭をさげる。


フィオレ叔母さまとその息子であるルーカスに会うため、私はお父様の故郷でもあるアンテーゼ領に来ている。

今王都では何かと商会の仕事が立て込んでいるから一泊二日の強行スケジュールではあるが、フィオレ叔母さまはとてもいい人だったし、ルーカスからもあっさり良い返事をもらう事が出来た。

そのため予定よりも早く話しが纏まってしまい、時間が余ったので街を一回りしてから今日の宿泊先である本邸へ向かうと、私の事を待っていてくれたのか、お爺様とお祖母様が玄関で出て暖かく迎えてくれた。


「外は寒かったでしょ。さぁ皆んなも中へ入って、暖かいお茶を用意しているから。」

相変わらず無愛想なお爺様と対象に、お祖母様が私の事を気遣ってくれる。

お爺様の気持ちを知った私には、この無愛想な姿も何だか微笑ましい光景に見え、以前陛下が言った『相変わらず小難しい顔』と言う言葉が頭に浮かび笑いすらこみ上げてきた。


「エリスちゃんも一緒に来れれば良かったんだけどね。」

「すみません、私の予定が今日と明日しか取れなかったもので。」

学生であるエリスはもちろん平日今日は学園に通っている。本当は休みの日に予定が取れれば良かったんだけど、王家のパーティー以来我がローズマリーは大変忙しくなっており、商会の仕事と現場の仕事で私は連日休みが取れない程スケジュールが詰まっている。


「それは仕方がないじゃない。今日はお仕事で来ているんだし、また今度ゆっくり時間が取れるときに一緒にいらっしゃい。」

「ありがとうございます。」

差し出されたお菓子とお茶を飲みながら、リリー達を交えて他愛もない話しをする。



「そうだわ、スイちゃんとエンちゃんに会いたいと言う子がいるのよ。」

「えっ?」

最近王都で流行っている服やお菓子なんかの話しをしていると、突然お祖母様が奇妙な事を言い出した。


「スイとエンにですか?」

「「おれらに?」」

二人を見ると、共に心当たりはないのだろう、お互い首をかしげなら不思議がっている。

そう言えば私と出会う前までは何処で何をしていたのか聞いた事がなかった。初めての出会いはカゴに入られていたから何処かで捕まったのだろうがそれが王都とは限らない。むしろ自然の多い地方の方が精霊との遭遇率はグンと上がる。もしかして二人はこの領地にでもいたんだろうか?


「ちょっと待っててね今呼ぶから。」

そう言ってお祖母様がソファーから立たれた。


「ねぇあなた達、捕まる前はアンテーゼ領にいたの?」

「いや全然ちがう場所だぜ、それに知り合いなんてそう多くないしな」

「ないしな」

お祖母様がその知り合いを呼びに行くとおっしゃったので、この隙に小声で二人に尋ねる。

だけど帰って来た返事は想像と違う回答だった。


「えい。」

「はぁ?」

お祖母様の可愛らしい一声で突然空間が歪み、私たちの目の前に現れたのが一人の女性?

いやいや、ちょっとまって、『今から呼ぶから』とはおっしゃいましたが、私はてっきり何処かの部屋にいる彼女? を呼んでくるんだと思ったんですが、その予想を遥か彼方に置き去りにしてしまった方法で呼び出される

余りの出来事で淑女らしからぬ声が出たのはお爺様も見逃してくれたらしい、むしろ逆に額に手をやりながら何故か困った顔をされている。って事はお爺様もお祖母様の行動にいつも頭を痛められているという事なのだろうか?


「召喚……ですか?」

スイ達に話しかけていたのでハッキリと見ていなかったが、お祖母様がソファーから立たれたあと、何故かその場に留まられたまま掛け声と共に魔法陣が浮かび上がり彼女が現れた。

私もスイ達と契約しているおかげで魔法は使う事ができるが、召喚魔法のような超高度なものは使えないし使えると言われる人すら知らない。

それを結構高齢(年齢は言えませんからね!)のお祖母様がたった一言で成功させた事に驚くのは当然の反応だと思う。一体お祖母様って何者?


「そうよ、でも年をとると体に負担が掛かるわね、若い時はドラゴンぐらいの大きさは簡単に呼び出せたんだけど。」

ブフッ、ドラゴン? ちょっとまってそれ架空の生物ですよね? そんなものお伽話にしか出てきませんよ。

有名な話では何処かの国のお姫様が、攻めてきた他国の軍を退けるために赤いドラゴンを呼び出したと言うのがあるけど、あれはあくまで物語のお話であって現実の話ではない。ないはずなんだけど……


まぁ、取り敢えずお祖母様の事は横に置いておいて、問題は目の前に現れたこの女性。背丈はお祖母様より少し高めでスタイルがいい女性にしか見えない。だけどこの人? は明らかに人間でない事が雰囲気で伝わってきた。

何というか肌の色が極端に白いし、髪の色も人間の持つ感じとはかけ離れている。そして独特なのが彼女が着ている服装、見た目は人間が着る服に見えるのだが、その……つまり……神々しいのだ。


「はぁい、初めまして女神のミラです。みーちゃんって呼んでくれていいわよ。」

ぶはっ!! 今なっつった!? 女神ですと! 有りえない、絶対に有りえない! 豊穣の女神ミラ様の名前しらない者などこの国にはいないだろう、レガリア王国の神にして全ての教会が(たてまつ)っている女神様。

毎年秋に行われる収穫祭は、ミラ様に感謝を捧げるお祝いとして今日(こんにち)まで受け継がれているほど有名なのだ。

そもそも神とは(たてまつる)存在であり実在する人物ではないと誰もが思っているのだ、それが目の前でしかも自分の事をみーちゃんと呼んでって……私の女神様のイメージが音を立てて崩れ去って行く感じがした。



「ほ、本物……ですか?」

「ええもちよん本物よ。スイとエンに聞いてみればいいわ。」

お茶目な喋り方で答えられ、その時ようやくスイとエンの様子に気づいた。

二人はお互い擦り寄りながらガクガクと震え上がっているのがわかる。


「ね、ねぇ。彼女が言っているのは本当なの? って言うか二人とも大丈夫?」

真っ青な顔になり、うっすら涙すら流しながら震える姿は私の声すらも聞こえていないようだった。


「あのーミラ様? 二人ともものすごく震え上がっているんですが何か心当たりがありますか?」

「うふふ、それはね以前二人がイタズラで私が大事にしていた植物盗んじゃったからなのよ。そうよねスイ、エン。」

こ、怖い……顔は笑っているが背後に漂う高貴なオーラの巨大さに身震いすらする。あながち女神と言うのも嘘ではないのかもしれないとすら感じた。


「あ、あのー、二人が何をしたのか大体予想がつくのですが、許してもらう事はできないでしょうか? 私は二人の主人でもありますし、私で出来る事は何でもいたしますので。」

余りにも二人が可哀想になり助け舟を出してあげる。スイとエンは怯えているが私にはそれほど怖いとまでは思わなかった。なんて言うんだろう、例えるなら姉が弟を叱ってあげるような感じがしたのだ。


「あら、二人を庇ってくれるの?」

「はい、これでも二人には助けてもらっていますし、大事な私の家族ですから。」

私が話しかけた事で急激に立ち込めていたオーラが消えていく。


「いいご主人様と出会えたのね。もう仕方がないわね、今回のことはアリスちゃんに免じて許してあげるわよ。」

「ほ、本当でございますか!」

「ますか!」


「今回だけよ、次にやったら……」

「「ひぃ!」」

だから怖いって! とは流石に突っ込みも入れずらいわね。



そのあと何故か一緒のテーブルでお茶をいただき、王都で流行っているお菓子の話で盛り上がった。

そしてそろそろ帰られようとした時、私におかしな事を私に告げられたのだ。

「アリスちゃん、私もアリスちゃんの作ったケーキが食べてみたいわ。」

「はぁ、ケーキですか? 私でよければいつでもお作りしますが、でもどうやってお届けすれば?」

女神様のためならケーキぐらいいくらでもお作りしますけど、当然の事だが神様の住む世界など普通の人間が行けるわけがない。私がどうすればいいのか迷っていると、更におかしな事言い出された。


「それなら大丈夫よ、白銀(シロガネ)に天界までケーキを運ぶように言ってくれれば大丈夫だから。それじゃまたねー」

軽いノリであっさりと帰られる女神様。だけど白銀(シロガネ)って誰だっけ? 何だか聞いた名前のような気がするがどうも思い出せない。

この時の私はすっかりシロの本当の名前とあの夢の事を忘れていたのだった。




「ところでスイ、エン、あなた達一体女神様に何をしたのよ。」

「い、いやーちょっと世界樹の元になる苗木をこっそり盗っただけなんだよ。」

「だけなんだよ。」

ブハッ、世界樹の苗木!?


「あ、あんた達なんて物を盗んでるのよ! 大体そんな物を盗んでどうしたの!?」

「あ、あはははは、今頃どこかの窓辺で光合成でもしてるんじゃないかなぁ?」

「してるんじゃないかなぁ?」

私の頭によぎったイヤーな考え、マ、マンドレイクって苗木に入るのかしら……?


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