オタサーの姫vsオタサーの王子 16
次の日の夜。
私は息苦しくて綺麗なドレスを身に纏い、乗り心地が悪い馬車に乗っていた。もちろん、目的地は社交界が開かれる場所。昨日行った私の元婚約者の家。
「しまった……。まさか、社交界がクラヴィス君主催だったなんて……。すまない、ミカエラ。悪気があったわけではないんだ。ごめんよ」
まさかあのウィルとかいう青年目当てで誘ったんじゃないのかと疑っていたが、どうやら本当に確認していなかったようだ。
「せっかくおめかししてここまで来たというのに、悪いことをした。さ、早く帰ろう」
私の手を引き馬車に戻ろうとするが、私はその手を払った。
「せっかく来たんだから、楽しんで帰ろうよ」
私は主催者が元婚約者だったなんてことは承知の上で来ている。それに、こんな息苦しいドレスを着て、あんな乗り心地が悪い馬車に乗ってわざわざ来たんだ。ここで帰るわけにはいかない。
「ミカエラがそう言うのなら……」
説得する必要もなかった。なんだかんだ言って、このおっさんも社交界にきた男たちを見たいのだろう。父親だろうと例外なく、男なんてみんなむっつりなんだ。
そんな欲望渦巻く男どもの巣窟に足を踏み入れようとしていた。
昨日来たときとは違い、今日は夜。城の様子も変わっていた。至る所にランタンや篝火なんかが置いてあり、城がライトアップされている。と言っても、クリスマスのイルミネーションと比べると格段に劣る。まあ、電気がないから仕方ないのだろう。これが、この世界でできるパリピの最大限なのだろう。
「でも、これじゃあ、どちらかというとホラーの屋敷ね」
ライトアップして目立ちたいのは分かるが、街灯もない真っ暗な夜に西洋風の城が炎の明かりだけで照らされていたら、どうしても吸血鬼とか幽霊の屋敷を想像してしまう。
一見、不気味な建物に見えるのだが、中からはとても陽気で上品な音楽が聞こえてくる。もうすでに社交界は始まっているようだ。




