第十話 世界の頂き
今日も、窓の前が騒がしい。オレが定位置に座ったからだ。
ガラス越しに、猫たちが集まっている。数えた。一、二、三……五。多いな。人気者は困る。
黒いのは若い。白いのは警戒心が甘い。まだまだ修行が足りない。
「……ふん」
オレはゆっくりと姿勢を正す。背筋を伸ばし、しっぽは床に沿わせ、足は自然に――自然に、だ。
別に見せつけているわけじゃない。ただ、結果的ににゃんたまがそこにあるだけだ。
外の猫たちは、一瞬、動きを止めた。見えたな。理解したな。
そこへ、ハトが来た。
二羽、三羽、四羽。多い。今日はずいぶん多い。
首をカクカクさせながら、オレを見上げている。
「……なるほど」
あいつらは猫じゃない。だが、強さは種族を超えて伝わる。
オレは少しだけ、あごを上げた。ハトたちが一斉に羽を震わせた。
――伝わっている。
背後で、アニキが椅子を引く音がした。
「たま、また見てるのか」
アニキはまだ世界の仕組みを完全には理解していないが、オレのそばで学んでいる。
アニキは窓の外を見て、「今日も猫多いな」と言った。
違う。猫が多いんじゃない。オレがいるから集まるんだ。
オレは振り返らず、ゆっくりしっぽをふる。
これは許可だ。
アニキは満足そうに頷き、コーヒーを飲んでいる。……成長してきたな。
ふと、窓の外の若い猫が、ジャンプして塀に乗ろうとして失敗した。
落ちた。立ち上がって、何事もなかった顔をして、毛づくろいをしている
「……分かるぞ」
オレも昔、何度もやった。
昼の日差しが、オレの背中を温める。眠くなってきた。
オレは丸くなり、目を閉じた。
外では、猫もハトも、しばらく動かなかった。
たぶん、オレが起きるのを待っている。
世界の頂は、今日も、この窓辺にある。




