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2月2日、第2志望不合格。
落ちた。気分もどーんと落ちた。泣いた。
夕食のハンバーグが嗚咽で食べられなかった。家族が心配してくれて、困らせちゃダメって分かってるのに。涙は止まらなかった。
1月に受験した第3志望は合格している。
心の中で「やっぱり無理だったんだ」「いいじゃん。第3志望だった学校だって、去年だったらとても受からないようないいとこなんだから」って気持ちと、「明日がある」って気持ちがぐるぐるぐるぐる頭の中を駆け巡った。
それでも、1分1秒だって無駄にしたくなくて、心を落ち着けるためにも、これまでのテキストやノートをぺらぺらとめくった。
2月3日。
第1志望受験。
解答用紙が集められて終了したとき、テニスの試合後のようにぐったりと疲れていた。
超難。
国語なんて、貧困による紛争についての説明文。エネルギー革命についてのエッセイ。熟語だらけ。中身が頭に入ってこなくって参った。物語文の方も。泣きそうだったよ。
もう知らない。終わった。
1次の筆記試験の合否は翌日発表。さらに次の2月5日、2次試験の面接がある。
合格発表は2月6日。
ヤバっ。お腹減った。足が震えるくらい。
筆記試験の最終日だったから、子どもだけで帰るよう、母達が気を利かせてくれた。
生徒会長は第1志望に合格して離脱。
いるのは5名。
駅近くのコンビニ前で、花園君、橘君と一緒にカップ麺をすすった。受験生が通り過ぎるのに、さすがにそれはできないとモデルとバイオリン姫は肉まんを食べてた。変わんないじゃん。
メンバー内では成績も合否もオープン。
バイオリン姫、花園君、橘君は全勝。モデルが、第3志望を不合格。でも第2志望合格。私が、第3志望合格、第2志望不合格。
そしてめでたく、5人で第1志望1次試験通過。
2月5日、受験最終日は面接。
ぶぶぶーぶぶぶーぶぶぶー
朝8時10分前、そろそろ家を出ようとしていたとき、スマホが震えた。
「はい、仁科です」
『神村です。花園から何か連絡あった?』
花園君から連絡?
「いえ。グループのLINEにも何もきてません」
『いなくなった』
「はあああ?!」
『ついさっき、ご両親が、息子がいないことに気づいた。面接用の服は部屋にあるそうだ』
「ええええ?」
『今、仁科はどこ?』
「家です」
『分かった』
「きゃーっ」
スマホの通話を終了させると、私の部屋がいきなり神センの部屋に変わった。神センは白い革製のソファの横に仁王立ちして腕組みをしている。
「おはよう」
神センは不機嫌な野太い声で挨拶した。
「おはようございます。さすがに今日はやめてください。急いでるんです」
「大丈夫だ。仁科の時代では1秒も進んでいない」
「気分的にちょっと。非常識です」
抗議した。
花園君を合格させることが目的かもしんなくても、自分が最優先に決まってっじゃん。神センだってベストを尽くせって言ったじゃん。
「母親と一緒に受験会場に行くことになっていたらしい。朝食はちゃんとした。なかなか息子がリビングに現れないことを不思議に思って部屋に行くと、もぬけの殻だったと。つまり誘拐のたぐいじゃない。自分で消えたんだ」
「他のところも合格してるからいいじゃないですか。本人は、特別に志望校ってないみたいだし」
それよりも早く解放してほしいんだけど。
「甘い! 第2志望の学校は電車の乗り換えが2回もあるんだ。オマケに途中、遊ぶ場所がたくさんある。通学時間もかかる。中学時代に通学がメンドクサくて学校に通わなくなる危険性がある。それ以外にだって奇想天外なことをしでかすかもしない。
こんな大事な日に消えるなんて、まさに奇想天外!
心当たりはないか」
神センは相当なダメージを受けてるみたい。
「ありません。それより私、面接に行きたいです」
こんな日じゃなかったら、どうどうと宥めてあげてたと思う。でもね、今日は大事な日なの。




