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田部ちゃんはテニス強豪校の私立に決まった。
森ちゃんは中学では陸上をするらしい。当然。あれだけ足が速かったのに、田部ちゃんや私と「一緒がいい」ってだけの理由で、なんとなくテニスやってたんだよね。勿体なかった。
合格の祝賀会と称してカラオケ大会。
母達も仲がいいから、大人と子供で部屋を分けてのカラオケ。
だよねー。親が一緒って、ちょっと窮屈。だいたい、歌う曲違うもん。私達、平成の歌、知らないから。
メンバーは、花園君、橘君、生徒会長、バイオリン姫、キッズモデル、私。6人。
歌の好みって、すっごく興味ある。
私はね、ノリのいい曲。そんなにうまくないから。ごまかせて盛り上がれそうな曲。
モデルはちょとハスキーボイスで、めっちゃ上手い。
意外なのはバイオリン姫。
下手だって分かる程度にヘタクソ。そこがまた可愛い。バイオリンだったら音程はばっちりなんだって。なのに、自分で声を出すときは「変」って言ってた。不思議。
男の子はね、花園君が激しめのJ-POP。橘君は爽やか系のJ-POP。生徒会長はアニソン&アイドルソング。
橘君は声変わりの最中で、声が出なくて笑っちゃった。
終盤、モデルの三上さんは勝負に出たの。
得意のバラードのイントロに載せて告った。
「花園君、好き。つき合ってください。この歌を捧げます」
ありなの? こんなん。スペック高すぎ。こんな技使ってくるなんて。すっごいフェイント。しかもバラード。沁みるじゃん。
私はバイオリン姫の方をちらちら見た。心の中で「行け!」と叫びながら。
何を思ったのか、花園君はにこにこと笑いながらもう1本のマイクを持ってモデルとハモリ始めた。へー、上手いじゃん。ってそうじゃない。
こんなに1曲を長く感じるなんて、私史上初。
歌が終わったとき、マイクに向かって花園君は言った。
「いーよ」
バカ。バイオリン姫の前で返事するんじゃないっ。
バイオリン姫はすっとトイレに席を立った。いたたまれない。どうしよう。追いかけるべき? ああ、でも私が歌う番が来ちゃう。
「花園君、決め手は?」
マイクが回ってきたから、素朴な疑問をぶつけてみた。「流れ?」とか言ったら怒るからね。
「もう中学別々になるからさー、あんま、会わねーじゃん。メンドクサくなさそ」
バカ。モデルの前で本音を漏らすんじゃないっ。
橘君が花園君の頭の上に手刀を振り下ろしてた。




