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カルビを焼きながら、神センが話す。
「今は分かんないと思うけど、自分を助けてくれるのは、過去の自分だけだよ。過去が現在を形作る。現在が未来に繋がる。
ぼーっとしてるけど、待っているのは激動の時代だよ。知識、経験、人との信頼関係。そういったものを身につけて社会で戦う。政治や制度が揺れようが、国民総貧困時代が来ようが、豊かな精神で生き抜くんだよ」
なに気に怖い内容。
「なんか、先が真っ暗みたいな言い方ですね」
「脅したつもりはないし、気にしなければ笑っていられる。でもさ、ベストの人生を送りたいなら、ベストを尽くせってこと。……悪かった。食事は楽しく食べないとね」
ちょっと気まずくなっちゃったじゃん。話題話題。
「あれ、テレビにゲーム接続してありますよね?」
「国語の先生の家に遊びに行って、モンハンをやったんだよ。おもしろくてはまっちゃってさ。次の日にモニターとゲームを買ったんだよ。こっちにはないからね」
相当モンハンが気に入ってるみたい。神センの顔が活き活きしてきた。
「国語の先生と仲いいんですか?」
「僕の部屋にも泊りに来たことあるよ」
「え? ここに?」
「まさか。仁科の時代に部屋を1つ借りてある。毎日、そこからわざわざ通勤してる。この部屋からならすぐに塾に行けるのに」
窓の外は抜けるような青い空と海が広がっている。日差しが眩しい。大海原を飛ぶカモメに目をやっていると、神センは嬉しそうに窓の横をタップした。
突然、外は猛吹雪になった。
え?! びっくり仰天。
神センが再度タップすると、野鳥が飛び交う森林の風景。
「ど?」
「本当の景色を見せてください」
すると、青空を背景ににょきにょきとした背の高い建物がある景色になった。
「ごく普通のマンションだよ」
「ここはどこなんですか? いつもこっちで英語話してますよね」
「東アフリカ」
「アフリカ?! アメリカじゃないんですか?」
「いろいろあったんだよ。いろいろ。仁科は気にしなくても大丈夫。ずーっと先のことだから」
なるほど、激動の時代か。
食事の後、手術から5時間後に、バイオリン姫と花園君の怪我の様子を診た。信じられないことに、治っていた。
そして、ベッドから降ろして、この部屋に来る前と同じ姿勢を取らせた。
困難。
しっかり支えていないとバイオリン姫はバタンと倒れてしまう。なんとか頑張って、6時間と5分後、塾前の横断歩道に戻った。バイオリン姫を歩道の縁石に座らせて、花園君はうずくまった状態に。
「危ないっ」
キッズモデルがふらっと倒れそうになるバイオリン姫を支える。
国民総貧困時代が本当に来てしまったように思います。10年以上前に片鱗があったのでしょう。




