06 要塞との出会い
「こっちに来ちゃダメだ! ダイアーがいる! 」
精一杯声を張り上げたのだろうか、かすれ混じりの甲高い声が暗黒の通路に響き渡る。
自分の安全とライトを照らす者の安全を秤にかけた結果、リュックはライトを照らす者の安全を優先させたのだ。
「ライトを消して! 消すんだ! ここにダイアーがいる! 」
老婆の姿をした生ける死者は、ライトの点滅に敏感に反応したものの、まさか自分の身近な場所から人間の声がすると思っていなかったのか、ライトをしきりに気にしながらも声の主を暗闇に探し求めており、ライトに向かうか食糧を先に確保するか狼狽えながら躊躇していた。
……そこにいるのは誰だ?……
……大丈夫か? ……
リュックは警告した。
ここにダイアーがいるから危険だと、早くこの場から立ち去れと警告した。
だがライトの持ち主は、警告に従うどころか決死の覚悟で声を張ったリュックを逆に心配して近寄って来たのだ。
ライトの光源はどんどんと近付いて来る
それに反応したダイアーは目の前の食糧を後回しにライトの持ち主を最初のターゲットに決めた。グウウウと気味悪く唸りながら光の指す方へ足を向けたのだ。
「だからダメだって! ダイアーがいるんだ、危ないんだよ! 」
腹立たしかった。
何故自分の忠告を素直に従わないのかと言う怒りがリュックの叫びに詰まっていた。
ダイアーに対する恐怖や太刀打ち出来ない苛立たしさよりも、ライトの灯りを点けたままこっちに向かって来る者のその無神経さに怒りを覚えたのだ。
だが、リュックの思いやりも心配も覚悟そして怒りまでもが、それら全て杞憂であった事が判明する。
いよいよライトの光源にダイアーが近寄ったと思った瞬間、ゴチン! と言う強烈に鈍い音と共にダイアーの頭が弾けて爆発したのだ。
「えっ……ええっ……? 」
予想だにしなかった展開に目を白黒させるリュック。
ダイアーの頭部が破壊され完全に沈黙した事を確認すると、「君、大丈夫? 」とライトを持っていた人物が駆け付けた。
それまでは中腰の姿勢で、いつでも脱兎の如く逃げ出せる姿勢を維持していたリュックであったが、現れた人物をその目にしてここで初めて腰を抜かす。ダイアーと遭遇しても腰を抜かす事の無い彼がだ。
現れたのは二人のエクスルーダー、つまりはダイアーを排除してポイントを稼ぐ戦士。
一人はライトを持った白人女性、短めの槍を背中に吊るしてタクティカルベストを着こなす軽装の戦士。腰のベルトにはナタをぶら下げている、リュックが見た事の無い人。
そしてリュックが腰を抜かした理由が、たった今ダイアーを倒したもう一人のこの大男。
全身黒ずくめでガスマスクを被り、胸には巨大な拳銃を吊り下げた黒人の戦士。右手には彼を象徴する鉄板から切り出した“撲殺剣”が、血を滴らせながら握られているではないか。
「要塞……あなたは、ジェイコブさんじゃ? 」