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「えーっと先生、花園君はすっごく頭いいから、ほっといてもどこでも受かるんじゃないですか?」
「甘い! 天才を舐めるな」
「いえ。舐めてませんが」
神センは自分の額に指を添える。眉間にシワが寄っちゃってる。
「彼が何回、解答用紙に名前を書かなかったか知っているか?
塾の授業やテストにどれだけ遅刻したか知っているか?
テスト範囲なんて気にもしない。
筆記用具を平気で忘れてくる。忘れていく。
受験に興味すらない。
事務的なことは全て苦手。
提出物を期限内に出したことは皆無。
塾内のことはある程度ホローできた。問題はそれ以外だ。
気が向いたことしかやらない。学校の授業中は寝ているか、他のことを考えてぼーっとしいるらしい。学校の教師からは頭の弱い子だと思われている。
学校の机にカマキリの卵をコレクションして大量に孵化させた。ロッカーの中では牛乳をヨーグルトにした。リコーダーをなくしてホースでリコーダーを作ってしのいでいた。こんなのは氷山の一角だ。
だから、学校の成績は酷い。
それでも、ペーパーテストがいいから入試はなんとかクリアできるだろう。
会場まで辿り着けば」
神センは喋っているうちにどんどん早口になって、言い終わると興奮で息が上がっていた。どうどうと背中をさすってやりたいくらい。
「そんな風に見えませんが」
フォローしてみた。だって花園君はカッコいいんだもん。イケメン限定のフォロー。
「天才特有の社会性の欠如ってやつだよ。
興味のあることしかやらない。テストの問題を解くことに興味があっても、いい点数をとることには興味がないから名前を書き忘れる。
たまたま塾の前に本屋に寄って面白いと、時間を忘れて本に没頭する。
学校の宿題は興味がないものはやらないから、成績が悪い。だいたい学校の授業は花園にとってつまらないんだろう。
それでも普通の人間はこなす。それが教師への礼儀だ。いい成績も取りたい」
そこで疑問。
「あのー、私ぃ、頼まれても何もできない気がするんですけど」
そこまで酷かったらお手上げじゃん。
「頼む、仁科。力を貸してくれ。中学受験まででいい。なんとか勉学に好奇心を持たせ続けてやってくれ。それには、僕が楽しい理科の授業を提供するだけじゃ限界があるんだ」
頼む相手を間違えてる。一番そばにいる男友達、橘君が適任だと思う。
「なんで私なんですか? 橘君とか」
聞いてみた。
「橘はミニバスと勉強の両立で忙しいんだよ。時間的にも精神的にも余裕がない」
いつもの7人グループの面々を思い出す。
そして、次期生徒会長の綿貫君を推薦してみた。
「じゃ、綿貫君とか」
「説得するのがメンドクサそう。綿貫は賢いからね」
ちょっと。それ、私がアホだってことだよね。
「私じゃなくても、九条さんとか三上さんとか」
今度は女子メンバーを推し。
九条さんはバイオリンを習ってるクオーターの美少女。
三上さんはキッズモデルをしてるきゃぴきゃぴタイプの美少女。




