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駅前の商店街はクリスマスの装いになった。それと共に、いよいよ受験が本格的に形を表す。
私はなんとか努力して、志望校を受験しても不思議がられない程度の成績にこぎつけていた。
塾の受付には、高さ30センチくらいのクリスマスツリーが飾られた。それを近くで見たとき、私の瞳孔が大きく開いた。ツリーを飾っているリボンに見覚えがある。赤く透けるような素材で水玉模様。そのリボンが金色や赤のオーナメントに混じって、いくつも結び付けられていた。
忘れもしない。2月のバレンタインの本命チョコのラッピングに使われていたリボン。
「すみません、このクリスマスツリーのリボン、誰がつけたんですか?」
事務員に聞いてみた。
「ああ、それ、橘君達が飾ってくれたの。オーナメントが少なくて寂しいって言ったらリボンまで持ってきてくれて」
「そうなんですか」
なになになに? 橘君達? ってことは、私に本命チョコをくれたのは、橘君か花園君のどっちかってことなの?
どっち。
考えて。
神センはなぜ私を選んだ? 色々適任だって理由は聞いた。
でもひょっとすると、神センが使いたかったハニートラップだったんじゃない?
私を好きな花園君は、私と一緒の中学に通いたい一心で勉強……違うか、名前を書く。問題を解くことにしか興味のなかった人間に「合格したい」と思わせるために私を選んだのかもしれない。
あれ? だったらなぜ、今、バイオリン姫といい感じなわけ?
それは、トラックに轢かれそうになった時に助けてくれたから。あんなことされたら、好きになっちゃうよね。しかも内外共にハイスペックなバイオリン姫。
結論、中学受験が終わっても、私にはカレシはできない。
ちょっと待って。それ以前に、花園君にに「好き」って言われても、私の心はまったく動かない。理屈じゃない。イケメンであっても、天才という別の生き物にしか見えない。
じゃ、いーじゃん。カレシができないのは残念だけど。花園君はムリなんだから。
ここでまさかの橘君だったら?!
確か、神センは言った。イケメンで性格は保証付きだと。橘君はきりっとしてカッコいい。性格は男が惚れるような男。え、橘君?
いやいやいや。
ラッピングってのは百円均一なんかでセットになってっじゃん。偶然でしょ。だってさ、橘君が好きになるほどの女の子じゃないし、私。
橘君はミニバスでキャプテンだったんでしょ? しかもすっごくがんばってチームをまとめてたって。私、小学校生活最後のシングルスの試合を記念参加にしちゃったようなヘタレじゃん。
神センにはっぱかけられなかったら、こんなに勉強がんばらなかっただろうし。
橘君は高嶺の花。それくらい分かる。
外見の女の子ウケだったら花園君が1番人気かもしれない。
橘君は女の子から騒がれるタイプじゃない。
女の子って男を見る目あるんだよ。自分を分かってるし。
橘君にノリで「いい」とか言っちゃいけないんだよ。
ふー。偶然ってことで。
とりあえず、今は受験。それが終わったら、いずれ分かることだから。




