*
なんかわけ分かんないけど、私ってもっと頭良くなる見込みがあっるってことじゃん? この話に乗れば、塾でダントツ1位の花園君が受験する中学を狙えるとこまで賢くなれるってこと。だったらGOでしょ。
受験校はその時に考えればいい。
「じゃ、これ」
正面から差し出されたのは、いかにもチョコレートの箱。頼み事するから義理チョコ?
「ありがとうございます」
「本当は仁科に渡したかった子が、僕にくれたから」
「え?」
差出人は書かれていない。手紙の類もなさそう。
「ま、来年はこの時期受験だから、今年渡そうと思ったんだろうね。で、勇気がなかったと」
それって、それって、ド本命チョコってこと!? いたー! ちゃんと私のことを見てくれてた男子。めちゃくちゃ嬉しい。踊りたいくらい。
「先生、誰だか知ってるんですか?」
「知ってるよ。渡す勇気がなかったら貰ってあげるよって励ましたから」
「誰ですか?」
「さあね。話は終了。頼んだよ。Stand up.」
なぜか立てと言われて、私は反射的にしゃきっと立ち上がった。
神センがパチンと指を鳴らす。突然ソファはなくなり、見慣れた景色になった。自習室の机とイスが現れ、床も壁も天井も蛍光灯も自習室のそれになった。
「うわっ」
私の驚きの声にニヤリとしながら、神センは言った。
「さっきの異空間での時間経過はゼロだから」
「ゼロ。はい」
ドアを開けて廊下へ出ると、少し離れたところにみんながいた。自習室に入る前と同じ位置。
「ニカ、どーしたの? それ」
キッズモデルの三上さんが私の手にあるラッピングされた箱を見る。
「なんか、私にだって。神センが頼まれたって」
「すげっ、ニカ。いつの間に」
「ま、実力?」
私の言葉に橘君は冷たい視線と言葉を投げかけた。
「バッカじゃねーの」
鼻で笑う橘君の顔を、花園君はじーっと見ていた。
休み時間が終わり、国語の授業。
本当に自習室でのことは夢?
ちらっと机の横を見れば、リュックの隙間からはみ出ているチョコのラッピングのリボン。現実じゃん。
帰り際、受付を通るとき、私達はびっくり。
神センの机の上には赤やピンクの色とりどりの包装の箱や紙袋。チョコレートの山。それはなんとか机に乗っかっているけれど、今にも雪崩を起しそう。
「ニカ、あーゆーのを実力ってゆーんじゃね?」
そう言って橘君は花園君と笑い合っていた。
この2人こそ、山のようにチョコをもらってもおかしくないはずなのに。
私は自分に課せられた使命を心に、花園君をちら見。すっごいイケメン。こんなに綺麗で天才とかずるい。天は二物を与えるんだねー。天と言えば「天バーガー」ってなんだろ。蕪とかも言ってたから蕪入りのバーガーかな。




