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未来人が天才を迎えに来たけど自分じゃなかった  作者: summer_afternoon


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46/64


次の日、元気な姿で現れたバイオリン姫と花園君に、みんなはほっと胸をなでおろした。


その日の花園君のお弁当は焼肉だった。


「よかったね、焼肉食べられて」


私の言葉に、花園君は天井に目を向けた。


「なんかさ、オレ、神センに男としてバカにされたような気がするんだよな」


まさか。それって。


『こんな貧弱なガキンチョの体見たって、幻滅するだけだ』


あの言葉聞こえてたの? まさかね。意識なかったはず。


「央治、まだ言ってんの?」


橘君があきれてる。既に聞かされていたらしい。


「なーニカ、昨日オレ、最初すっげー痛かったんだよ。でさ、痛くなくなる前、神センとニカの声が遠くに聞こえてたような。なんか変だったんだよな」


ぎくっ


「そーなの? 私も神センもみんなと一緒にいたもんね」


自分でも言い訳が今一つって分かってる。

こんなときは、トイレにそそくさと逃亡。天才、恐るべし。



治療のかいあって、バイオリン姫は無事コンクールの予選を通過した。

自己ベストか。カッコ良過ぎ。


事故の後、バイオリン姫と花園君のツーショットをよく見かけるようになった。モデルがやきもきしている。


「もう、つき合ってんのかな」


モデルは眉をハの字にして心配してる。そんな顔まで可愛い。


「まさか。だったらきっと、教えてくれるよー」


私、こんなこと言ってるけど、本当はバイオリン姫は話さないって思ってる。だって、モデルも花園君を好きって分かってるから。


ちょうど渦中の2人がいなかったから、橘君と生徒会長に面白半分に聞いてみた。


「ねえねえ、三上さんと九条さんだったら、花園君はどっちを選ぶと思う?」


もう2人が花園君を好きってことは、このメンバーにはばればれ。


「えー。難しいな。ってかさ、2人しか選択肢がないってどーなの?」


生徒会長が気の毒そうにモデルを見る。


「あー、央治って、たぶんそーゆーの、全く興味ねーし。あいつ、女の子より、時事放談のジジイが好きだし。女の子より、牛肉だし。パソコンだし」

「そこまで選択肢の幅広げなくちゃいけないんだー。花園君らしいねー」


妙に納得してしまう。


「ちょっと、ニカ、面白がってるでしょ。そんな風だったら、ニカが誰かを好きになったって、協力しないからね!」


モデルが下唇を突き出して私に抗議する。変顔までかわいいってずるい。


私が男だったらどっちだろ。

スーパー可愛くて、気配りできて友達が多くて、一緒にいて楽しい女の子。超女子力高いモデル。

スーパー美しくて、上品で努力家で献身的な女の子。物静かなタイプのバイオリン姫。

激しくどーでもいい。



バイオリン姫から「本選では賞に選ばれなかった」と報告を受けたとき、季節は冬に移っていた。塾前のイチョウ並木は木の葉を落とし、ついでに銀杏も落としてくれた。臭い。


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