断章Ⅳ
サロリアが部屋の書架を見ながら呟く。
「……ようやくですわ。お母様の部屋を取り戻しました…」
「ヒロキさんには感謝しませんと」
ノックの音でサロリアが振り返る。
「姫…第1王子に付けていた者から連絡が」
近侍の女性が頭を下げる。
「どうしました?」
「第1王子と第2王子の部隊が全滅をしました…」
「王子たちも行方不明とのことです」
「……そうですか」
「残念ですわね」
「一緒に避難していた筈の町の人は無事ですか」
「それが…部隊だけで…町の人は町の一角に集まっているとのことです」
「無事なのですね…よかったです」
「お母様が大事にされた町の人ですから」
「早く町の皆さんに安心させてください」
「承知致しました」
女性は一礼すると退出した。
「……ヒロキ様には、お伝えしておきませんと」
――その頃。
机の上の地図が地面に落ちる。
桜野が荒い息を吐き、机を叩いた。
「どうして……気付かない」
「仕方ないでしょうに」
「ここに来た奴は覚えていないんだから」
矢来が首を振る。
「だとしてもだ。何故萬葉さんの方に行くんだ」
「……そりゃあ、そうだろ」
矢来の呟きは桜野の耳に届かなかった。
「そんなことより、これからどうするんです?」
「あと一人倒せば終わるのでしょう」
「そうだな…もう少しで正しい世界になる」
「そうすれば……今度こそ」
本を読むサロリアの元に先ほどの女性が訪れる。
「姫…詳しく確認したところ、王子たちは無事とのことです」
「ただ…もう表舞台には出られない状態のようです」
「そうですか…可哀想なお兄様たちですわ」
「これで、無理はなさらなくて済みますものね」
サロリアが微笑んだ。
「それよりも…町の人たちは無事でしたか」
「それが…」
「どうしたのです?」
「ほとんど殺されてます…」
「……戦闘に巻き込まれたのですか」
「いえ…この町で…」
サロリアが一瞬言葉が詰まる。
「……どういうことですか」
「それが無事に逃げられた人の話では『影』のようなものに襲われた、とのことです」
「『影』……」
サロリアの瞳が、わずかに揺れる。
「……そういうことですの」
「あの国の『チャンピオン』ですわね」
「ならば、遠慮は要りませんわね」
サロリアの指先が、わずかに強張る。
「……お母様の町に触れた報いは、受けていただきますわ」




