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「え、オレですか? 学校帰りに友達とカラオケしたり、インスタ映えする店ぇ行ったり、海やスノボに行ったりしたいです。もちろんカノジョとかいろいろ」
ああ、神センのがっかりしてる気持ちが手に取るように分かる。私ですらがっかり。
「うんうん。ますますあの学校はだめだね」
遊びオンリーになりそうだもんね。
「どうしてですか?」
無邪気に聞く花園君。
「男子校だろ? 合コンくらいしか出会いがない。学校での人間関係に関わらない男の子は、きゃぴきゃぴした女豹の餌食になるよ。女子中学生なんて自分勝手なもんだよ。気まぐれに弄んで、君の心なんて牙と爪でズタズタにするだろうね」
神センはもっともらしく告げた。来年女子中学生になる私がここにいるってのに。
「そうですか? 仁科達がそんな風になるなんて、想像できません」
「そうですよ。女の子は誠意を持ってます」
両手で握りこぶしを作る私を、神センは一瞥。
「仁科も九条さんも三上さんもダサい進学校へ行くからね」
どーゆー言い方するわけ。口を慎んでよ、神セン。
「ダサい進学校にはダサい女の子しかいねーし」
花園君まで。悪かったね。ダサい進学校志望ですよ。私に少しは気を遣ってよ。
「花園、確かに進学校はダサい。進学校を目指しているヤツらも一般的にはダサい。綿貫君然り。仁科も大したことはない。が、仁科は、中学生や高校生になったら少しはマシになるだろう。橘は、いい線行ってると思わないか? 三上さんはどうだ? あれがダサかったら、今の日本のティーンエイジャーの、誰がイケてることになる? 九条さんは? ハリウッドレベルの女の子だっている。
つまり、僕が言いたいことは、外見なんて様々だということ。かわいい子が多いと評判の学校でも、冷静に土台を見れば、容姿のバラツキは進学校と変わらない。勉学に割く時間をファッションやモテ方法サイトに割くという方向の自分磨きをしているだけなんだ。
僕は、勉学に励み、内面を磨いている人間を評価したいね」
生徒会長、私と一緒にディスられてるよ。
「花園君、ホントに行きたいとこってどこ?」
私はクッキーを次々に頬張る花園君を見た。名前を書くようになった花園君だったら、きっと無敵。どこでも合格できる。
「中学は正直どこでもいい。ただ、今、塾のメンバーが楽しくてさ。だから、どこでもいいから中学行っても毎日会えたらって思う」
「いいやつじゃん。花園君!」
ぱしっ
思わず隣の花園君の肩を叩く。男同士だったら、肩組んでるよ。
パチンと神センが指を鳴らした。
「よっし、決まった。志望校は仁科と一緒にしろ。仁科はほぼみんなと一緒だ。綿貫君はT大合格者数トップの男子校以外は仁科と同じ。九条さんは仁科の受験校プラス日にちがズレている音楽系が1校。三上さんと橘は仁科と一緒だ」
「九条さんって、音楽の学校も受けるんですか?」
びっくり。初耳。どうしてまた。
「交通事故などのもしものときのために書類出願だけでもって。たぶん、受験日までに他のところが合格するよ」
「あんなことがあったばっかりですもんね」
「えー。申し訳ないなぁ」
反省の顔をする花園君。反省してよね。歩きスマホ禁止。
「で、花園、どうだ?」
「じゃ、オレ、みんなと一緒のとこにします」
花園君、私の今までの努力とカレシのいる明るい中学校生活のためにもそうして。
「それがいい」
神センはにっこり。晴れ晴れとした笑顔。
そして花園君は言った。
「で、それってどこですか?」
あらら。




