この世界、なんかおかしいんですけど!? 9
「パパぁ! パパいないのぉ? パぁパぁ!」
お城の中を大声で叫びながら歩き回っていると、変なコスプレをしたおっさんが出てきた。
「どうしたんだい、ミカエラ。突然、町に出かけると言って出て行ったと思えば……。心配していたんだよ?」
誰だこのおっさん。と滑らせそうになった口を慌てて塞いだ。
うっかり、このおっさんが自分の父親だと言うことを忘れてしまっていた。不自然さが目立つ前に、早く馴れなくては。
「パパぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどぉ」
「なんだい、ミカエラ。気を使わず、何でも聞いてくれていいんだからね」
異世界だろうと、父親が娘に甘いのは変わらないようでよかった。
「私の婚約破棄のことなんだけどぉ、その理由について教えてくれなぁい?」
「思い詰める必要はないよ。ミカエラは何も悪くないから」
さっさと元婚約者が浮気した相手を知りたいのに……。過保護というのもなかなかに考え物だ。
「分かってるからぁ、何で婚約破棄されたのかぁ、教えてほしいなぁ」
「……ミカエラ、落ち着いて聞いてほしい。ミカエラは何も悪くないんだ。ただ、相手がミカエラという婚約者がいながら他者に愛情を向けただけで……」
やっぱり、私の婚約者は他の女に奪われたのだ。まあ、私が落とそうとしていた相手でもないし、別にどうでもいい男なのだが、私から奪ったという事実は変わらない。それに、この世界の男ウケの法則も知っておかなければならない。男を魅了する技術を盗むついでに、奪われた婚約者も取り返して、本当の姫が誰なのか教えてやろう。
「それで、その相手ってのは、どこの誰なの?」
「町に住む庶民だと聞いている。そうだ、写真も渡されたんだ。見るかい?」
「見せて」
婚約破棄した相手に今の彼女の写真を送るか、普通。私の元婚約者は配慮が足りないクズ男のようだ。それより、この世界には写真はあるのか。コンセントも電気ない感じだったが……。
渡された写真を見ると、残念ながらカラーではなく白黒だった。電気もない技術レベルなら仕方ないか。
顔を確認するだけだから白黒でも構わないと思いながら、写真を見てみると……。
「え……これって……」
髪は短髪。幼くは見えるが、顔立ちはいい。そして、胸はぺったんこ。
一言で表すならば、ボーイッシュ。そう、ボーイッシュだと思いたい。服装や立ち方は男性そのもの。むしろ、少年にしか見えない。だから、確認せずにはいられない。
「もしかして、男?」
「そうだけど、それがどうかしたのかい?」
いやいや、何かの間違いだ。
「これ、私の元婚約者じゃないよね?」
「いや、ミカエラの元婚約者は別の男性だよ」
別の男性。つまり、私の婚約者は男に寝取られた。
「何を驚いているんだい。今のご時世、男性同士の恋愛なんて日常茶飯事だよ?」
あ、甘く見ていた。この世界はなにかおかしいと思っていたが、まさか、ホモだらけの世界だったなんて!