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小次郎転生伝  作者: 杉山薫
第七部 時空
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どのくらいの時が経過したのだろう⋯⋯。


知っている気配がオレの身体に近づいてくる。


「んしょ、んしょ。これメチャ重いんですけど。ムカつく! あれあれぇ、小次郎どうしたの? そんなところで寝転んで泣きべそかいて⋯⋯」


その声の主はオレが黙っていると言葉を続けてきた。


「いつまでふて寝しているつもり。早くゆきなの魂を探しに行かなきゃダメでしょ。小次郎」


コイツ、さよか?

でも、どうやって⋯⋯。


「はいこれ、小次郎のでしょ」


さよの言葉にオレは無意識に頷く。


なんだ、こんな大太刀がオレの太刀?

この身体でこんな大きな得物を振り回すのか⋯⋯。

どのくらい大きいかってオレの身の丈と同じくらい大きな太刀だ!


「じゃ、渡したよ。小次⋯⋯」


そして、さよは光の塵となって炎で燃え盛る本能寺から消えていった。


解放されたということか⋯⋯。


さてと⋯⋯。

追うか!


この大太刀の名は神刀時空という。オレは神刀時空を抜刀し、目の前の空間を撫で切った。大太刀で撫で切った空間には裂け目ができている。


これは⋯⋯。


クソ坊主と会う場所だ!

確か荘介が時の狭間とか言っていた場所⋯⋯。


オレは意を決して時の狭間へと侵入する。


赤鬼(どうしゅう)はずっと先に行っているはず⋯⋯。


「風魔忍術 疾風怒濤!」


オレは赤鬼(どうしゅう)を追って、時の狭間を駆けていく。


いた!

おそらく信長が抵抗しているために歩みが遅いのだろう⋯⋯。


「おい、道舟。まだオレとの決着がついていないのに、こんなところに来るなんて油断しすぎじゃねえのか?」


オレの声に気付き、赤鬼(どうしゅう)はこちらを振り返る。


「お主とは決着がついた⋯⋯。ん? お主、なぜここにおる?」


赤鬼(どうしゅう)はようやく事態を把握して苦笑いをする。


「そんなものを持ち出したところで何も変わらん」


「そうとも限らねえぞ!」


オレは身の丈ほどの大太刀を振り回して赤鬼(どうしゅう)に向ける。


「どうにもならんと言っておろう」


赤鬼(どうしゅう)の言葉にオレは首を横に振る。


「現実世界ならな⋯⋯。ここで神刀時空を相手にできるとは思わないほうがいい。えい!」


オレはそう言って、赤鬼(どうしゅう)に斬り掛かっていく。赤鬼(どうしゅう)は神刀時空の刀身をその左手で受ける。


「その身体では刀に振り回されるのだよ。愚か者!」


赤鬼(どうしゅう)の言葉にオレは不敵に笑って言った。


「ここでなければな⋯⋯。時空牢獄!」


オレがそう言うと赤鬼(どうしゅう)の身体の時が止まる。


「時の道でオレとやり合おうなどと⋯⋯。身の程を知れ! 鬼風情が⋯⋯」


時の道⋯⋯。

オレの潜在意識が微かにだがオレの意識の中に滲み出てきているようだ。


赤鬼(どうしゅう)の拘束から解放された信長はオレの足に絡みつき必死で泣きじゃくる。


「小次郎⋯⋯、もう戻りとうない」


「わかったよ。もう終わりにしよう」


オレはそう言って神刀時空を鞘に収めた。その瞬間、オレの目の前には現実世界が広がっていった。


久しぶりなので、すっかり忘れてた⋯⋯。


神刀時空を鞘に収めると現実世界に戻ってしまうということを⋯⋯。


ここは、どこだろう?


「早手、いるか?」


返事がない。


いつだろう?


自分がいつ何処にいるのかわからない恐怖。荘介の存在のありがたさを痛感した。


 永禄十三年四月、織田・徳川連合軍は三万の大軍を率いて京を出陣する。改元された元亀元年四月、越前の朝倉領に侵攻した織田・徳川連合軍は、天筒山城を皮切りに敦賀郡の朝倉氏側の城に攻撃をかけ、翌日には金ヶ崎城を落城させる。当初は織田方が優勢に合戦を進めていたが、信長の義弟である盟友北近江の浅井長政が裏切ったという情報が入り、撤退を余儀なくされた。織田・徳川軍は越前と北近江からの挟撃を受ける危機にみまわれたからである。


実はこの時オレは金ヶ崎の撤退戦の最中に落ちてきてしまったのである。場所は北近江朽木谷。


なんだろう。

山が燃えているような……。

オレは疲れているんだ。


「小次郎、どうしよう。どうしよう。火が消えないよ!」


そう、オレは疲れているんだ。

こんなデジャヴなことが何度も起きるわけない。

焦げ臭っ!


顔を上げると、ゆきなが必死になってこっちに走ってくる。


「このバカくノ一! 山燃やす……」


オレは大粒の涙を流して、ゆきなを抱きしめていた。


「ただいま。ゆきな好きだよ」


「あたしもだよ。小次郎!」


オレの最後の旅はこうして始まった。

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