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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十八巡 無題
135/143

第九十三話 亜希 ホテルごはん

ここから先は、百物語と物語全体が混合で進行します。

百物語のみお楽しみの方は、蝋燭が消えるところまでお読みください。

 昔、友人たちと泊まったホテルでのことです。

 朝夕バイキングの大きいホテルだったんですよ。時々同じ仲間で出かけていたんですが、自称大食い連。夕食バイキングはメインの地元牛ステーキをプラスしたプランで、ものすごく楽しみにしていたんですよね、我々は。

 それが、食中毒があったってことで、泊まった日からバイキングのレストランが営業停止。

 別の階の高級和食とバーはやってましたけどね、大食い連の財布には痛いので無理です。

 料金は素泊まり料金から更に割引になって、持ち込みも自由になりましたのでね、もうヤケです。二班に分かれて、スーパー組とチェーン店組で分かれて、スーパー組がお惣菜とお酒の買い出しをして、チェーン店組が牛丼だのピザだのを買い込んで、ホテルの部屋で大食い大会です。スーパー組の揚げ物やサラダ、ビールにチューハイ。チェーン店組の牛丼豚丼カレー丼にピザ数種類。

 それなりのホテルの、ツインにベッドプラス一の三人部屋二部屋だったわけですよ。六人泊まって食事買うなら、貸別荘の方が良かったよねえと言いながら、ジャンクに夕飯食べたわけです。

 ホテルレストランバイキングと、部屋でジャンクフードだとね、やっぱり、話の質が変わりますね。

 大食い連とはいえ、おしゃれなホテル女子会のはずだったのに、すっかり愚痴大会になっちゃいましたよ。

 そんなこんなで、我々一同、ちょっとやさぐれた酔っ払いになったわけです。

 貸別荘との違いはなんだ? 大風呂温泉だ! というわけで、飲み過ぎないうちに大風呂も入って、戻ってから更に飲み食いして、せっかくだからバーで一杯飲んでこようと、夜景を眺めながらカクテルを一杯飲んで。

 浴衣で窓際カウンターに女子六人並んでね。余計やさぐれたわよ。

 それで、二手に分かれて爆睡して、起きたわけです。

 私は、宴会やった方の部屋に寝たんですよ。

 本来ツインのところにベッド一つ追加しているんで、フリースペースはあまりないんですね。よろしくないのはわかってるけど、ベッド一つをテーブル替わりにして宴会やってたわけですよ、前夜。

 当然、ある程度片付けないとちゃんと寝られない。

 どんぶり系は完食してたけど、ピザなんかは少し残ってね。未開封のお惣菜とかもあったし、朝食用のパンやおにぎりも買ってあった。

 それらはまとめて、狭いテーブルと二つの椅子の上に分散して積んでおいたんですよ。

で、起きたら、中身が無くなっていたんです。

 ピザの箱から残ったピザが。

 未開封のお惣菜から中身が。開けてないおにぎりやパンの中身が。

 あと、開封済みのビンのお酒の中身も無くなってた。

 缶未開封と、ペットボトルは無事でした。

 当然、別室の三人にこっちの三人で全部食べたろと疑われ。でも、前夜におなかがはじけそうなくらい食べたのを知ってますからね、おまけに未開封の中身が消えてるわけですよ、いや無理だろ、って、すぐわかってくれました。

 結局、我々は朝食難民になって、やさぐれて帰宅の途につきました。

 もちろん、後日ホテルバイキングはリベンジしましたよ。別のホテルでね。

 いくら酔っぱらってやさぐれてたってね、全員現役自衛官ですよ。侵入者はあり得ません。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。



 語っている途中で、部屋が急に静かになった。

 空調が止まり、エレベーターなどの機器類の音がすべて止まった。

 停電か。

 静かなまま、亜希は語り終え、蝋燭を消す。じんわりと、停まった空気がぬるくなってくる。外は熱帯夜だ。そのせいか?

 そこに、無線機から雑音とともに、石井の声が聞こえてきた。

 地下で火災発生。塔内で停電発生。冬尚はまだ地下にいる。

 亜希は、ただちに消防に通報するよう指示を出す。

「可能なら救出。すぐプロが来るんだから、無理せずに」

 石井からは、了解の意が伝えられた。

 冬季は、角と対峙を始めている。亜希が話している間に、後ろ向きにゆっくり歩きだしたと思ったら、さきほどの塊が角からついて出て来た。わざわざ出してきたということは、解決方法が見つかったということなのだろう。声の調子も戻っている。あの状態からここまでの回復は、光が入ったという現象によるものなのだろうか。

「手順変更。私は上に行ってシューターとロープ降ろす準備に入るから、森山さんは話し終わったら上に来て手伝って。自分の番までには戻る。ユサさんは話終わったら上に行ってそのまま避難ね。森山さんはできればまた降りてもらうけどいい?」

 語り部三人は、各自頷く。

「ユータさんはぎりぎりまで下で待機役ね。順番までに私が戻れなかったら、お話どんどん一人で進めてて。ヤバいとなったらユキちゃんをこのテーブルに載せて梯子登って。上から私が降りるから」

「わかりました」

 昴とともに避難用シューターを準備する。パニックになりかねない冬沙を先に逃がす。ロープで吹き抜けから出入りできるよう準備をする。

 冬太の出番のうちには、二階に戻れるだろう目算をつけて、亜希は梯子にとりついた。


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