6-2 どうしてこうなったのだろう2
あれだけ真剣というか切羽詰まっていたのは、私が他の攻略対象キャラと仲良くするのが面白くないからだろうか。ディートハルト様の思考回路が一般人とは異なるので、自分の常識だけで当てはめるのは危険だし、鵜呑みにするのはもっとよくない。
「(選択肢一つで地雷を踏み抜く感じだもの。甘い顔をするのも、私への執着も蒐集に連なっているものと思っておこう。精神衛生的に……)ディートハルト様と婚約関係になると話をしたところでした」
「うんうん」
「は?」
なぜかここでモルヴァン様がブチ切れた。何故だろう。また話が脱線しそうな予感。
「この場合、エリーの兄である僕──いや私が後ろ盾としてもジュラバル嬢の婚約者になるほうが、筋が通っているだろう」
((確かに))
私とブラットリー殿下はモルヴァン様の話に頷いた。傍で「は?」と怖い声が聞こえてきたけれど、客観的事実だ。後ろ向きたくない。怖い。
「そうすれば公爵家に泊まることも問題ないだろうし、この一年のパーティーや社交界でエスコートするのにも、エリザベスに扮している……いや表舞台に関わらずにいたヘンネフェルト公爵家の嫡男では荷が重いだろう」
「政略結婚、予言に沿った素晴らしい設定じゃないか。でも、僕は、建前とかそんなんじゃなくて、ハニーが好きで、大事で、誰にも渡したくないから婚約を求めたんだ。心臓だって捧げたっていいほどに」
「感情論だけで計画をぶち壊す気か?」
「計画はどっちの公爵家であっても問題ないだろう?」
なぜか私の婚約者枠で揉めている。なんだこれ。
「私としてはどうしてディートハルト様が、エリザベス様役を担うのかが気になるのですが」
「うわぁー、ここでそれが言えてしまう君は大物だね」
「私にとってエリザベス様関係が一番ですから!」
ブラットリー殿下に間髪入れずに答える。そもそも影武者なら別にディートハルト様でなくとも問題ないはずだ。それなのにどうして──?
不思議がっているとブラットリー殿下は「そうだね」と教えてくれた。
「ディーの一族は人魚族の家系だってのは聞いただろう」
「はい」
「人魚族は変化魔法が得意だ。そしてそれは魔力まで完璧に再現する。つまり『この国にエリザベスがいる』と敵陣営にそう思わせることが可能ということだ。そして呪いに関して一番耐性があるからかな」
(呪いの耐性? もしかしてルートによってディートハルト様が闇堕ちするのにも関係あるのかしら?)
ふむふむとブラットリー殿下の話を聞くが、疑問が浮上する。
「ええっと、今ディートハルト様はエリザベス様の姿ではないのですが……」
「ああ、その当たりは心配しなくていい。ディーは魔力をエリザベスと同じ色と形を完全再現している。だから外見が変わっても《13番目の魔女》は気付かない」
「(反則過ぎる。でもだからこそディートハルト様はエリザベス様役に抜擢された)その魔法ってディートハルト様に負担とかないんですか?」
魔法は万能ではない。規格外の超常現象ではあるが、大きすぎる力には代償もあると書かれていた。《13番目の魔女》を欺くほどの魔法なのだ。常時発動で疲弊しないか、心が壊れないか心配どころはいっぱいある。
「はははっ、あのディーを心配か。なるほど、そういうところに惚れたのかな」
「?」
ブラットリー殿下は心底嬉しそうに微笑んだ。それは親しい友人に対して「よかった」と本気で喜んでいるように見えた。攻略対象キャラのブラットリー殿下は絵本の王子様を忠実に再現したような、品行方正でキラキラした博愛主義という印象だったけれど、今私の目の前にいる方は表情豊かで友人思いな人だ。
(元気溌剌って感じで、親しみやすいかも)
そんなことを思っていると、ディートハルト様は私の肩を抱いて密着してきた。
「殿下。僕のハニーにちょっかい出すのはやめてくれない? 殺したくなる」
(発言がヤンデレモード。そしてガチだ)
溢れ出る殺意を隠そうともしない。ブラットリー殿下は「あははは、元気だな」と斜め上の発言。うん。ブラットリー殿下の器がでかすぎる。
「ハニーが僕以外の誰かと見つめ合って談笑しているなんて、相手を殺したくなる。やっちゃってもいいよね?」
「やめて」
「じゃあ、僕のことを不安にさせるような言動を慎んで?」
「むり。地雷がどこに潜んでいるか分からないもの」
「ハニーの意地悪」
「なんと今なら膝枕の場所が空いているけれど、いらない?」
「いる」
さらっとディートハルト様の機嫌を上げることで、全てをうやむやにする。それを見てモルヴァン様とブラットリー殿下は苦笑していた。これが私なりの処世術だ。子アザラシの時に膝枕が大好きだったのはリサーチ済みだったので、試してみたらビンゴだった。
「……話は脱線したが、魔法学院には王都にあるタウンハウスから私たち三人で通うことになる。予言の娘である転生者も入学してくるが、そのあたりはブラットリー殿下に任せますよ」
「ああ。それは任せてくれ」
「予言には、その転生者が称号持ちの誰かを選ぶまで決まっているのですか?」
「ああ、王太子である私だ」
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