第40話「美咲の秘密」
皆さん、こんにちは!
第40話「美咲の秘密」です。
今回は、ついに美咲が口を開きます。
いやぁ、秘密というものは、抱えている本人が一番しんどいものですね。
しかも今回は親戚関係まで出てきました。
人間関係、どんどん複雑になってきましたね(笑)。
それでは、第40話をお楽しみください!
翌日。
美咲が、話し始めた。
よろずやの、閉店後。五人で、テーブルに、座っていた。
「昨日、ごめん」
「大丈夫やで。話せる?」
「……話す。ちゃんと、話す」
「うん」
美咲が、少し、息を、吸った。
「あの写真の人。知ってる」
「やっぱり」
「……遠い親戚」
部屋が、静かになった。
「親戚?」
「うん。あんまり、会ったことないけど。遠い、親戚の、おじさんって感じの人。名前は、浜田、って言う」
「浜田さん」
「うん。浜田、健二。うちの、母親の、遠い、親戚のお兄さん、みたいな人」
「……そっか」
「それで、昨日、あの写真を見た時、ひっくり返りそうになった」
「そうやったんや」
「うちが、最初から、あんまり、積極的に、調査に、賛成しなかった理由が、それ」
「え」
「……うちは、なんとなく、知ってた。あの辺で、何かがあった、ということを。ぼんやりと。子供の頃、なんか、あの辺の山の話を、家でしてはいけない、みたいな雰囲気が、あったから」
「雰囲気が、あった?」
「うん。親が、あの山の話を、するのを、嫌がってた。なぜか、わからなかったけど。だから、調査が始まって、あの山に近づいていくのが、なんか、怖かった」
「……そっか」
「でも、証拠は、なかった。ただの、気のせいかもしれなかった。だから、言えなかった」
「美咲」
「ごめん、玲奈。もっと、早く、言うべきやったかもしれん」
「謝らんでええ」
「でも」
「謝らんでええって。美咲が、隠してたのは、わかってた。でも、言える時に、言ってくれれば、それでええから」
「……ありがとう」
「うん。で、浜田さんという人は、どんな人なの?」
「……地元では、まあ、評判の、お好み焼き屋の、おっちゃん。うちは、子供の頃、何回か、会ったくらいで、ほとんど、知らん。でも、名前と顔は、知ってた」
「そっか」
「……この人が、玲奈を、山に、連れていったのかもしれない」
「かもしれない。でも、まだ、わからん」
「わかってる。でも、可能性は、高い」
「うん」
健太が、言った。
「美咲さん、この人に、会えますか」
「……会えるかもしれない。でも、正直に、言ったら、逃げる可能性がある」
「そっか。直接は、難しいですね」
「うちが、親戚として、なんか、口実をつけて、会うことは、できると思う。でも、そこから先は、どうするか」
「美咲、無理しなくていいよ」
玲奈が、言った。
「無理じゃない」
「でも、親戚やろ。難しいよ、それは」
「うちが、やる。うちにしか、できないことやから」
「美咲」
「玲奈が、知りたいなら、うちは、やる。それだけ」
「……ありがとな」
「お礼は——」
「全部終わってから、やろ。わかってる」
「……そう」
レオスが、言った。
「美咲」
「ん?」
「一つ、確認していいか」
「何」
「君は、昨日から、怖がってた。今も、怖いか」
「……怖い」
「何が怖い?」
「……うちの、親戚が、関わってたかもしれない、ということが。もし、そうやったら、うちの家族は、知ってたのかも、とか。知ってて、黙ってたのかも、とか」
「……そっか」
「でも、知らなければ、ならない。玲奈のために」
「玲奈のため、だけじゃないと思うよ」
「どういう意味?」
「美咲自身のため、でもあると思う。知らないままは、ずっと、怖いから」
美咲が、少し、黙った。
「……そうかもしれない」
「知ったら、怖くなくなるわけじゃない。でも、知らないより、きっと、ましだ」
「……うん。そう思ってる。だから、やる」
「……ありがとう、美咲」
「レオスに、言われると、変な感じがする」
「なんで」
「なんか、あんたが、感謝を、言うと、びっくりするから」
「……言えるように、なってきたから」
「成長したな」
「……した」
「かも、がない」
「……した」
「ええやん、それ」
玲奈が、美咲の横に、座った。
「美咲、ほんまに、ありがとな」
「玲奈、お礼はまだ——」
「全部終わってからは、わかってる。でも、これは、別の、ありがとうやから」
「別の、ありがとう?」
「うん。一緒にいてくれてることへの、ありがとう。それは、今、言わせて」
美咲が、少し、黙った。
「……うん」
「ええ返事やな」
「……うん、しか、言えへん」
「十分やで」
よろずやの、夜。
店長が、静かに、コーヒーを、持ってきた。
「まあ、飲んで」
「ありがとうございます」
「大変やな、みんな」
「大変です」
「でも、みんなで、大変やから、ええな」
「そうですね」
「一人で、大変やったら、しんどいけど。みんなで、大変やったら、なんとか、なるもんやから」
玲奈が、コーヒーを、飲んだ。
苦かった。
でも、温かかった。
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(第41話へ続く)
翌日の朝。
「なあ、美咲」
「ん?」
「昨日、言えてよかったな」
「……そう?」
「そうやで。ずっと、抱えてたやろ。それが、言えたから」
「……そうやな。言えて、よかったと思う」
「ええやん、それ」
「玲奈」
「ん?」
「うち、これで、もし、親戚が関わってたとしたら。うちの家族が、知ってたとしたら。どうなるんやろ、って、怖くて」
「怖いよな」
「怖い。でも」
「でも?」
「真実の方が、大事やと思ってる。玲奈が、知るべきことを、知るための方が、大事やと思ってる」
「美咲、ありがとな」
「お礼は——」
「全部終わってから、やろ。わかってる。でも、これは、それとは別や」
「……別、なの?」
「うん。友達として、ありがとって、言いたいから」
「……友達」
「うん。あたし、美咲のこと、友達やと思ってるから」
「……うちも、思ってる」
「言えた」
「……うん、言えた」
「ええやん」
「……うん」
健太が、コーヒーを、持ってきた。
「はい、美咲さん」
「ありがとう」
「昨日、大変やったから」
「……大変やったけど、言えて、よかったと思う」
「よかったです。美咲さんが、言ってくれたから、前に、進める気がするから」
「……そっか」
「うん。美咲さんが、いてくれて、よかったです、ほんまに」
「……健太、たまに、ちゃんとしたこと、言うな」
「たまに、って、つけますよね、みんな」
「たまにやから、たまに、って言う」
「……まあ、いいです」
「あははは。ありがとな、健太」
「いえ。じゃあ、次の作戦、考えましょう」
「うん」
前に、進んでいた。
少しずつ、でも、確かに。
その夜、レオスが、静かに、考えていた。
玲奈は、眠っていた。
調査が、進んでいる。
玲奈の記憶が、戻ってきている。
もうすぐ、自分が、知っていることを、言わなければならない日が、来るかもしれない。
それが、怖かった。
でも、玲奈が、「知りたい」と言っている。
みんなが、動いている。
自分だけが、知っていることを、隠したまま、でいることが、だんだん、難しくなってきていた。
玲奈の、眠った顔を、見た。
穏やかだった。
この顔が、傷ついたら、どうしよう、と思った。
でも、知らないままでいることも、玲奈を、傷つけているかもしれない、と思った。
どちらが、正しいか、まだ、わからなかった。
でも、時間が、なくなってきている、気がした。
翌朝、また、よろずやへの道を、歩いた。
「なあ、レオス」
「ん?」
「今日も、よろずや、行くな」
「行くね」
「なんか、それだけで、ええな」
「それだけで?」
「うん。難しいことが、あっても、よろずや行って、おでん食べて、みんなと話して。それで、ええ。それが、日常やから」
「……そっか」
「あんたも、日常を、続けよな」
「……続ける」
「約束やで」
「……約束」
よろずやの、灯りが、見えてきた。
温かかった。
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今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
美咲にも、ずっと抱えていた事情がありました。
真実を知ることは怖い。
でも、知らないままでいることも怖い。
なかなか難しいものです。
それにしても、よろずやの店長。
こういう時にコーヒーを出してくれるのは、ありがたいですね。
人生、温かいコーヒーくらい必要です(笑)。
引き続き、よろしくお願いいたします!




