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この手をつかみたくて2  作者: えみっち
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8

寒気は止まらない。熱の出はじめはいつも数時間はこんな状態が続いていたが、肩の傷にも響いていつも以上に身体は辛かった。横にいる陸は黙って美鈴の手を握ってくれていた。出会った頃は、遠慮なしに自分の思っている事を言うので傷つくことも多かったが、友人付き合いをしていくうちに真っ直ぐな陸に助けられることが多かった。いまもそうだ。前向きな陸に助けられていた。


美鈴は携帯を開くと時間を確認した。

時刻は、9時になっていた。


「まだ9時なんだ。何だか随分と時間が経ったような気がする」


携帯を横目で見ていた陸はつぶやく。


「そうだね。そんな気がする」


美鈴は頷いてから、空を見上げながらぽつりと言った。


「裕助が居なくなったって言うの嘘なのかな?」


陸は握っていた手に少し力を入れた。


「俺は嘘だと思う。大丈夫だよ。裕助さんは無事だよ」

「そうだね。無事だよね」


陸の言葉に安心して再び頷く。先程までの寒気はいつの間にかおさまっており、今度は体が火照ってきて眠気が美鈴を襲う。うつらうつらぼやける意識の中、竜一が見える。どうやら自宅らしい。パソコンの画面は開かれていたが、何か落ち着きもなく携帯電話ばかり気にしているようであった。


(りゅう…、りゅう。どうしたの?)


ふと顔を上げる竜一。美鈴の声に気がついたのであろうか。

何か必死に宙に向かって話し掛けているのだがこちらには何も聞こえなかった。


(ごめんね、何も聞こえない。心配そうな顔をしているけど…もしかして私の事かな?一人前のつもりで頑張っているのにいつも迷惑ばかりかけてしまってごめんね。今だってそうだよね。こんな事になっているんだから。おまけに力も使えない。足を骨折している陸だけでも早く助けてもらえるといいんだけど。…奥多摩の山中の崖下にいるんだけど住所が分からないから難しいかな?でも、朝になって私動けるか分からないから…)


「…すず、美鈴」


陸の声に目を開ける。


「ごめん、眠っていたの?大丈夫?」


心配そうな陸の顔に美鈴は小さく笑って首を振った。


「大丈夫だよ。ごめんね、ちょっとうとうとしていたみたい。でも、その間に竜と話せたかもしれない。竜の声は聞こえないんだけど私の声は聞こえていたみたい。でもこの場所は分からないかな…」


独り言のように話す美鈴に少し眉を寄せる陸。


「竜って誰?」

「そうか、陸は会った事がなかったね。竜は、昔一緒に仕事をしていた先輩なんだ。今は結婚してロスにいるんだけど、テレパシーが使えるんだ」


戸惑いながら陸は美鈴の顔を見た。


「テレパシーが使える先輩って…一体どんな仕事していたの?」


美鈴は夜空を見つめ昔を思い出すよう話す。


「私、15歳の時に特殊な力が使えるようになってそれから情報部員をしていたんだ。私がいた部署は特殊な力を持った人間ばかりが集まっていて竜はその時の先輩。でもそれは俊の時の話しなんだけど」

「… …」


陸は何も言えないで美鈴を見つめていた。本当の事を話してくれているのだろうが、やはり何も実感がわかなかった。今自分の横にいる美鈴と情報部員をしていたという俊。そして二人は同じ人間という事。


しかし、突然ピクリと動いた美鈴の手にハッとした。


「…声がする」


美鈴の言葉に陸は顔をあげる。耳を凝らすと確かに静かな夜の闇の中、人の声が聞こえた。


「美鈴っ!誰か助けに来てくれたんだよ」

「うん…」


陸は上半身を起こし崖上に向かって必死に叫ぶ。


「おおーーいっ! ここだよーー!」


叫ぶ陸の姿を見ていると自分の気が抜けていくのを感じた。


(裕助の声だ…。もう大丈夫、きっと大丈夫… … )


意識が朦朧としていく中、再び竜一の姿が見えた。電話で必死に何かを伝えている。あんな竜一の姿を見たことがなかった。いつも冷静で笑っている人なのだ。WIを離れたというのに自分は心配ばかりかけている。

竜一に怜に翔に。


(ああ、みんなにまた怒られるな…)


記憶は途切れたが、再びうっすらと目が覚めたのは、誰かに抱きかかえられている時だった。

温かい手に心配そうな声…しかし、すぐに意識は再び途切れた。


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