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プロローグ「建国伝説」
昔々、北の地に、ひとりのひたむきな若者がいた。
ひどい病が流行って、ふるさとでは人がバタバタ死んでいった。
若者は大きな川をさかのぼって、水が生まれるところ……「女神の庭」に行ってみることにしたの。
歩いて歩いて、やがて若者は緑あふれる森にたどり着いた。女神さまは泣きはらしていたわ。
女神さまは恋人を亡くしたらしい。泣いて泣いて、流した涙が大陸を潤すほどの長いあいだ、泣きじゃくっていたらしい。
人影に気づいた女神さまは、のろりと顎を上げた。
零れる涙はアメジストみたいに輝いて、月光を弾く銀の髪が波打つたびに、森のしじまが震えた。
若者は声も出せずにいるのに、女神さまは優しく笑ったの。
「よいわ。人の身となり、おまえの聖女になってやろう。一番の望みを叶えてやろう。その代わり、おまえが、わたくしの『黒と金』を見つけるのだ」
女神さまはそう言った。それがすべてのはじまりだった。ふるさとは救われ、若者は石の国の初代王になった。
……そうよ、王はいまも「恋人の色」を探している。




