守護霊(トーテム)が真名を言い当てられると霊力を失うこと
日本昔話では、『大工と鬼六』のエピソードが有名でしょうか。自分の目玉と引き換えに鬼に橋をかけてもらった大工が、「オレの名前を言い当てたら許してやっても良いぞ」と言われて、その名前を当てるというお話ですね。ただ、この話、日本オリジナルの昔話というわけではなさそうで、近代になって西洋から輸入された民話が日本語に翻訳され、いつの間にか日本の昔話として定着してしまったというのが真相のようです。西洋では、似たような話がグリム童話の中にあるようです。
とはいえ、自分は、古代日本人は真実の名を他人に言い立てられることを忌避していたのではないかと推測しています。例えば、古代天皇|(大王)については、明らかに、その真の名を言い立ててはいけないという風習があります。天皇については、〇〇宮で天下を治められた天皇という意味の表記をする例が多いです。また、日本各地の古墳から、墓誌とみられるものが一切出土していないというのも奇妙です。大陸では、いくつも墓誌が見つかっているのに、日本では、未盗掘の古墳でさえ、墓誌とみられるものがほとんど発見されないのです|(稲荷山古墳出土鉄剣などは一種の墓誌と解釈できないこともありませんが、こうした例はほとんどありません。)。日本で発見された墓誌で最古のものは、7世紀よりも前には遡らないのではないかとみます。故人を顕彰するのが古墳の役割の一つであるはずなのに、当時すでに文字があったはずなのに、墓誌らしきものがほとんど発見されないのは、本当に不思議なことです。
こうした名前の扱いについて不思議に思ったので、守護霊は、その真名を言い当てられると霊力を失うという設定としました。