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未来人が天才を迎えに来たけど自分じゃなかった  作者: summer_afternoon


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32/64

土曜、テニスの試合。

ジュニア選手権とかそんなのはまったく関係ない小さな大会。シングルスでエントリー。

田部ちゃんもシングルスでエントリー。

森ちゃんは、陸上の大会。特別足が速いから。


今日の大会よりも、明日の方がレベルが上。

だからって手を抜くわけにいかない。


炎天下は危険なくらいの暑さ。じりじりとした太陽は、人間の丸焼きを作りたいんじゃないかってくらい。体はもちろん、髪の中からも汗が噴き出してくる。


1試合目は難なく勝利。トーナメントだから勝ち上がるほど試合はハードになる。


3試合目、サービスエースを決められた後、足が動かなくなった。クレーのコートに足の裏がぺったりと糊付けされたみたいになって、一瞬、頭の中が真っ白。その後は全ての動作が遅れて、自分が情けなかった。思うように動けない間、頭の中は言葉の渦。


『暑い。汗でラケット握った感じがしっくりこない。脚、重い。頑張れ。相手だって暑いはず。しっかり。右に来る。動き出すの遅れた。行け。また遅れた。暑い。体力消耗してる。頑張れ。次こそ。打て』


自分最速でボールに反応できるときは、なにも考えてない。だから、頭の中が言葉でぐるぐるしてきたときは、私の場合はダメ。

ダメだって自覚すると、よりドツボにハマる。このときも自滅を予感した。


相手がサーブを打つとき、ぶわっと風が吹いたの。

それがなんか、すっごく気持ちよくて、汗を全部さらってくれたんじゃないかってくらい。そのとき、体が動いてた。何も考えずに眩しい黄色いボールだけ見てた。


結果、優勝。

テニスを習ってる子の中では、特別上手いわけじゃない。優勝は初めて。すっごく嬉しかった。


上手な子は、次の日にある試合に体力を温存するために出場しなかったような大会。それでも、私にとっては、やっとやっとの優勝だった。



次の日、日曜日のブルーグリーンカップは、ちょっと大きな大会。小学生の部は6年生しかいない。しかも、強い子ばっかり。いつか出られたらいいなーなんて思ってた憧れの大会。


そこが敗因だったんだって思う。「出られたら」なんて甘い考えで来たのは私だけだったのかも。他の子は「勝つ」って気持ちで来てた。


1回戦敗退。ぼろ負け。


お気に入りのテニスウエアで、母に「写真をいっぱい撮ってね」なんて頼んで、始まる前に会場で記念撮影してはしゃいで。

バカみたいだったなって。浮ついてた。


試合終了の握手で、相手の顔を見られなかった。情けなくて恥ずかしくて。いっそテニスコートに埋めてくれって気分だった。

シングルスの引退試合がこれかよってのが、終わってからの感想。


最後は田部ちゃんとのダブルス。

森ちゃんも応援に来てくれた。楽しくて。試合が終わらなきゃいいのにって思った。


苦しい状況でも、前衛の田部ちゃんの背中を見れば、恥ずかしい試合なんて到底できなくて。1人よりも2人の方が頑張れる。

特別に強くない私達だったけど「テニスやってます」って胸を張って言える程度には一生懸命だったわけで。

ラケットでボール打つ感覚って、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。


結果、ベスト4。快挙。


田部ちゃんも私も汗でベタベタなのに、抱き合って喜んだ。

ベスト4はメダルも賞状もなし。でもいいの。楽しかった時間の集大成だったかも。


「田部ちゃん、ありがと。私、田部ちゃんだったからここまでこれたって思う」

「私も。ニカじゃなかったら、ダブルスやってなかった」


テレビや漫画に出てくるアスリートは、本当に1握りのトップ。

それを目指すのはもちろん素晴らしい。


そーゆーのに憧れながらスポーツを楽しむってのもいいと思う。オリンピックもジュニアランキングもない場所だけど、サイコー。


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