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みどりは太陽に向かってのびてゆく  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第1章 芽吹きの色と春の風
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第六話  学校教育課のトップ、登場

 時計の針は、間もなく午後一時を示そうとしている。

 学校教育課の事務室では、金沢がスーツ姿で右に左に、うろうろうろうろ。ひたすら落ち着き無く歩き回っている。


「福島君! 福島君! 福島君!」

「はい。なんすか?」

「温田君はいったい、いつ戻ってくるんだ!」

「え? 知らないっすよ。・・・・・・新人さん、やってくれるなマジで・・・・・・」

「足立君! 足立君! 足立君!」

「ういっす! オイラも知らないっすぅ!」

「なんでこちらが言う前に、言いたいことがわかるのさ」

「オイラ、超能力者なのかもしんないっすねぇ!」

「冗談はいいから! あーもう。課長が待ってるというのに・・・・・・」

「金沢補佐。わたくしが、探してまいりましょうか?」

「紫前君は、このまま待ってて! あーもう。やんなっちゃうよなぁー・・・・・・」


 金沢は、声のトーンを下げて、うろうろしている。


   ・・・・・・ぎしりっ!


 その時、事務室内の一番奥で、外窓の方を向いていた高級そうな事務イスがくるりと向きを変え、一人の女性が立ち上がった。


「仕方ないじゃん、金沢くん? 新人さんなんだからさ? それにまだ、一応、昼休み中だしさ」


 その女性は小柄だが非常に恰幅が良く、パワーのある声質と柔らかい口調で、にこやかに金沢に向かって話しかけている。


「すっ、すいません、課長。いやぁ、まさか、ここまでギリギリにな・・・・・・」

「待ちましょ? 待てば来るでしょ」

「え! あっ、はっ、はぁ・・・・・・」

「仕方ないじゃん。紫前さんと、その温田さんが来なけりゃ、出られないんだから」

「そ、そうですね」

「そうですね、じゃなくてさ? 金沢くんは、温田さんに午後のこと、伝えてあったの?」

「え! はい。きちんと、午後一番で課長が挨拶回りに連れて行くことは・・・・・・」

「ふうん。午後一番って、何時なのかな? 本人はそれ、理解してる?」

「す、すみません。温田君が『午後一時からですよね』とは言っていたもので・・・・・・」

「ま、それならいいんだけどね」


 黒沼は、フォーマルな服の襟元を指で直すと、また事務イスにどしりと座った。


   ・・・・・・たたたたたたっ


「あ!」

「すっ、すみません! まだ、ギリギリセーフ・・・・・・ですよね? はぁ、はぁ・・・・・・」


 事務室に駆け込むように、緑が戻ってきた。


「ばかやろう! 新人さんよ。紫前はもう、二十分前には戻ってたぞ!」

「すみません福島主査! お腹痛くなっちゃって。なんとか、一時までには、戻れました!」

「戻れましたじゃねぇ! 補佐や課長が、ずっと待ってたんだ! ばかやろうが!」

「頼むよぉ、温田君! 午後一番って言ってあったじゃないかぁ」

「え! あっ! す、すみません金沢補佐! わたし、三十秒ですぐに出られる用意を・・・・・・」


   ぎいっ ・・・・・・ぎしりっ!


「いいよ。用意はいいから、もう出ましょ。時間が勿体ない」

「へ? あ!」

「温田君。温田君。温田君。・・・・・・黒沼圭子課長だ!」

「あっ! すっ、すみません! 申し訳ありませんでした課長! わたし、新人の温・・・・・・」

「はい、もう時間ないから。温田さん、新卒新人だもんね。いろいろ、世の中を覚えないとね?」


 黒沼はにこっと笑って、深々と頭を下げた緑の肩をぽんと叩くと、紫前を引き連れて事務室を出ていった。紫前は黒沼と同じ歩調で、「かばん持ちましょうか?」と言って歩いてゆく。


「(うわぁー・・・・・・。やっばぁ! 初日から大変なことやっちゃった、わたし!)」

「温田君。温田君。温田君! ほらほら。早く行かないと!」

「えっ! あっ! そ、そうですね! ・・・・・・課長ーっ! すみません、今行きます!」


 緑は慌てて頭を上げ、課長と紫前を追って、急いで事務室から駆け出していった。


「はぁあ・・・・・・。まったく。あんなんで大丈夫なのかね、温田君は・・・・・・」

「いっひっひ! 金沢補佐ー? だったらオイラが、きっちり教えてやりますぜぇ!」

「足立! だから、いつからおめぇは俺の仕事を請け負ったんだっつうの!」

「ひえっ! 違います違います! 冗談じゃないっすかぁー福島さん。さて、仕事だ仕事!」


 足立はまた、カタカタと自分のパソコン画面に集中し始めた。


「とりあえず、オレは初日から頭が痛いよ、福島君。まぁ、やっていくしかないんだがね」

「そうっすよ。グダグダ言っても仕方ないです。・・・・・・まぁ俺も、新人育成は苦手なんすけど」

「去年みたいなことにならないと・・・・・・いいんだがなぁ。あー。また査定に響くのかなぁ」


 金沢は、課長席の後ろにある外窓をぼんやり眺めながら、何度も何度も溜め息をついている。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 紫前って女、いかにもなアピールしてるなー。 こういう同期いると、めんどくせーことになりそうだ。 [一言] これまでの作品が作品ゆえに、アクションバトルがないのは、ちょっと意外。
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